ルーチェ
50.「もー仕方がないなぁ……」
つまり今この状況でそれを思い出して、何が言いたいのかというと。今の千景君のテンションは場違いなテンションだ。しかもハイテンションの方。
 「相当参ってますねぇ」
「え?」
「飛鷹王、何かあった?」
赤茶の目をくりっとさせて、飛鷹王は私の言葉に首を捻る。思い当たる節はないと。なら、何があったんだろう。元々、情緒不安定な所もあったからなぁ。変な思考回路から、ズンズンと堕ちていくってことも何回かあったし。
「いつものパターンからしてロクでもないことを考えて、って感じかな」
「またか…」
「分かってるとは思うんだけど、夜鷹姫に重々離れない様に言っといてくれる?」
飛鷹王の溜め息が返答となって、私も遅れて溜め息を吐く。あぁ、千景君の目が曇って行く。黒い瞳が淀み、仄かに揺れているのが見て取れた。それと同時に、魔力にも歪みが生じ始める。
 「ルーチェ、君は…」
「あら?聞いたんじゃないんですか?前世の恋人だって」
「聞いたけどよぉ、それって妄言じゃねェの?」
「信じるか信じないか、嘘か真か、自分で決めてください」
私ですら、あの記憶が夢なんじゃないかって疑う時がある。その度に、夢なんじゃなくて現実だったんだって気付いて病む。記憶に振り回されるなんて、嫌なことなんだけどね。
「縁は切っても切れないものだから」
私と千景君と飛鷹王と夜鷹姫を結ぶ糸は、切っても切れない頑丈なものだ。それおいと簡単に切れて堪るものか。
「ちーかーげー君!」
ズーンと黒いモヤモヤした雰囲気を背負った陛下。陛下自身を取り巻く魔力もねっとりと重たい。魔力って精神状態で左右されるから、これ以上にない程魔力が重たい。近衛たちの顏が、かなり強張っている。
「…なに、ルー」
「やぁねぇ、辛気臭い顔して!」
「痛いよ、背中叩かないで」
どうにか払拭しようと、陛下の背中をバシバシ叩けば苦情が上がってきた。近衛の目が痛い。あ、海燕殿と第三皇子の目も痛い。でも、陛下の目は虚ろ。良いのかよ、こんなのが皇帝で。
「ちょっと、第三皇子!この人、いつもこんなになったらどう対処してたの!?」
「…」
すると、第三皇子はそっと私から目を逸らした。同じく海燕殿や近衛たちも。ふむ、その反応を見ると――多分、あの二択。
「女を宛がって好きにさせたか、気が済むまで引き籠らせたか…どれ?」
「ルーチェ。そう怒るな」
「あら、カイル兄上。私は怒ってなどいませんよ。さぁ、素直にお答えくださらないと、我流の方法で陛下を…」
「その語尾のはぐらかし方は何!?」
叫ぶ第三皇子だけど、言わなかった貴方方が悪い。
「ちょっと、そこのお兄さん。その剣貸しておくれ」
「え、は!?」
慌てふためく近衛の帯剣している剣を―鞘は要らないから―抜いて、私は自ら帯刀している刀を地面に置いた。
「うーん。そこそこの重さだけど、これちゃんと腕にあってる?お兄さんの腕だと、もう少し細身でも良いかもしれないね」
「いや、確かに僕も重いなとは思ってましたが……はい!?」
「そこのお兄さんも、ちょいと貸してね」
慌てふためく近衛の隣の近衛の帯剣している剣を抜いて、少しだけ重さの確認。振れない程でもないな。
 「相当参ってますねぇ」
「え?」
「飛鷹王、何かあった?」
赤茶の目をくりっとさせて、飛鷹王は私の言葉に首を捻る。思い当たる節はないと。なら、何があったんだろう。元々、情緒不安定な所もあったからなぁ。変な思考回路から、ズンズンと堕ちていくってことも何回かあったし。
「いつものパターンからしてロクでもないことを考えて、って感じかな」
「またか…」
「分かってるとは思うんだけど、夜鷹姫に重々離れない様に言っといてくれる?」
飛鷹王の溜め息が返答となって、私も遅れて溜め息を吐く。あぁ、千景君の目が曇って行く。黒い瞳が淀み、仄かに揺れているのが見て取れた。それと同時に、魔力にも歪みが生じ始める。
 「ルーチェ、君は…」
「あら?聞いたんじゃないんですか?前世の恋人だって」
「聞いたけどよぉ、それって妄言じゃねェの?」
「信じるか信じないか、嘘か真か、自分で決めてください」
私ですら、あの記憶が夢なんじゃないかって疑う時がある。その度に、夢なんじゃなくて現実だったんだって気付いて病む。記憶に振り回されるなんて、嫌なことなんだけどね。
「縁は切っても切れないものだから」
私と千景君と飛鷹王と夜鷹姫を結ぶ糸は、切っても切れない頑丈なものだ。それおいと簡単に切れて堪るものか。
「ちーかーげー君!」
ズーンと黒いモヤモヤした雰囲気を背負った陛下。陛下自身を取り巻く魔力もねっとりと重たい。魔力って精神状態で左右されるから、これ以上にない程魔力が重たい。近衛たちの顏が、かなり強張っている。
「…なに、ルー」
「やぁねぇ、辛気臭い顔して!」
「痛いよ、背中叩かないで」
どうにか払拭しようと、陛下の背中をバシバシ叩けば苦情が上がってきた。近衛の目が痛い。あ、海燕殿と第三皇子の目も痛い。でも、陛下の目は虚ろ。良いのかよ、こんなのが皇帝で。
「ちょっと、第三皇子!この人、いつもこんなになったらどう対処してたの!?」
「…」
すると、第三皇子はそっと私から目を逸らした。同じく海燕殿や近衛たちも。ふむ、その反応を見ると――多分、あの二択。
「女を宛がって好きにさせたか、気が済むまで引き籠らせたか…どれ?」
「ルーチェ。そう怒るな」
「あら、カイル兄上。私は怒ってなどいませんよ。さぁ、素直にお答えくださらないと、我流の方法で陛下を…」
「その語尾のはぐらかし方は何!?」
叫ぶ第三皇子だけど、言わなかった貴方方が悪い。
「ちょっと、そこのお兄さん。その剣貸しておくれ」
「え、は!?」
慌てふためく近衛の帯剣している剣を―鞘は要らないから―抜いて、私は自ら帯刀している刀を地面に置いた。
「うーん。そこそこの重さだけど、これちゃんと腕にあってる?お兄さんの腕だと、もう少し細身でも良いかもしれないね」
「いや、確かに僕も重いなとは思ってましたが……はい!?」
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