Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
心残りと彼女の告白 (5)
「恵介はずっと、私と夏樹が付き合うのも、もちろん結婚するのも反対だったからさ。あいつは女癖悪いからやめとけって。だから強行突破した。恵介の出張中だったのは偶然だけどね」
恵介が結婚に反対してた?
早く誰かが琴音を引き受けてくれたら……みたいなこと、言ってなかったっけ?
なんかすごい違和感。
それに単なる友人にそんな発言権とか影響力があるっておかしくない?
「あの時、何も知らなかったのは私だけってこと?」
「うん。夏樹が来たのは計算外だった」
最初から恵介を呼ぶつもりだったと琴音はさっきも言っていたけど、恵介を私に紹介するつもりだったのかな?
恵介はモテるから、付き合う女の人にはきっと困ってないのに、よりによってどうして私なんだろう?
「あの時は夏樹のせいで、恵介のことちゃんと紹介できなかったね」
「紹介って……どうして私に恵介さんを紹介しようと思ったの?」
私が尋ねると、琴音は壁時計を見上げた。
時計の針は5時を指そうとしている。
「わ、もうこんな時間だ。もうすぐ夏樹が帰ってくる!」
「えっ、そんなに帰り早いの?!」
「うん、今日は朝が早かったから帰りも早いの。寄り道せずに帰って来いって言ってある」
どうやら琴音は『かかぁ天下』と言うやつらしい。
でも夏樹にはそれくらいがちょうどいいのかも。
「話の続き、どうする?」
夏樹と会っても今更なんとも思わないけど、会わなくて済むならお互いにその方がいいはず。
琴音だってそれは同じだろう。
「私もこの後約束があるし、また今度でいい」
「そう?じゃあ話の続きは……そうだ、こんな話会社でするのもなんだし、またゆっくり遊びに来てよ」
「うん、そうする」
恵介のことはすごく気になるけど、そろそろお暇することにした。
「駅までの道、わかる?車で送ろうか?」
「大丈夫、わかると思う。車、買ったの?」
夏樹は車なんか持っていなかったはずだ。
結婚を機に買ったのかな?
「結婚前にね。ショールームで可愛い軽に一目惚れして、現金一括払いで買ったの、私が」
車を衝動買いするなんて、やっぱり浪費家?
いや、現金で一括払いができたんだから、それなりの貯蓄はしているのかも?
琴音もいろいろ不思議なところがある。
私の知らない一面がまだまだありそうだ。
琴音の家を出て駅までの道のりを歩きながら、琴音の話を振り返った。
要約すると、恵介と夏樹は学生時代からの友達で、琴音と夏樹は恵介を介して知り合ったと言うこと。
そして琴音は確かに恵介にずいぶん世話になっていたようだけど、付き合ってはいなかったと言うこと。
恵介が琴音と夏樹の結婚に反対していたこと。
結局、琴音と恵介の関係って……なんだ?
琴音が私と恵介を会わせたかったのはどうしてだろう?
モヤモヤしながら電車に乗って、秋一との待ち合わせ場所へ向かった。
電車を降りた時、誰かが私の肩を叩いた。
振り返るとそれは秋一で、同じ電車に乗っていたらしい。
一緒にホームを歩いて改札口に向かっていると、『3番線に電車が入ります』とアナウンスが流れ、なんとなく反対側のホームを見た。
その瞬間、私は息を止めて目を見開き立ち止まる。
反対側のホームには、2か月ぶりに見る恵介の姿があった。
恵介は隣にいる綺麗な女性と会話をしている。
立ち尽くす私の方に恵介が視線を向けた。
恵介と確かに目が合った。
「恵介……」
とても恵介には届かない、小さな掠れた声で名前を呼んだ。
恵介の口元が小さく動く。
「幸、急にそんなところで立ち止まったら危ないって」
隣にいたはずの私がそばにいないことに気付いた秋一が後ろを振り返り、急いで駆け寄ってきて私の腕を掴んだ。
秋一に腕を掴まれて我に返った瞬間、ホームに電車が滑り込んだ。
「どうした?知り合いでもいた?」
「……ううん、人違いだった」
「そっか。じゃあ行こう」
「うん」
客を乗せた電車が発車してホームを後にすると、当然恵介の姿もそこにはなかった。
恵介……綺麗な人と一緒だったな。
もしそれが彼女だったとしても、私には何も言う権利はない。
目が合ったあの時、恵介が何を呟いたのかはわからないけれど、この先それを確かめることはないだろう。
恵介が結婚に反対してた?
