Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
誕生日前夜 (4)
「しんみりしてどうしたの?あ、恵介、戻ってたんだね」
リビングに戻ってきた琴音に、背後から声を掛けられてドキッとした。
まさか、今の会話聞かれてないよね?
「ん?何それ?」
「アイス。これ、おまえの分」
恵介はぶっきらぼうにそう言って、コンビニ袋ごとアイスを琴音に差し出す。
7年近くも面倒見てきたから当然なのかも知れないけど、『おまえ』って呼ぶほど親しい間柄なんだな。
琴音は袋の中からバニラのアイスを取り出して、少し不服そうな顔をした。
「私、クッキークリームが好きなのに」
「おまえの好みなんか知らん。文句があるなら食うな」
「食べるけど……」
私より琴音と過ごした時間の方がずっと長いはずなのに、恵介は琴音の好みを知らないらしい。
琴音とは一緒にアイスを食べたりはしなかったんだろうか。
「なんで幸にはイチゴ?幸がイチゴ好きだって知ってたの?」
「……うるさいな。どうでもいいだろ。溶けないうちに食え」
恵介は私と付き合っていたことを、琴音に話していないようだ。
琴音には秘密だと言われていたから私も話さなかったけれど、知られると何かまずいことでもあるのかな。
琴音は恵介とは付き合ってないって言ったけど、恵介はそうは思っていないみたいだから、私とのことは隠しておきたいんだろう。
その程度の関係だったんだと改めて言われているような気がして、少し落ち込みながら、琴音から受け取ったスプーンでイチゴのアイスをすくって口に運んだ。
イチゴのアイスは二人で一緒に食べた時と同じ甘さで、口の中でゆっくりと溶けていく。
「美味しい……」
私が呟くと、恵介はほんの少し笑みを浮かべて立ち上がり、キッチンの換気扇の下でタバコに火をつけた。
懐かしいと感じるほど長い時間は経っていないはずなのに、何度も見たタバコを吸う恵介の後ろ姿を懐かしく感じる。
一緒にいる時間は短かったけれど、あっという間に恵介といることが当たり前のようになっていたせいかも知れない。
アイスを食べ終わった後、琴音が冷蔵庫から新しいチューハイを持ってきた。
「幸、全然飲んでないね。私も付き合うし、せっかくだからパーッと飲もう」
琴音は私のグラスにチューハイを注ぎ、自分のグラスにも並々とチューハイを注いだ。
私もあまり強くはないけど、確か琴音は、私よりずっとお酒は弱いはず。
それなのに『パーッと飲もう』なんて、大丈夫だろうか。
「はい、飲んで飲んで」
「琴音、弱いんだから無理しないでよ?」
「少しくらいは大丈夫!もし酔っ払っても、ここ私んちだし!はい、カンパーイ!!」
陽気に笑いながらグラスを合わせて、琴音はチューハイを飲み始めた。
少し心配だけど、琴音と一緒に飲むなんてめったにないから、たまにはいいか。
しばらくすると、案の定琴音はあっという間に酔いが回って真っ赤な顔をしていた。
心なしかろれつが回っていない気もする。
まだ一杯ちょっとしか飲んでないのに、ホントに弱い。
「琴音、大丈夫?」
「大丈夫よぅ。そうだ、ケーキ切ろう!恵介、包丁持ってきて!」
「おまえなぁ……」
恵介が呆れた顔をして立ち上がろうとした。
「あ……私がするから座ってて。包丁のある場所は知ってるし」
キッチンから包丁を持って戻って来ると、恵介が不思議そうな顔をしていた。
「なんでそんなこと知ってるの?」
「前にここで一緒に料理したことがあるから」
「へぇ、そうなんだ……」
恵介は私の言葉に少し驚いたようだ。
私と琴音が一緒に料理をしていたのがそんなに意外だったのかな?
