異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
50.私の運命の行方
「師匠、次にこんな場面に出くわしたらいくら貴方でも容赦しませんよ」
「…小童が」
「小童って爺に言われたかありません」
にっこり笑う白帝は、私の腕を取って司書様と離れた。私は何処に連れて行かれるのだろう。今の私に自由は無い。自由って何だったんだろう。そういえば、私に自由なんてなかったなあ。いや、自由な方だったのかもしれないけれど。
「――ねぇ、イオリ」
「はい?」
「これを機に、僕の傍仕えしてみない?」
「…白帝の?」
「そう。まあ、周りが煩くなるだろうけど…暇を持て余すより良いだろう?」
廊下を歩いている最中、誰もが不躾なく私と白帝を見ている。特に白帝が掴んでいる腕を。私の粗探しをしているのが丸わかりだ。そして、こんな所でそんな話を持ち出してくる白帝も馬鹿だ。明日には、私が白帝を誑かしていた、とでも噂が出回るのだろう。
勝手にしろ。
「――いえ、辞退させていただきます。今の私では白帝のお手伝いは手に余るでしょう」
「働かざる者食うべからず、って知っているかい?」
「何処かの誰かさんが私に謹慎処分を下しているので、城外の仕事は受付できませんねぇ」
「それ不敬罪で訴えられるから気を付けた方が良いよ」
あぁ、どいつもこいつも苛々させてくれる。
「司書様に言ったこと、虚言なんかじゃありませんからね」
ニコルに召喚された時、泣いて縋ってでも帰らせてくれって言ってた方が良かったのかなあ。そうしたら、私は双帝と関わることもなかっただろうし。でも、お兄ちゃんや双子とは再会出来なかったのか。何が私にとって最善の選択だったのだろう。
「じゃあ、イオリは自分の立場を弁えた方が良いね」
「そんなもの己が一番知っておりますとも。グレイアスの子供であっても、私は異世界の人間。この世界からすれば異物に過ぎない。加えて、今の私に黒帝の傍仕えなんて意味を成しませんから」
上手くいかないことだらけだ。地球で仕事に追われてた方が何十倍もマシだった。この世界に来てロクなことが無い。この国に居るから、そう思うのだろうか。国外に出れば、何か見つかるのだろうか。
「だから、僕の傍仕えにって言っているんだけど」
「すべてを踏まえたうえでお断りしているのです。本音を申し上げると、今の私に他人に仕えるなど無理なのです」
誰かの隣に、誰かの前に、誰かの後ろに。もう無理なのだと思う。時雨も、黒帝も、お父さんも、私から離れて行った。誰かと共にするのは、辛さを伴うことなのだと改めて実感したのだ。
「シヴァが君の任を解いたから?」
「いえ、それはマリアナをあの場所で見た時点で悟ったので黒帝には何も」
「じゃあ、どうして」
なかなか食い下がらない白帝。本当にしつこい。どうして私を傍仕えにさせたいの?理由が分からない。理解できない。何を言ったら、引き下がってくれるんだろうか。
「―――これ以上、失望したくないんです」
自分の運命にも。敬愛する双帝にも。
「…小童が」
「小童って爺に言われたかありません」
にっこり笑う白帝は、私の腕を取って司書様と離れた。私は何処に連れて行かれるのだろう。今の私に自由は無い。自由って何だったんだろう。そういえば、私に自由なんてなかったなあ。いや、自由な方だったのかもしれないけれど。
「――ねぇ、イオリ」
「はい?」
「これを機に、僕の傍仕えしてみない?」
「…白帝の?」
「そう。まあ、周りが煩くなるだろうけど…暇を持て余すより良いだろう?」
廊下を歩いている最中、誰もが不躾なく私と白帝を見ている。特に白帝が掴んでいる腕を。私の粗探しをしているのが丸わかりだ。そして、こんな所でそんな話を持ち出してくる白帝も馬鹿だ。明日には、私が白帝を誑かしていた、とでも噂が出回るのだろう。
勝手にしろ。
「――いえ、辞退させていただきます。今の私では白帝のお手伝いは手に余るでしょう」
「働かざる者食うべからず、って知っているかい?」
「何処かの誰かさんが私に謹慎処分を下しているので、城外の仕事は受付できませんねぇ」
「それ不敬罪で訴えられるから気を付けた方が良いよ」
あぁ、どいつもこいつも苛々させてくれる。
「司書様に言ったこと、虚言なんかじゃありませんからね」
ニコルに召喚された時、泣いて縋ってでも帰らせてくれって言ってた方が良かったのかなあ。そうしたら、私は双帝と関わることもなかっただろうし。でも、お兄ちゃんや双子とは再会出来なかったのか。何が私にとって最善の選択だったのだろう。
「じゃあ、イオリは自分の立場を弁えた方が良いね」
「そんなもの己が一番知っておりますとも。グレイアスの子供であっても、私は異世界の人間。この世界からすれば異物に過ぎない。加えて、今の私に黒帝の傍仕えなんて意味を成しませんから」
上手くいかないことだらけだ。地球で仕事に追われてた方が何十倍もマシだった。この世界に来てロクなことが無い。この国に居るから、そう思うのだろうか。国外に出れば、何か見つかるのだろうか。
「だから、僕の傍仕えにって言っているんだけど」
「すべてを踏まえたうえでお断りしているのです。本音を申し上げると、今の私に他人に仕えるなど無理なのです」
誰かの隣に、誰かの前に、誰かの後ろに。もう無理なのだと思う。時雨も、黒帝も、お父さんも、私から離れて行った。誰かと共にするのは、辛さを伴うことなのだと改めて実感したのだ。
「シヴァが君の任を解いたから?」
「いえ、それはマリアナをあの場所で見た時点で悟ったので黒帝には何も」
「じゃあ、どうして」
なかなか食い下がらない白帝。本当にしつこい。どうして私を傍仕えにさせたいの?理由が分からない。理解できない。何を言ったら、引き下がってくれるんだろうか。
「―――これ以上、失望したくないんです」
自分の運命にも。敬愛する双帝にも。
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