異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

21.紹介と新事実

優雅な飛行を終えて、とりあえず白帝の執務室前に来た。ボソボソと会話しているのが聞こえる。入って良いものか悪いものか。だって、内容が私のことなんだもん。






《入らないのぉー?》




「そうだね、入るか。白帝陛下、イオリただ今戻りました」






結局、メギドは人型を取った。紅と黒紅の瞳と赤茶の髪をした男の子。年齢的に6歳ぐらいで、私と手を繋いで執務室前に居るのだ。何故この色なのかは分からない。多分、グレイアスの所為もあるんだろう。メギドの面影が、どこかはとなくグレイアスに似ているのだ。喰ったからこうなったのかな。






「入りな、丁度お前の話をしてたんだよ」




「で、では私はこれで失礼します!」






「ドイル副団長、ご苦労様」






「はい!」






ニッコリと冷たく笑う白帝と慌てて出て行くドイル様。オイオイ、私の顔を見ただけでそんなに慌てて出て行くなよ。一言二言、報告しておこうと思ったのに。仕事が増えた。というか、自分で増やしたんだけれども。あー、早く黒帝の客人婚約者帰らないかなー。それか、せめて書類だけでも私の部屋に送っておいてほしいな。






「逃げられちゃった」




「お前が、大掛かりな任務を1人でするからだよ。怪我でもしたらどうするつもりだったんだい?」




この子メギドが居ましたし、東の砦から追っ手騎士も来てましたから」




「そう言いたいんじゃないんだけど。どうして、そんな無茶な任務を持って行ったの」




「ナイショです。ね、メギド」




《ナイショ!ナイショだよ、へーか!!》




「…火の王の息子か、初めまして。アベルドだ」




《初めまして、白帝のアベルド!黒帝はいないの?》






「え?あぁ、用事で遅れて来るんだよ」




《そっかあ。ボク、挨拶しとかなきゃって思ってたのに》




「君はイオリのドラゴンなんだろう?イオリは黒帝に仕えてるから、挨拶はいつでもできるよ」




《そうだね、ありがとうアベルド》






微笑んだメギドの愛らしいこと――ってか、まるっきりグレイアスの顔だなー。ははははっ。げぇ、ノルエルハとグレイアスは似てない双子だったけど、なんだろうこれ。やだ、なんかグレイアスの顔が2つあるとかやだ。








「あン時のドラゴンか、親父そっくりだなー」






「志貴君、君もゲラゲラ笑ってるけど、僕からしたら兄様の顔が3つあるからね!?」






現れたのは、心の中で思考真っ最中だったお兄ちゃんとノルエルハ、それからマリベル様とルシエラ様が居た。黒帝とジェラール様は遅れて来るらしい。なーんだ。へー。そうか。仲の良いことだ。ジェラール様はお仕事だけどね。ま、休息も必要ってことで目を瞑ろう。でも、シヴァ様の所為で私は何徹しなきゃならないんだろう。








「親父の遺体は全部メギドが食っちまってるようだから、何も問題がねぇから安心しろ。良かったな、依織。親父の生き形見だ」






「いや、生きてねーし。形見でもねーし」






「うんうん、この子の様子を見ても健康そうだね。いやあ、親子そろって王の子とは末恐ろしいよね志貴君」






「俺、風の王の愛娘っすもんねー」






やっぱりゲラゲラと下品に笑う我が兄。誰だコイツ。そんな視線が突き刺さっていることに気付いていないのはどうしてだろう。見て見ろよ、あのルシエラ様の目。ドン引きした少女の目ほど虚しいモノはないんだぞ?






「…えらくハイテンションだね、君」






「いやあ、実は陛下にお願いなんですけどねぇ?可愛い可愛い妹と頼りになる叔父と一緒に任務貰えるかなーって」








あれれ?副音声みたいなのついてない?気のせい?くれなきゃ、側近筆頭ボイコットするぞ的ななんか含み無い?気のせい?でも、さっすがお兄ちゃん!やっぱり私のこと分かってるぅ!!というか、自分の願望もあるんだろうけど。








「…任務内容にもよるけどね。聞きたくないけど。で、ルシエラはどうして此処へ来たのかな?」






「――そ、そうでしたわ!シキの豹変っぷりに驚いて、忘れてました」






「うん、物凄い豹変っぷりだよね。化け猫の皮がはがれたのかなー?」






「泉の水が少しずつ、何かに侵蝕さている様ですの。幸い、私の方でも抑えれる程度ですけど…これ以上になってくると、厳しいものがありまして。そのご相談に」






「調べてみた所、毒の成分に近い何かなんです」








ルシエラ様の憂い気なお顔、憂い気でも美少女は美少女か。主要人物は美形じゃないと駄目なのかな。白帝筆頭にジェラール様も渋みのある美丈夫だし。なんか、平凡顔の私が場違いのように思えてくる。








「毒の成分に近い何かって何?」






「わかりません。ですので、調べさせている途中ですが、あまり善くないものかと」






「そりゃ毒に近かったら善いものではないだろうね!?どうしたの、マリベル。君もシキの豹変っぷりに言葉がぶっ飛んじゃった?」






「――いえ、シキのドラゴンが風の王の愛娘で、イオリのドラゴンが火の王の息子と聞いて、もう何と言っていいのやら…」








そっちかよ、お兄ちゃんの笑いを含んだツッコミが入ったのだった。











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