もしかしたら、夏樹との一件があったのに、私が琴音と仲良くしているのが不思議なのかも知れない。
リビングに戻ってきた琴音に、背後から声を掛けられてドキッとした。
まさか、今の会話聞かれてないよね?
「ん?何それ?」
「アイス。これ、おまえの分」
恵介はぶっきらぼうにそう言って、コンビニ袋ごとアイスを琴音に差し出す。
7年近くも面倒見てきたから当然なのかも知れないけど、『おまえ』って呼ぶほど親しい間柄なんだな。
琴音は袋の中からバニラのアイスを取り出して、少し不服そうな顔をした。
「私、クッキークリームが好きなのに」
「おまえの好みなんか知らん。文句があるなら食うな」
「食べるけど……」
私より琴音と過ごした時間の方がずっと長いはずなのに、恵介は琴音の好みを知らないらしい。
琴音とは一緒にアイスを食べたりはしなかったんだろうか。
「なんで幸にはイチゴ?幸がイチゴ好きだって知ってたの?」
「……うるさいな。どうでもいいだろ。溶けないうちに食え」
恵介は私と付き合っていたことを、琴音に話していないようだ。
琴音には秘密だと言われていたから私も話さなかったけれど、知られると何かまずいことでもあるのかな。
琴音は恵介とは付き合ってないって言ったけど、恵介はそうは思っていないみたいだから、私とのことは隠しておきたいんだろう。
その程度の関係だったんだと改めて言われているような気がして、少し落ち込みながら、琴音から受け取ったスプーンでイチゴのアイスをすくって口に運んだ。
イチゴのアイスは二人で一緒に食べた時と同じ甘さで、口の中でゆっくりと溶けていく。
「美味しい……」
私が呟くと、恵介はほんの少し笑みを浮かべて立ち上がり、キッチンの換気扇の下でタバコに火をつけた。
懐かしいと感じるほど長い時間は経っていないはずなのに、何度も見たタバコを吸う恵介の後ろ姿を懐かしく感じる。
一緒にいる時間は短かったけれど、あっという間に恵介といることが当たり前のようになっていたせいかも知れない。
アイスを食べ終わった後、琴音が冷蔵庫から新しいチューハイを持ってきた。
「幸、全然飲んでないね。私も付き合うし、せっかくだからパーッと飲もう」
琴音は私のグラスにチューハイを注ぎ、自分のグラスにも並々とチューハイを注いだ。
私もあまり強くはないけど、確か琴音は、私よりずっとお酒は弱いはず。
それなのに『パーッと飲もう』なんて、大丈夫だろうか。
「はい、飲んで飲んで」
「琴音、弱いんだから無理しないでよ?」
「少しくらいは大丈夫!もし酔っ払っても、ここ私んちだし!はい、カンパーイ!!」
陽気に笑いながらグラスを合わせて、琴音はチューハイを飲み始めた。
少し心配だけど、琴音と一緒に飲むなんてめったにないから、たまにはいいか。
しばらくすると、案の定琴音はあっという間に酔いが回って真っ赤な顔をしていた。
心なしかろれつが回っていない気もする。
まだ一杯ちょっとしか飲んでないのに、ホントに弱い。
「琴音、大丈夫?」
「大丈夫よぅ。そうだ、ケーキ切ろう!恵介、包丁持ってきて!」
「おまえなぁ……」
恵介が呆れた顔をして立ち上がろうとした。
「あ……私がするから座ってて。包丁のある場所は知ってるし」
キッチンから包丁を持って戻って来ると、恵介が不思議そうな顔をしていた。
「なんでそんなこと知ってるの?」
「前にここで一緒に料理したことがあるから」
「へぇ、そうなんだ……」
恵介は私の言葉に少し驚いたようだ。
私と琴音が一緒に料理をしていたのがそんなに意外だったのかな?
もしかしたら、夏樹との一件があったのに、私が琴音と仲良くしているのが不思議なのかも知れない。
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