Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
忘れられない (2)
「あの……ちょっと落ち着いてよく考えよう。結婚って一生を左右することだよ?」
「一生を左右することだから、俺は幸がいいんだ。幸は俺とじゃイヤか?」
「だからそれは……」
ダメだ、話にならない。
いくらなんでも、この場で即決はできない。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、秋一にそんなこと言われるとは思ってなかったし……せめて私にも考える時間をください」
「考える時間があると、大方は悪い方の返事される。だからその場で決めさせる。営業の鉄則だ」
秋一は営業マンなのか?
いや、確か商品管理部にいるとか言ってなかったっけ?
「それとこれとは別でしょ?」
「別かな?同じだと思うけど」
恋愛から遠ざかり過ぎてちょっとずれてる?!
どちらにしてもこの場で何かしら返事をしないと、この話は終わりそうもない。
「だったらこの話はお断りします」
「えぇっ……」
秋一はすがるような目で私を見た。
「そんな大事なこと、勢いだけでOKできないもん。私にとっても結婚は人生の一大事だからね。現実的にちゃんと考えたい」
「そうか……。じゃあ、これを機に俺との結婚を真剣に考えて。返事はそれからでいい……けど、できるだけ早くお願いします」
ずいぶんせっかちだな。
「ご期待に添えるかどうかはわからないよ」
「いい返事を待ってます」
これも営業トーク?
見かけによらず押しが強い。
かなり強気のクロージングだ。
私にもこれくらい自信があれば、後悔ばかりしなくて済んだのかも知れない。
居酒屋を出てから駅までの道のりで、秋一は私の手をそっと握った。
私が驚いて手を引っ込めようとすると、秋一はその手をギュッと強く握り直した。
「急にあんなこと言って信じてないかも知れないけど……俺は本気だよ。本気で幸が好きだ」
「……うん、ありがとう」
秋一のことを恋愛とか結婚の対象と思ったことがなかったから、改めて言われると今頃になって戸惑ってしまう。
でも秋一が真剣に私を想ってくれているなら、私も真剣に考えないと申し訳ない。
「ここ最近いろいろあったからね……まだ気持ちの整理がつかないんだ。だから答を出すのに少し時間がかかるかも知れないけど、ちゃんと真剣に考えてみる」
秋一はふぅっと大きく息をついた。
「わかった、いい返事待ってる。また誘ってもいいか?」
「うん」
「じゃあ、また連絡する」
駅の改札口を通り過ぎたところで秋一と別れた。
電車に乗って、窓の外を流れる夜の景色を見ながら考える。
いきなり結婚してと言われるとは思わなかった。
それに面と向かって好きだと云われたのは、生まれて初めてだった。
私を好きだと言ってくれる人なんて、今後また現れるかどうかわからない。
もうすぐ29歳、結婚とか将来のことも気になる。
あの時結婚していたら良かったと後悔しながら、独りで朽ちて行く自分を想像するのは、正直怖い。
このまま年老いても今と同じように『私は一人でも大丈夫』と言えるだろうか?
翌日。
仕事の合間に事務所でコーヒーを飲んでいると、琴音がコーヒーを注いだカップを持って隣に座った。
「幸、昨日はありがとう」
「どういたしまして。夏樹はなんて言ってた?」
「美味しいって初めて言われたよ」
「良かったじゃない。料理なんて慣れだよ。毎日続けてたらすぐに上手になるからね」
何度も作っているうちに琴音と夏樹の好みの味に変わって、琴音たちの家庭の味になっていくんだろうな。
「また休みの日に料理教えてくれる?」
「私が作れるもので良ければね」
そういえば、琴音が作った肉じゃがを晩御飯にすると言っていたけど、私が作った肉じゃがはどうしたんだろう?
「一生を左右することだから、俺は幸がいいんだ。幸は俺とじゃイヤか?」
「だからそれは……」
ダメだ、話にならない。
いくらなんでも、この場で即決はできない。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、秋一にそんなこと言われるとは思ってなかったし……せめて私にも考える時間をください」
「考える時間があると、大方は悪い方の返事される。だからその場で決めさせる。営業の鉄則だ」
秋一は営業マンなのか?
いや、確か商品管理部にいるとか言ってなかったっけ?
「それとこれとは別でしょ?」
「別かな?同じだと思うけど」
恋愛から遠ざかり過ぎてちょっとずれてる?!
どちらにしてもこの場で何かしら返事をしないと、この話は終わりそうもない。
「だったらこの話はお断りします」
「えぇっ……」
秋一はすがるような目で私を見た。
「そんな大事なこと、勢いだけでOKできないもん。私にとっても結婚は人生の一大事だからね。現実的にちゃんと考えたい」
「そうか……。じゃあ、これを機に俺との結婚を真剣に考えて。返事はそれからでいい……けど、できるだけ早くお願いします」
ずいぶんせっかちだな。
「ご期待に添えるかどうかはわからないよ」
「いい返事を待ってます」
これも営業トーク?
見かけによらず押しが強い。
かなり強気のクロージングだ。
私にもこれくらい自信があれば、後悔ばかりしなくて済んだのかも知れない。
居酒屋を出てから駅までの道のりで、秋一は私の手をそっと握った。
私が驚いて手を引っ込めようとすると、秋一はその手をギュッと強く握り直した。
「急にあんなこと言って信じてないかも知れないけど……俺は本気だよ。本気で幸が好きだ」
「……うん、ありがとう」
秋一のことを恋愛とか結婚の対象と思ったことがなかったから、改めて言われると今頃になって戸惑ってしまう。
でも秋一が真剣に私を想ってくれているなら、私も真剣に考えないと申し訳ない。
「ここ最近いろいろあったからね……まだ気持ちの整理がつかないんだ。だから答を出すのに少し時間がかかるかも知れないけど、ちゃんと真剣に考えてみる」
秋一はふぅっと大きく息をついた。
「わかった、いい返事待ってる。また誘ってもいいか?」
「うん」
「じゃあ、また連絡する」
駅の改札口を通り過ぎたところで秋一と別れた。
電車に乗って、窓の外を流れる夜の景色を見ながら考える。
いきなり結婚してと言われるとは思わなかった。
それに面と向かって好きだと云われたのは、生まれて初めてだった。
私を好きだと言ってくれる人なんて、今後また現れるかどうかわからない。
もうすぐ29歳、結婚とか将来のことも気になる。
あの時結婚していたら良かったと後悔しながら、独りで朽ちて行く自分を想像するのは、正直怖い。
このまま年老いても今と同じように『私は一人でも大丈夫』と言えるだろうか?
翌日。
仕事の合間に事務所でコーヒーを飲んでいると、琴音がコーヒーを注いだカップを持って隣に座った。
「幸、昨日はありがとう」
「どういたしまして。夏樹はなんて言ってた?」
「美味しいって初めて言われたよ」
「良かったじゃない。料理なんて慣れだよ。毎日続けてたらすぐに上手になるからね」
何度も作っているうちに琴音と夏樹の好みの味に変わって、琴音たちの家庭の味になっていくんだろうな。
「また休みの日に料理教えてくれる?」
「私が作れるもので良ければね」
そういえば、琴音が作った肉じゃがを晩御飯にすると言っていたけど、私が作った肉じゃがはどうしたんだろう?
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