Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
誕生日前夜 (1)
翌日は11時頃に目覚め、軽い食事をして出掛けた。
電車に30分ほど揺られ、癒しを求めて向かった先はスーパー銭湯。
どうせすぐにお風呂に入るので簡単な化粧しかしてこなかったけど、せっかくお祝いしてもらうんだから、琴音の家に向かう前にはきちんと化粧をしよう。
広いお風呂に足を伸ばしてゆっくり浸かり、ミストサウナや薬湯なども堪能した後、凝り固まった体をじっくり時間をかけてマッサージしてもらった。
溜まりに溜まっていた疲れが取れて、体がとても軽い。
休み明けからまた頑張れそうだ。
このままビールでも飲んで横になりたい気分だけど、この後は琴音との約束がある。
更衣室で洋服を着て、パウダールームで丁寧に化粧をして、髪をピンクのシュシュで結んだ。
鏡を見ると、ここに来た時より肌の色つやがいい。
これがデトックス効果というやつか。
ずいぶん長くお風呂に入っていたから、スーパー銭湯を出る頃には時間はもう5時になろうとしていた。
ここにいると時間があっという間だ。
休みの日の過ごし方としては大いに有りだな。
よし、疲れが溜まったらまた来よう。
琴音の家に着いたのは5時半過ぎだった。
リビングのテーブルの上には、ケーキやフライドチキンなどの箱が乗っかっている。
「わざわざ買ってきてくれたの?」
「ホントは作れたら一番いいんだけど、張り切って失敗したくなかったからね」
そうか、慣れない料理を一人で作るのはまだ自信がないんだな。
これも琴音なりの気遣いなんだろう。
「私はなんでも嬉しいよ。そう言えば最近こういうの食べてなかったから、久しぶりで楽しみ」
「ピザも頼んであるんだ。もうすぐ届くと思う。今、飲み物用意するね。何飲む?ビールとチューハイと、ワインもあるよ」
「チューハイもらおうかな」
琴音が冷蔵庫からチューハイを持って戻って来ると、テーブルの上で琴音のスマホが鳴った。
琴音は電話に出て会話をしている。
どうやら夏樹かららしい。
仲良くやってるんだな。
慰安旅行のお土産は何がいいかとか、そんなことを聞かれているようだ。
琴音が電話で話しているのを聞き流していると、玄関のチャイムが鳴った。
琴音は通話口を押さえて小声で私に話し掛ける。
「ピザ屋さんかな。幸、そこに財布あるから出てくれる?」
「うん、いいよ」
琴音の財布を持って玄関のドアを開けた。
その瞬間、心臓がいまだかつてないほど大きな音をたてた。
あまりの驚きに言葉を失う。
「あ……」
「え……?!」
お互いに顔を見合わせて呆然と立ち尽くした。
そこにいたのはピザ屋さんではなく、恵介だった。
ずっと会いたいと思っていたのに、なんの心の準備もしていなかったのでどうしていいかわからず、財布を握りしめてうつむいてしまう。
「あ、ピザ屋さんじゃなくて恵介だったんだ。早かったね」
電話を終えた琴音が私の後ろから声を掛けた。
「ああ……仕事早く終わったから……」
恵介もうろたえているのか、落ち着かない様子だ。
その後ろから、今度こそ本物のピザ屋さんが姿を見せた。
「お待たせしました、グラッチェピザです」
「はーい、ご苦労様です。恵介、そんなところに突っ立ってないで早く上がりなよ」
「ああ、うん」
恵介はぎこちない動作で靴を脱いで部屋に上がった。
「幸、財布ちょうだい」
「あ……はい……」
私は琴音からピザを受け取り財布を渡した。
琴音はピザ屋さんに代金を支払っている。
……何これ?
なんで恵介がここに?
いくら夏樹の友達とは言え、琴音はいつも夏樹の留守中に恵介を呼んだりしてるの?
そこに私を呼ぶって……なんで?!
何がなんだかさっぱりわけがわからない。
「幸、どうしたの?」
「えっ?!いや、だって……。なんで?」
電車に30分ほど揺られ、癒しを求めて向かった先はスーパー銭湯。
どうせすぐにお風呂に入るので簡単な化粧しかしてこなかったけど、せっかくお祝いしてもらうんだから、琴音の家に向かう前にはきちんと化粧をしよう。
広いお風呂に足を伸ばしてゆっくり浸かり、ミストサウナや薬湯なども堪能した後、凝り固まった体をじっくり時間をかけてマッサージしてもらった。
溜まりに溜まっていた疲れが取れて、体がとても軽い。
休み明けからまた頑張れそうだ。
このままビールでも飲んで横になりたい気分だけど、この後は琴音との約束がある。
更衣室で洋服を着て、パウダールームで丁寧に化粧をして、髪をピンクのシュシュで結んだ。
鏡を見ると、ここに来た時より肌の色つやがいい。
これがデトックス効果というやつか。
ずいぶん長くお風呂に入っていたから、スーパー銭湯を出る頃には時間はもう5時になろうとしていた。
ここにいると時間があっという間だ。
休みの日の過ごし方としては大いに有りだな。
よし、疲れが溜まったらまた来よう。
琴音の家に着いたのは5時半過ぎだった。
リビングのテーブルの上には、ケーキやフライドチキンなどの箱が乗っかっている。
「わざわざ買ってきてくれたの?」
「ホントは作れたら一番いいんだけど、張り切って失敗したくなかったからね」
そうか、慣れない料理を一人で作るのはまだ自信がないんだな。
これも琴音なりの気遣いなんだろう。
「私はなんでも嬉しいよ。そう言えば最近こういうの食べてなかったから、久しぶりで楽しみ」
「ピザも頼んであるんだ。もうすぐ届くと思う。今、飲み物用意するね。何飲む?ビールとチューハイと、ワインもあるよ」
「チューハイもらおうかな」
琴音が冷蔵庫からチューハイを持って戻って来ると、テーブルの上で琴音のスマホが鳴った。
琴音は電話に出て会話をしている。
どうやら夏樹かららしい。
仲良くやってるんだな。
慰安旅行のお土産は何がいいかとか、そんなことを聞かれているようだ。
琴音が電話で話しているのを聞き流していると、玄関のチャイムが鳴った。
琴音は通話口を押さえて小声で私に話し掛ける。
「ピザ屋さんかな。幸、そこに財布あるから出てくれる?」
「うん、いいよ」
琴音の財布を持って玄関のドアを開けた。
その瞬間、心臓がいまだかつてないほど大きな音をたてた。
あまりの驚きに言葉を失う。
「あ……」
「え……?!」
お互いに顔を見合わせて呆然と立ち尽くした。
そこにいたのはピザ屋さんではなく、恵介だった。
ずっと会いたいと思っていたのに、なんの心の準備もしていなかったのでどうしていいかわからず、財布を握りしめてうつむいてしまう。
「あ、ピザ屋さんじゃなくて恵介だったんだ。早かったね」
電話を終えた琴音が私の後ろから声を掛けた。
「ああ……仕事早く終わったから……」
恵介もうろたえているのか、落ち着かない様子だ。
その後ろから、今度こそ本物のピザ屋さんが姿を見せた。
「お待たせしました、グラッチェピザです」
「はーい、ご苦労様です。恵介、そんなところに突っ立ってないで早く上がりなよ」
「ああ、うん」
恵介はぎこちない動作で靴を脱いで部屋に上がった。
「幸、財布ちょうだい」
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琴音はピザ屋さんに代金を支払っている。
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