異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。
18.かつての淡き記憶
メギドと仲良くなった…、否、親睦を深めた所で私は次にしなければならないことを考えてみた。浄化に降りて、ジェラール様率いる騎士団を手伝うべきか。それとも、君主であるシヴァ様の手伝いをするべきか。
「さて、どうしよう」
『ボクはどうするの?』
「まず、アンタは周りのドラゴンたちと親睦を深めること。見た目はそれでも、お前はまだ成長期だからなあ。周りのドラゴンたちと話をして、この国について教えて貰ってらっしゃい」
『…ボクの父様、グレイアスのドラゴンだったんだよ?この国について、知らない訳がない。ましてや常識だよ』
「……だよね、知らない訳ないよね。うん、グレイアスのあのドラゴンがメギドの父竜だったなんてビックリだわ」
以前、グレイアスとノルエルハのドラゴンの影を見たことがあると言ったと思う。影というのは読んで文字の如くカゲ。満月の月明りで喚ばれたドラゴンは、鮮明に覚えている。忘れれるはずがない。真っ赤な血で染めたような赤いドラゴンを。心優しきドラゴンを。
『一度だけ聞いたことあるんだよ。主人の愛息子と愛娘に会ったって』
生まれてたんかい、そんなツッコミは野暮だから喉の奥にしまっておく。ドラゴンの寿命とかワカンナイ。ドラゴンなんて空想だった生き物。ダカラ、私ワカンナイ。
「と、とりあえずメギドとして相手にしてもらいなさいな。火の王の息子じゃなくて、メギドという個体としてね」
『はあい』
メギド、その名の意味は業火。業火とは罪人を灼き燋がす為の猛火のことだ。強い名前をもらったな、メギド。お前はいつか、この世界で最高の火の王となるだろう。私の父に仕えた火の王よりも立派な王に。主人となったそう私が願う。
「私は黒帝の所に居るから、あとはよろしくね」
「りょ、了解いたしました!!」
ウェルミス様すげぇ、とかいろいろ聞こえる声をシャットアウトして、私は主の下へと足を向けた。忙しない城内は何処か重々しい。城下があんな風になってしまったからだろか?だからと言って、ここまで忙しなくなる筈がない。
「イ、イオリ様!?」
「え、あの、ドラゴンたちの下に行かれてたのでは?」
「もう終わったから大丈夫だけど、どうかした?」
「いえ、別に何もあったということではございませんが」
若い侍女たちはキョドって私の顔を見てくる。何でキョドる必要があるんだ。黒帝の執務室は、目と鼻の先で書類が溜まっている筈だ。そう思えば思う程、さっさと片付けたくなってくる。元事務員の性なのだろうか?まあ、違うニオイがあるからそれに対してこの侍女たちは焦っているんだろう。
「だったら、そこを通して貰える?仕事があるから」
「し、仕事ですか…?」
「えぇ。昨日の被害書類を私宛てにしてもらってるから、恐らく黒帝陛下の所にあると思うの」
「え、っと。お急ぎですか?」
「今日中に白帝陛下に提出する約束してるの」
別にその書類を取ったら、自室で仕事をしても良いのだ。だから、そんなに慌てるな。もはや苦笑ものである。侍女長でなくともこの城に仕える侍女ならば、常に堂々としてなければならないだろうに。
「で、ですが…その、」
「あー、分かった分かった。客人が来ているんだろう?分かったからそう慌てるな。視線をウロウロ彷徨わせるな。この城に仕えている侍女なんだから、堂々と嘘でも吐けばいいだろう。嘘はバレない限り真実として成り立つ。それに、此処に居るのはイオリだ。嘘を吐いたって罪には問わないよ」
時と場合に寄るけどね、と付け加えた。今にも泣きそうな顔をする侍女たちに、暫くは近づかないよと告げて一緒に黒帝の執務室から離れた。私の叱咤激励になるのか分からないけど、落ち着きを取り戻した侍女たちは、黒帝とその婚約者のラブラブさを教えてくれた。仲睦まじい事で結構結構。しかし、このクソ忙しい時に来るとはどういう了見だ。
「イオリ様は、どなたかいらっしゃらないのですか?」
「ん?そうだねぇ、居ないし作る予定もないかなあ」
「そうなのですか?」
「一応、これでも戦場に出たら前線だからね。そんな重荷になるような存在はいいかな」
5年ぐらい付き合っていた魔術師も、私と同じでずっと前線に立っていた。けれど、死んでしまったのだ。呆気なく、敵の術中にはまってしまった。その時、私とは違う戦場にいた。だから、彼の最期は見ていない。見なくて良かったと、惨たらしい死だったと彼の親友は泣いていたけど。
「そう、ですよね。イオリ様はグレイアス皇子の娘様で、戦神の懐刀ですものね。遺して逝くこと、遺されて逝かれることは怖いですものね」
「私たち戦場孤児で、前皇帝に拾って貰って侍女になったんです。だから、なんとなく分かるような気がします」
「そう。分かってくれるなら、私相手にこの会話は禁止だって言っといてね。ちょっと心配性な人たちが居るからさ」
「「わかりました!」」
