Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
恋は焦らずに (7)
そのフロアの奥にある喫茶店に入り、コーヒーを注文した。
店内は芳しいコーヒーの香りが漂っている。
「さっきの話だけどね……どうして恵介はそんなに焦ってるの?何が不安?」
恵介はコーヒーを一口飲んで、カップを持つ手元を見つめながら、ほんの少し黙り込んだ。
「今度こそしっかり捕まえとこうって、俺は夕べからずっと焦ってるよ。また幸が俺から離れて行くんじゃないかって不安だから」
「何で不安なの?私は恵介が好きなんだよ?」
恵介はこれまで不安なそぶりなんて見せなかったし、むしろグイグイ迫ってきた。
その姿は私の目には自信有りげに見えた。
だけどその時、琴音が恵介のことを『元々自分に自信がない人だから』と言っていたことを思い出した。
「前は夏樹の代わりになんて絶対言いたくなかったから、幸が好きだって言わなかった。幸がちゃんと俺自身を見てくれるようになったら言おうって決めてたのに、幸は俺の気持ちも聞かないで、嘘ついて離れていったじゃん」
『夏樹の代わりに』と言って付き合っていた時、確かに恵介は一度も私に好きだと言わなかった。
あの時は私は、『恵介は私のことを好きなわけじゃない』と思っていたけど、恵介はそんな風に思ってたんだ。
「ごめん……。恵介は私のことなんか好きじゃないんだから好きになっちゃダメだって思ってたのに、どんどん恵介のことが好きになって……また傷付くのが怖くて逃げたんだ。私に夏樹の身代わりが必要なくなれば、恵介は離れていくんだって思ってたから」
「好きだって言えなくても、俺は幸への気持ちを目一杯幸に向けてたつもりだよ。でも全然伝わらなかった。幸は鈍感だから」
私って鈍感なの……?
そんなこと初めて言われた。
「だから今度は俺がどれくらい幸を好きか、どれくらい幸と一緒にいたいかわかって欲しくて、何度も言葉にしたし……俺がいないとダメになるくらい好きになればいいと思って、幸の体の全部に、一番奥まで俺を刻み付けとこうって……」
それであんなに何度も……?
夕べと今朝の激しさとか、余裕なさげに私を求める恵介を思い出して、思わず赤面してしまう。
お互いに好きだとわかっても不安になるなんて、恵介はやっぱり私と考え方が似ているらしい。
私も恵介も、不安を払拭するには、とことん本音を話さなくちゃ伝わらないのかも知れない。
「私もね……少し不安だったよ。これもまた夏樹の代わりってことはないよねとか……」
「もう二度と他の男の身代わりなんて御免だ。いくらそばにいても代わりでしかないなんて、虚しいだけだから」
「付き合い出したとこなのに、こんなに突っ走ってたらすぐに飽きられるんじゃないかって」
恵介はばつの悪そうな顔をしてうつむいたあと、おもむろに顔を上げて、まっすぐに私の目を見つめた。
「……そんなわけないだろ。確かに焦って突っ走ってるのは自分でもわかってたけど……ずっと一緒にいたいってのも、早く幸と結婚したいってのも、全部俺の本心だ」
焦って突っ走っちゃうくらい、私と一緒にいたいって本気で思ってくれてるんだ。
表情には出さなくても、恵介もジタバタしたりするんだな。
恵介も私と同じように弱い部分を持ってるんだとわかって、少し安心した。
「うん、わかってるよ。だけどね……そんなに焦らないで。私も恵介のこと、ずっと大事にしたいって思ってる。だから尚更、お互いをよく知ることから始めたいなって」
「それ、結婚してからでも良くない?」
ん……?やっぱりせっかちなのかな?
店内は芳しいコーヒーの香りが漂っている。
「さっきの話だけどね……どうして恵介はそんなに焦ってるの?何が不安?」
恵介はコーヒーを一口飲んで、カップを持つ手元を見つめながら、ほんの少し黙り込んだ。
「今度こそしっかり捕まえとこうって、俺は夕べからずっと焦ってるよ。また幸が俺から離れて行くんじゃないかって不安だから」
「何で不安なの?私は恵介が好きなんだよ?」
恵介はこれまで不安なそぶりなんて見せなかったし、むしろグイグイ迫ってきた。
その姿は私の目には自信有りげに見えた。
だけどその時、琴音が恵介のことを『元々自分に自信がない人だから』と言っていたことを思い出した。
「前は夏樹の代わりになんて絶対言いたくなかったから、幸が好きだって言わなかった。幸がちゃんと俺自身を見てくれるようになったら言おうって決めてたのに、幸は俺の気持ちも聞かないで、嘘ついて離れていったじゃん」
『夏樹の代わりに』と言って付き合っていた時、確かに恵介は一度も私に好きだと言わなかった。
あの時は私は、『恵介は私のことを好きなわけじゃない』と思っていたけど、恵介はそんな風に思ってたんだ。
「ごめん……。恵介は私のことなんか好きじゃないんだから好きになっちゃダメだって思ってたのに、どんどん恵介のことが好きになって……また傷付くのが怖くて逃げたんだ。私に夏樹の身代わりが必要なくなれば、恵介は離れていくんだって思ってたから」
「好きだって言えなくても、俺は幸への気持ちを目一杯幸に向けてたつもりだよ。でも全然伝わらなかった。幸は鈍感だから」
私って鈍感なの……?
そんなこと初めて言われた。
「だから今度は俺がどれくらい幸を好きか、どれくらい幸と一緒にいたいかわかって欲しくて、何度も言葉にしたし……俺がいないとダメになるくらい好きになればいいと思って、幸の体の全部に、一番奥まで俺を刻み付けとこうって……」
それであんなに何度も……?
夕べと今朝の激しさとか、余裕なさげに私を求める恵介を思い出して、思わず赤面してしまう。
お互いに好きだとわかっても不安になるなんて、恵介はやっぱり私と考え方が似ているらしい。
私も恵介も、不安を払拭するには、とことん本音を話さなくちゃ伝わらないのかも知れない。
「私もね……少し不安だったよ。これもまた夏樹の代わりってことはないよねとか……」
「もう二度と他の男の身代わりなんて御免だ。いくらそばにいても代わりでしかないなんて、虚しいだけだから」
「付き合い出したとこなのに、こんなに突っ走ってたらすぐに飽きられるんじゃないかって」
恵介はばつの悪そうな顔をしてうつむいたあと、おもむろに顔を上げて、まっすぐに私の目を見つめた。
「……そんなわけないだろ。確かに焦って突っ走ってるのは自分でもわかってたけど……ずっと一緒にいたいってのも、早く幸と結婚したいってのも、全部俺の本心だ」
焦って突っ走っちゃうくらい、私と一緒にいたいって本気で思ってくれてるんだ。
表情には出さなくても、恵介もジタバタしたりするんだな。
恵介も私と同じように弱い部分を持ってるんだとわかって、少し安心した。
「うん、わかってるよ。だけどね……そんなに焦らないで。私も恵介のこと、ずっと大事にしたいって思ってる。だから尚更、お互いをよく知ることから始めたいなって」
「それ、結婚してからでも良くない?」
ん……?やっぱりせっかちなのかな?
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