Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
誕生日前夜 (2)
琴音は私の手からピザの箱を取って、何食わぬ顔でリビングに向かう。
「いいからいいから。ほら、幸も早くおいでよ」
この廊下の先に恵介がいるのだと思うと急激に鼓動が速くなり、緊張して顔が強ばる。
リビングに戻り、おずおずと琴音の隣に座った。
テーブルをはさんで向かいには恵介がいる。
どうしよう……まともに顔見られない……。
「恵介も来たし、ちょうどピザも届いたことだし、早速始めようか」
琴音がテーブルの上にピザの箱を置いて蓋を開いた。
恵介はテーブルの上の料理やケーキを見ながら、少し首をかしげている。
「始めるって……何を?」
「ん?バースデーパーティー。明日、幸の誕生日だから」
琴音は取り皿を配りながら、恵介の顔も見ずに答えた。
恵介は驚いた顔をしてチラッと私の方を見た。
「えっ……誕生日……?」
「うん……明日……」
そう言えば、付き合っている時には誕生日の話はしたことがなかったから、私たちはお互いの誕生日も知らない。
一緒にいる時はたくさん話をしたと思っていたけど、お互い自分のことはあまり話していなかったと気付いた。
「知ってたら何かプレゼント用意したのに……」
恵介がボソッと呟いた。
「幸の誕生日のお祝いって言ったら恵介は来なかったでしょ?」
琴音はそう言って恵介にグラスを差し出し、ビールを注ごうとした。
「今日は車だから、酒はいい」
「そうなんだ。じゃあコーラでいい?」
「うん」
そうか、私がいるって知ってたら、恵介は来なかったんだ。
あんな別れ方をしたんだから、当然と言えば当然か。
本当は私には会いたくなかったのかも。
『知ってたら何かプレゼント用意したのに』なんて、単なる社交辞令みたいなものなのに、もしかしたら恵介は少しでも私を想ってくれいてるのかと、少し浮かれそうになってしまった。
世界も時間も恵介も、私を中心に回っているわけじゃない。
別れてから今日まで、私にいろいろなことがあったように、恵介にもきっといろいろなことがあっただろう。
「そういえば恵介、前に言ってたお見合いはどうなったの?相手の人にはもう会った?」
琴音がピザに手を伸ばしながら尋ねた。
お見合い……?
私がチラッと視線を向けると、恵介は黙ったまま下を向いてチキンにかじりついていた。
「会った」
「どうだった?」
「高級フレンチフルコースだった」
「料理のことじゃなくて、相手の人とはどうだったのって聞いてるの」
「仕事とか趣味の話を根掘り葉掘り聞かれた。趣味が同じだから会話は続いた」
恵介の趣味ってなんだろう?
私ってホントに、恵介のことを何も知らない。
別れてから恵介がどうしていたのかも、もちろん知らない。
会話が続いたってことは、いい感じだったのかな。
「幸は?少し前に駅前のレストランとか居酒屋で一緒にいた人とはどうなってるの?」
「えっ……」
それってもしかして秋一のこと?
いつの間に琴音に見られてたんだろう?
「あの人と付き合ってるの?」
「いや……それは……」
付き合ってないし、プロポーズも断ったけど……。
なんでよりによってこんな時に聞くかな。
返事に困っていると、恵介が急に立ち上がった。
「そこのコンビニでタバコ買ってくる」
恵介が玄関を出るのを確かめて、ホッと息をついた。
さっきからずっとぎこちなくて、息苦しい。
恵介はすぐ目の前にいるのに、とても遠く感じる。
やっぱり私の誕生日のお祝いなんて、今更迷惑だよね。
「いいからいいから。ほら、幸も早くおいでよ」
この廊下の先に恵介がいるのだと思うと急激に鼓動が速くなり、緊張して顔が強ばる。
リビングに戻り、おずおずと琴音の隣に座った。
テーブルをはさんで向かいには恵介がいる。
どうしよう……まともに顔見られない……。
「恵介も来たし、ちょうどピザも届いたことだし、早速始めようか」
琴音がテーブルの上にピザの箱を置いて蓋を開いた。
恵介はテーブルの上の料理やケーキを見ながら、少し首をかしげている。
「始めるって……何を?」
「ん?バースデーパーティー。明日、幸の誕生日だから」
琴音は取り皿を配りながら、恵介の顔も見ずに答えた。
恵介は驚いた顔をしてチラッと私の方を見た。
「えっ……誕生日……?」
「うん……明日……」
そう言えば、付き合っている時には誕生日の話はしたことがなかったから、私たちはお互いの誕生日も知らない。
一緒にいる時はたくさん話をしたと思っていたけど、お互い自分のことはあまり話していなかったと気付いた。
「知ってたら何かプレゼント用意したのに……」
恵介がボソッと呟いた。
「幸の誕生日のお祝いって言ったら恵介は来なかったでしょ?」
琴音はそう言って恵介にグラスを差し出し、ビールを注ごうとした。
「今日は車だから、酒はいい」
「そうなんだ。じゃあコーラでいい?」
「うん」
そうか、私がいるって知ってたら、恵介は来なかったんだ。
あんな別れ方をしたんだから、当然と言えば当然か。
本当は私には会いたくなかったのかも。
『知ってたら何かプレゼント用意したのに』なんて、単なる社交辞令みたいなものなのに、もしかしたら恵介は少しでも私を想ってくれいてるのかと、少し浮かれそうになってしまった。
世界も時間も恵介も、私を中心に回っているわけじゃない。
別れてから今日まで、私にいろいろなことがあったように、恵介にもきっといろいろなことがあっただろう。
「そういえば恵介、前に言ってたお見合いはどうなったの?相手の人にはもう会った?」
琴音がピザに手を伸ばしながら尋ねた。
お見合い……?
私がチラッと視線を向けると、恵介は黙ったまま下を向いてチキンにかじりついていた。
「会った」
「どうだった?」
「高級フレンチフルコースだった」
「料理のことじゃなくて、相手の人とはどうだったのって聞いてるの」
「仕事とか趣味の話を根掘り葉掘り聞かれた。趣味が同じだから会話は続いた」
恵介の趣味ってなんだろう?
私ってホントに、恵介のことを何も知らない。
別れてから恵介がどうしていたのかも、もちろん知らない。
会話が続いたってことは、いい感じだったのかな。
「幸は?少し前に駅前のレストランとか居酒屋で一緒にいた人とはどうなってるの?」
「えっ……」
それってもしかして秋一のこと?
いつの間に琴音に見られてたんだろう?
「あの人と付き合ってるの?」
「いや……それは……」
付き合ってないし、プロポーズも断ったけど……。
なんでよりによってこんな時に聞くかな。
返事に困っていると、恵介が急に立ち上がった。
「そこのコンビニでタバコ買ってくる」
恵介が玄関を出るのを確かめて、ホッと息をついた。
さっきからずっとぎこちなくて、息苦しい。
恵介はすぐ目の前にいるのに、とても遠く感じる。
やっぱり私の誕生日のお祝いなんて、今更迷惑だよね。
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