どんなに惨たらしい死でも、最期に一目だけでも見ておきたかったな。もう顔も声も思い出せない。5年も付き合っていたのに。薄情なオンナだと笑うか、時雨。
「さて、どうしよう」
『ボクはどうするの?』
「まず、アンタは周りのドラゴンたちと親睦を深めること。見た目はそれでも、お前はまだ成長期だからなあ。周りのドラゴンたちと話をして、この国について教えて貰ってらっしゃい」
『…ボクの父様、グレイアスのドラゴンだったんだよ?この国について、知らない訳がない。ましてや常識だよ』
「……だよね、知らない訳ないよね。うん、グレイアスのあのドラゴンがメギドの父竜だったなんてビックリだわ」
以前、グレイアスとノルエルハのドラゴンの影を見たことがあると言ったと思う。影というのは読んで文字の如くカゲ。満月の月明りで喚ばれたドラゴンは、鮮明に覚えている。忘れれるはずがない。真っ赤な血で染めたような赤いドラゴンを。心優しきドラゴンを。
『一度だけ聞いたことあるんだよ。主人の愛息子と愛娘に会ったって』
生まれてたんかい、そんなツッコミは野暮だから喉の奥にしまっておく。ドラゴンの寿命とかワカンナイ。ドラゴンなんて空想だった生き物。ダカラ、私ワカンナイ。
「と、とりあえずメギドとして相手にしてもらいなさいな。火の王の息子じゃなくて、メギドという個体としてね」
『はあい』
メギド、その名の意味は業火。業火とは罪人を灼き燋がす為の猛火のことだ。強い名前をもらったな、メギド。お前はいつか、この世界で最高の火の王となるだろう。私の父に仕えた火の王よりも立派な王に。主人となったそう私が願う。
「私は黒帝の所に居るから、あとはよろしくね」
「りょ、了解いたしました!!」
ウェルミス様すげぇ、とかいろいろ聞こえる声をシャットアウトして、私は主の下へと足を向けた。忙しない城内は何処か重々しい。城下があんな風になってしまったからだろか?だからと言って、ここまで忙しなくなる筈がない。
「イ、イオリ様!?」
「え、あの、ドラゴンたちの下に行かれてたのでは?」
「もう終わったから大丈夫だけど、どうかした?」
「いえ、別に何もあったということではございませんが」
若い侍女たちはキョドって私の顔を見てくる。何でキョドる必要があるんだ。黒帝の執務室は、目と鼻の先で書類が溜まっている筈だ。そう思えば思う程、さっさと片付けたくなってくる。元事務員の性なのだろうか?まあ、違うニオイがあるからそれに対してこの侍女たちは焦っているんだろう。
「だったら、そこを通して貰える?仕事があるから」
「し、仕事ですか…?」
「えぇ。昨日の被害書類を私宛てにしてもらってるから、恐らく黒帝陛下の所にあると思うの」
「え、っと。お急ぎですか?」
「今日中に白帝陛下に提出する約束してるの」
別にその書類を取ったら、自室で仕事をしても良いのだ。だから、そんなに慌てるな。もはや苦笑ものである。侍女長でなくともこの城に仕える侍女ならば、常に堂々としてなければならないだろうに。
「で、ですが…その、」
「あー、分かった分かった。客人が来ているんだろう?分かったからそう慌てるな。視線をウロウロ彷徨わせるな。この城に仕えている侍女なんだから、堂々と嘘でも吐けばいいだろう。嘘はバレない限り真実として成り立つ。それに、此処に居るのはイオリだ。嘘を吐いたって罪には問わないよ」
時と場合に寄るけどね、と付け加えた。今にも泣きそうな顔をする侍女たちに、暫くは近づかないよと告げて一緒に黒帝の執務室から離れた。私の叱咤激励になるのか分からないけど、落ち着きを取り戻した侍女たちは、黒帝とその婚約者のラブラブさを教えてくれた。仲睦まじい事で結構結構。しかし、このクソ忙しい時に来るとはどういう了見だ。
「イオリ様は、どなたかいらっしゃらないのですか?」
「ん?そうだねぇ、居ないし作る予定もないかなあ」
「そうなのですか?」
「一応、これでも戦場に出たら前線だからね。そんな重荷になるような存在はいいかな」
5年ぐらい付き合っていた魔術師も、私と同じでずっと前線に立っていた。けれど、死んでしまったのだ。呆気なく、敵の術中にはまってしまった。その時、私とは違う戦場にいた。だから、彼の最期は見ていない。見なくて良かったと、惨たらしい死だったと彼の親友は泣いていたけど。
「そう、ですよね。イオリ様はグレイアス皇子の娘様で、戦神の懐刀ですものね。遺して逝くこと、遺されて逝かれることは怖いですものね」
「私たち戦場孤児で、前皇帝に拾って貰って侍女になったんです。だから、なんとなく分かるような気がします」
「そう。分かってくれるなら、私相手にこの会話は禁止だって言っといてね。ちょっと心配性な人たちが居るからさ」
「「わかりました!」」
どんなに惨たらしい死でも、最期に一目だけでも見ておきたかったな。もう顔も声も思い出せない。5年も付き合っていたのに。薄情なオンナだと笑うか、時雨。
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