早く誰かが琴音を引き受けてくれたら……みたいなこと、言ってなかったっけ?
なんかすごい違和感。
それに単なる友人にそんな発言権とか影響力があるっておかしくない?
「あの時、何も知らなかったのは私だけってこと?」
「うん。夏樹が来たのは計算外だった」
最初から恵介を呼ぶつもりだったと琴音はさっきも言っていたけど、恵介を私に紹介するつもりだったのかな?
恵介はモテるから、付き合う女の人にはきっと困ってないのに、よりによってどうして私なんだろう?
「あの時は夏樹のせいで、恵介のことちゃんと紹介できなかったね」
「紹介って……どうして私に恵介さんを紹介しようと思ったの?」
私が尋ねると、琴音は壁時計を見上げた。
時計の針は5時を指そうとしている。
「わ、もうこんな時間だ。もうすぐ夏樹が帰ってくる!」
「えっ、そんなに帰り早いの?!」
「うん、今日は朝が早かったから帰りも早いの。寄り道せずに帰って来いって言ってある」
どうやら琴音は『かかぁ天下』と言うやつらしい。
でも夏樹にはそれくらいがちょうどいいのかも。
「話の続き、どうする?」
夏樹と会っても今更なんとも思わないけど、会わなくて済むならお互いにその方がいいはず。
琴音だってそれは同じだろう。
「私もこの後約束があるし、また今度でいい」
「そう?じゃあ話の続きは……そうだ、こんな話会社でするのもなんだし、またゆっくり遊びに来てよ」
「うん、そうする」
恵介のことはすごく気になるけど、そろそろお暇することにした。
「駅までの道、わかる?車で送ろうか?」
「大丈夫、わかると思う。車、買ったの?」
夏樹は車なんか持っていなかったはずだ。
結婚を機に買ったのかな?
「結婚前にね。ショールームで可愛い軽に一目惚れして、現金一括払いで買ったの、私が」
車を衝動買いするなんて、やっぱり浪費家?
いや、現金で一括払いができたんだから、それなりの貯蓄はしているのかも?
琴音もいろいろ不思議なところがある。
私の知らない一面がまだまだありそうだ。
琴音の家を出て駅までの道のりを歩きながら、琴音の話を振り返った。
要約すると、恵介と夏樹は学生時代からの友達で、琴音と夏樹は恵介を介して知り合ったと言うこと。
そして琴音は確かに恵介にずいぶん世話になっていたようだけど、付き合ってはいなかったと言うこと。
恵介が琴音と夏樹の結婚に反対していたこと。
結局、琴音と恵介の関係って……なんだ?
琴音が私と恵介を会わせたかったのはどうしてだろう?
モヤモヤしながら電車に乗って、秋一との待ち合わせ場所へ向かった。
電車を降りた時、誰かが私の肩を叩いた。
振り返るとそれは秋一で、同じ電車に乗っていたらしい。
一緒にホームを歩いて改札口に向かっていると、『3番線に電車が入ります』とアナウンスが流れ、なんとなく反対側のホームを見た。
その瞬間、私は息を止めて目を見開き立ち止まる。
反対側のホームには、2か月ぶりに見る恵介の姿があった。
恵介は隣にいる綺麗な女性と会話をしている。
立ち尽くす私の方に恵介が視線を向けた。
恵介と確かに目が合った。
「恵介……」
とても恵介には届かない、小さな掠れた声で名前を呼んだ。
恵介の口元が小さく動く。
「幸、急にそんなところで立ち止まったら危ないって」
隣にいたはずの私がそばにいないことに気付いた秋一が後ろを振り返り、急いで駆け寄ってきて私の腕を掴んだ。
秋一に腕を掴まれて我に返った瞬間、ホームに電車が滑り込んだ。
「どうした?知り合いでもいた?」
「……ううん、人違いだった」
「そっか。じゃあ行こう」
「うん」
客を乗せた電車が発車してホームを後にすると、当然恵介の姿もそこにはなかった。
恵介……綺麗な人と一緒だったな。
もしそれが彼女だったとしても、私には何も言う権利はない。
目が合ったあの時、恵介が何を呟いたのかはわからないけれど、この先それを確かめることはないだろう。
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
-
0
-
-
147
-
-
440
-
-
755
-
-
11128
-
-
24251
-
-
111
-
-
34
-
-
26950
コメント