ルーチェ
14.「口煩そうな奴が来た!」
――さて、戻ってきた所で千景君こと皇帝陛下は、第三皇子の転移魔術によって自室へと引き取られていった。
夜鷹姫も着いて行き、主が不在となった執務室に残ったのは、私とカイル兄上と見覚えのない銀髪碧眼のお兄さん。なかなか涼しげな目元が、随分と厳しそうだ。
「カイル団長、彼女はどちらの誰でしょうか?」
「彼女は翔陽様の婚約者で在らせられるアマルティア様の侍女、ルーチェ・アルグレッセルだ。ルーチェ、あの方は宰相の海燕殿だ」
 宰相の海燕様ね、覚えておこう。私に向ける敵意と不信感さえあれば、どんな大きなことが起きても忘れられないわ。のちに耳にした話だけど、海燕様は皇帝陛下の乳兄弟で幼馴染でもあるとか。
「では、アルグレッセル殿。主が不在の場所に、何時までも留まるのは不敬罪に当たります。出られた方が宜しいかと思いますよ」
この言葉に異論はない。発言権のない私は黙って従うための意を示す。宰相様も気難しそうな人だ。私だったら息が詰まるけど、陛下だったら素で居られるんだろうな。
「それでは、俺も彼女と共に身を引こうか」
「あぁ、でしたら少々お待ちください。団長には渡したい書類があるのです」
「また書類か…」
 嫌そうなカイル兄上の声だけど、それも仕事だと窘められる。それを聞きながら、私は退出の声をかけて執務室を出た。行く宛てもないし、最も城の道も分からない。カイル兄上が出て来るまで、部屋の前で立っていることにした。
〈ルーチェ!〉
「飛鷹、どうしたの?」
〈どういうことだ!!夜鷹の気配も、千景の気配もするではないか!!〉
「あぁ、そのこと。居たんだよ、2人とも」
飛鷹は私の前世にも〝居た〟のだ。そして、再び私の下に〝転生〟してきた。千景君も夜鷹姫も同じだろう。不思議な運命の下に、私たちは再び生を成した。
差出した私の腕に留まった飛鷹は、ワイワイと喚く様に言葉を放つ。大きな羽を広げて、身振り手振りならぬ身振り羽振りで、事の大きさを伝えて来る。
〈…我等と共に、再び歩むのか?〉
「さぁ?少なくとも、向こうは位が私たちよりも上だからね。そのことは分からないわ。ただ、出来るならば一緒に歩みたいわね」
〈ルーチェ…〉
「というかさ。私、やっぱり侍女に向いてないわぁ…」
あのポロリと発言してしまったこと等等、様々なことが脳裏を過ぎって行く。侍女になって早8年が経とうとしているが、常々思っていたのだ。
まぁ、侍女というのは副業だ。
どちらかというと、戦場を駆ける方が向いているかもしれない。アマルティア様が第三皇子と無事に結ばれたら、此処の騎士団にでも入ろうかな。
〈何かをやらかしたのか?〉
「んや、常々思っていたことよ。それよりも、他の怪物の皆は明日か明後日には入れるのよね?」
そのことについても、陛下か第三皇子に許可を貰っておかなければならない。エノクの宝の下に集まる許可を。異国の者が彩帝国に入る許可。それは必要なものだ。
夜鷹姫も着いて行き、主が不在となった執務室に残ったのは、私とカイル兄上と見覚えのない銀髪碧眼のお兄さん。なかなか涼しげな目元が、随分と厳しそうだ。
「カイル団長、彼女はどちらの誰でしょうか?」
「彼女は翔陽様の婚約者で在らせられるアマルティア様の侍女、ルーチェ・アルグレッセルだ。ルーチェ、あの方は宰相の海燕殿だ」
 宰相の海燕様ね、覚えておこう。私に向ける敵意と不信感さえあれば、どんな大きなことが起きても忘れられないわ。のちに耳にした話だけど、海燕様は皇帝陛下の乳兄弟で幼馴染でもあるとか。
「では、アルグレッセル殿。主が不在の場所に、何時までも留まるのは不敬罪に当たります。出られた方が宜しいかと思いますよ」
この言葉に異論はない。発言権のない私は黙って従うための意を示す。宰相様も気難しそうな人だ。私だったら息が詰まるけど、陛下だったら素で居られるんだろうな。
「それでは、俺も彼女と共に身を引こうか」
「あぁ、でしたら少々お待ちください。団長には渡したい書類があるのです」
「また書類か…」
 嫌そうなカイル兄上の声だけど、それも仕事だと窘められる。それを聞きながら、私は退出の声をかけて執務室を出た。行く宛てもないし、最も城の道も分からない。カイル兄上が出て来るまで、部屋の前で立っていることにした。
〈ルーチェ!〉
「飛鷹、どうしたの?」
〈どういうことだ!!夜鷹の気配も、千景の気配もするではないか!!〉
「あぁ、そのこと。居たんだよ、2人とも」
飛鷹は私の前世にも〝居た〟のだ。そして、再び私の下に〝転生〟してきた。千景君も夜鷹姫も同じだろう。不思議な運命の下に、私たちは再び生を成した。
差出した私の腕に留まった飛鷹は、ワイワイと喚く様に言葉を放つ。大きな羽を広げて、身振り手振りならぬ身振り羽振りで、事の大きさを伝えて来る。
〈…我等と共に、再び歩むのか?〉
「さぁ?少なくとも、向こうは位が私たちよりも上だからね。そのことは分からないわ。ただ、出来るならば一緒に歩みたいわね」
〈ルーチェ…〉
「というかさ。私、やっぱり侍女に向いてないわぁ…」
あのポロリと発言してしまったこと等等、様々なことが脳裏を過ぎって行く。侍女になって早8年が経とうとしているが、常々思っていたのだ。
まぁ、侍女というのは副業だ。
どちらかというと、戦場を駆ける方が向いているかもしれない。アマルティア様が第三皇子と無事に結ばれたら、此処の騎士団にでも入ろうかな。
〈何かをやらかしたのか?〉
「んや、常々思っていたことよ。それよりも、他の怪物の皆は明日か明後日には入れるのよね?」
そのことについても、陛下か第三皇子に許可を貰っておかなければならない。エノクの宝の下に集まる許可を。異国の者が彩帝国に入る許可。それは必要なものだ。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
3395
-
-
93
-
-
3087
-
-
149
-
-
49989
-
-
549
-
-
17
-
-
337
-
-
52
コメント