異世界に喚ばれたので、異世界で住みます。

千絢

12.現状報告

知ってたかい?ドラゴンは人のカタチを取ることは出来るけど、ドラゴンとヒトが交わり子をなすことは出来ないんだ。つまり、あの子供は幼生のドラゴンが人型を取っただけだったのだ。








目の前で落ちた子供にテンパって、竜人というまさにファンタジーなワードが頭を過ったけど竜人なんてこの世界に存在しないことを思い出した。この世界にも存在する種なんているんだなあーとか、現実逃避をしてみる。






私の目の前には、不機嫌丸出しの白帝とロベルト様が居る。太陽は隠れ、月が姿を見せている現在、黒帝、マリベル様、ジェラール様に緊急帰還命令が出され帰ってきている最中だと思う。大体、どの砦に向かうにも半日はかかる。つまり、砦に向かった3人は不運にも無駄足を運んだのだ。










ちなみに、東西南北に砦がある。この白から一番遠い南の砦には、ノルエルハが住んでいる。国境の騎士大公ノルエルハ。彼の砦は屋敷だそうで、男女関係なく使用人たちはデキる人たちだそうだ。ノルエルハ自身も凄い戦力を持っているから、南の砦が落ちることは不可能に近いだろうと黒帝曰く。








「ウェルミス」




「わーってますって、白帝。というか急かされても、時空をイジることなんて不可能ですので」






「…現状!!」






「へいへい。ドラゴンは昼過ぎに城下の中心部へ飛来してきました。それから、見ての通り大暴れいたしまして、およそ300棟の家屋が全壊もしくは半壊してます。対戦しました騎士20人の6名が重傷。魔術師団からは15人のうち10名が重中傷。というか、この国に居る騎士と魔術師の数が少な過ぎるのも問題ですね」








「…それは今後の課題としておいといて。あぁぁぁ…、で?例の幼生のドラゴンは?」








「火属性のドラゴンでした。お聞きかと思いますが、我が父の血肉を使って侵され、強制的に成長を促されたのかと。ドラゴンを侵していた異物は、責任を持って私が処分しておきます」






「異物、ね」








「ノルエルハが遺体を探しているので、私は安心してこちらに取り組むことが出来ます」








「うん、君には期待してる…色んな意味でね」










ドンっと扉が開いた。ノックもないとは、扉へ目を向ければ焦った顔の3人。夜風のニオイを纏った3人は、待ち焦がれていた黒帝とマリベル様とジェラール様である。マントを羽織った、騎士の格好のまま走って来たのだろう。








「やあ、おかえり」






「おかえりって、おまっ。ドラゴン来たんだろ!?」






「ウェルミスのおかげで、どうにか最小限には済んだんだけどねぇー。被害額を考えると頭が痛いね、ロベルト」






「…はい。中央の噴水まで壊れてしまいましたから、明日から水質検査と噴水の構築のし直しですね」






「いや、そんなことどうでも良いけど、僕等こんなに急かして帰らせたのに何?!」






「まぁまぁ、マリベル様。とりあえず皆さん、席について下さい。現状報告をサラッとしたいと思います」






サラッとね。サラッと報告をした後、何故か私の話になった。どうやって無傷捕獲したのだとか、騎士団とか魔術師たちの先頭に立ったのだとか。どーでも良いじゃん。








「ドラゴン、か」




「珍しいな、街に来るなんて」




「あれ?私の父、グレイアスの遺体が消えたんですよ?ちなみに、ドラゴンに使われてましたけど」






「はっ!?」


「何ィ!?」


「聞いてないよ!?」






三者三様のコメントありがとうございます。白帝を見れば素知らぬフリ。あえてだろう。私からソロッと目を逸らしやがった。言わなかったなこの人。めんどくせぇ。






「教皇派の仕業じゃない?」




「だろうな。じゃなきゃ、そんなグレイアス様のご遺体を」




「めんどくせぇ。もう消そうぜ、教皇派なんぞ。邪魔で仕方ねぇだろ、アル」




「――邪魔、ね。確かに邪魔だ。使い道も何もないただの税金喰らいだしなあ」






そんな話を聞きながら、私はポケットの中にある異物の魔封石に触れた。何日で浄化…否、取り込めるかな。父の血肉の力。取り込めない筈がない。というか、取り込んどかないと。邪なチカラが混じってるけど、これぐらい自分の魔力で浄化できる。








「お茶と軽食用意してきまーす」






夜通しで行われるだろう、この会議の為にお茶と軽食を用意するべく部屋を出た。教皇派とドラゴンと。うーん。世界は広いなあ。











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