Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
心残りと彼女の告白 (2)
「そうだ。幸、お願いがあるんだけど」
「うん、何?」
「明日、うちに来てくれる?料理教えて欲しいの」
琴音は何もできないし、しようともしないと恵介は言っていたけど、結婚して主婦としての自覚が芽生えたのか、琴音なりに頑張っているらしい。
同じ歳の同期なのになんとなく、少しずつ成長していく妹を見ているような気分だ。
昼間なら夏樹に会うこともなさそうだし、せっかく琴音がやる気になってるんだから、微力ながら協力するとしよう。
「簡単なものなら教えられるけど……何作りたいの?」
「肉じゃがと唐揚げ」
夏樹が食べたいって言ったのかな?
確か夏樹は、肉じゃがはあまり好きではなかったはずだけど。
「それくらいの料理なら、本とかネットで調べたら自分でできそうだけど」
「やってみたけどダメだったから幸に頼んでるの!ね、お願い!!」
「まぁ、いいけど。何時頃に行けばいい?」
「幸、うち来るの初めてだよね。じゃあ、駅まで迎えに行くよ。それから一緒にスーパーに買い物に行こう」
11時に琴音の家の最寄り駅で待ち合わせをして、駅前で別れた。
電車の中で窓の外を眺めながら、恵介とスーパーに買い物に行った日のことを思い出した。
恵介と手を繋いで買い物したな……。
あの時のメニューは、エビフライと唐揚げとサラダと、味噌汁と御飯。
美味しそうに食べてくれたっけ。
一緒にスーパーで買い物したのも、恵介の部屋で料理をしたのも、あれが最初で最後だった。
好きだから一緒にいたいのに、傷付くのが怖くて、自ら恵介の手をはね除けた。
バカだな、私は。
恵介と一緒にいられたら、それだけで良かったのに。
好きになるとどんどん欲張りになって、恵介のすべてを独占したくて。
今更もうどうしようもないけど、フラれたとしてもせめて自分の気持ちを素直に伝えれば良かった。
大嫌いとか、もう無理なんて言うんじゃなかった。
恵介が好きだから一緒にいたいけど、もう一緒にはいられないって、ちゃんと言えば良かったのに。
それだけが心残りだ。
こぼれ落ちそうになる涙を、慌ててハンカチで押さえた。
どんなに泣いても、あの優しい手はもう、私を抱きしめてはくれない。
そんなことはわかっているのに、どうしようもなく恵介が恋しい。
翌朝、久しぶりに泣き腫らしたまぶたを冷やして、出掛ける支度をした。
仕事が少し落ち着いて、緊張の糸が切れたのかな。
夕べは恵介のことばかり考えて、涙が止まらなかった。
ようやく眠りについたのは明け方。
あまり眠れなかったけど、琴音と約束をしたので少し無理をして起き上がった。
まぶたを冷やしながらコーヒーを飲んでいると、スマホがメールの受信を知らせた。
琴音かなと思ったけど予想は外れて、メールは秋一からだった。
【今夜会える?食事でもどうかな】
同級生のみんなと飲み会をしてから、秋一はたびたび食事に誘ってくれる。
仕事が忙しくて断ったこともあるけど、私の仕事が休みの日の夜に何度か会って食事をした。
二人で会っても、会話の中身は仕事のこととか他愛もない世間話ばかり。
秋一は私が今も夏樹のことで落ち込んでいると思っているようで、きっと心配して寂しくないように誘ってくれるんだと思う。
今日は仕事は休みだ。
琴音との約束は昼間だし、夜なら時間もある。
最近は忙しくて続けて断っていたので、秋一の仕事が終わる時間に合わせて会う約束をした。
秋一なら食事に誘う可愛い子がいくらでも周りにいそうなのに、頻繁に私を誘ってくれるということは、やっぱりまだ夏樹とのことから私が立ち直ってないと思っているんだろう。
「うん、何?」
「明日、うちに来てくれる?料理教えて欲しいの」
琴音は何もできないし、しようともしないと恵介は言っていたけど、結婚して主婦としての自覚が芽生えたのか、琴音なりに頑張っているらしい。
同じ歳の同期なのになんとなく、少しずつ成長していく妹を見ているような気分だ。
昼間なら夏樹に会うこともなさそうだし、せっかく琴音がやる気になってるんだから、微力ながら協力するとしよう。
「簡単なものなら教えられるけど……何作りたいの?」
「肉じゃがと唐揚げ」
夏樹が食べたいって言ったのかな?
確か夏樹は、肉じゃがはあまり好きではなかったはずだけど。
「それくらいの料理なら、本とかネットで調べたら自分でできそうだけど」
「やってみたけどダメだったから幸に頼んでるの!ね、お願い!!」
「まぁ、いいけど。何時頃に行けばいい?」
「幸、うち来るの初めてだよね。じゃあ、駅まで迎えに行くよ。それから一緒にスーパーに買い物に行こう」
11時に琴音の家の最寄り駅で待ち合わせをして、駅前で別れた。
電車の中で窓の外を眺めながら、恵介とスーパーに買い物に行った日のことを思い出した。
恵介と手を繋いで買い物したな……。
あの時のメニューは、エビフライと唐揚げとサラダと、味噌汁と御飯。
美味しそうに食べてくれたっけ。
一緒にスーパーで買い物したのも、恵介の部屋で料理をしたのも、あれが最初で最後だった。
好きだから一緒にいたいのに、傷付くのが怖くて、自ら恵介の手をはね除けた。
バカだな、私は。
恵介と一緒にいられたら、それだけで良かったのに。
好きになるとどんどん欲張りになって、恵介のすべてを独占したくて。
今更もうどうしようもないけど、フラれたとしてもせめて自分の気持ちを素直に伝えれば良かった。
大嫌いとか、もう無理なんて言うんじゃなかった。
恵介が好きだから一緒にいたいけど、もう一緒にはいられないって、ちゃんと言えば良かったのに。
それだけが心残りだ。
こぼれ落ちそうになる涙を、慌ててハンカチで押さえた。
どんなに泣いても、あの優しい手はもう、私を抱きしめてはくれない。
そんなことはわかっているのに、どうしようもなく恵介が恋しい。
翌朝、久しぶりに泣き腫らしたまぶたを冷やして、出掛ける支度をした。
仕事が少し落ち着いて、緊張の糸が切れたのかな。
夕べは恵介のことばかり考えて、涙が止まらなかった。
ようやく眠りについたのは明け方。
あまり眠れなかったけど、琴音と約束をしたので少し無理をして起き上がった。
まぶたを冷やしながらコーヒーを飲んでいると、スマホがメールの受信を知らせた。
琴音かなと思ったけど予想は外れて、メールは秋一からだった。
【今夜会える?食事でもどうかな】
同級生のみんなと飲み会をしてから、秋一はたびたび食事に誘ってくれる。
仕事が忙しくて断ったこともあるけど、私の仕事が休みの日の夜に何度か会って食事をした。
二人で会っても、会話の中身は仕事のこととか他愛もない世間話ばかり。
秋一は私が今も夏樹のことで落ち込んでいると思っているようで、きっと心配して寂しくないように誘ってくれるんだと思う。
今日は仕事は休みだ。
琴音との約束は昼間だし、夜なら時間もある。
最近は忙しくて続けて断っていたので、秋一の仕事が終わる時間に合わせて会う約束をした。
秋一なら食事に誘う可愛い子がいくらでも周りにいそうなのに、頻繁に私を誘ってくれるということは、やっぱりまだ夏樹とのことから私が立ち直ってないと思っているんだろう。
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