Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
心残りと彼女の告白 (1)
恵介と別れてからすぐにブライダルフェアが始まり、その後ブライダルシーズンに突入した。
泣いている余裕もないほど毎日が忙しく、遅くまで残業して部屋に帰ると、機械的に食事と入浴を済ませて眠りについた。
休みの日は昼過ぎまで眠り、目が覚めると必要以上に部屋の掃除をしたり、やたら難しい料理を作ってみたり、書店で大量に買い込んだ小説を読みふけったりした。
とにかく余計なことを考えないように必死だったと思う。
それでも時々、ふとした瞬間に恵介の言葉や優しい笑顔を思い出して涙が溢れた。
いい加減、一人でいることに慣れなくちゃ。
私は一人でも大丈夫って、恵介に言ったんだから。
何度も何度も、自分にそう言い聞かせながら涙を拭った。
そんな毎日を送っているうちに、気が付けば恵介と別れてからもう2か月が過ぎている。
今頃恵介はどうしているだろう?
私と過ごしたほんのわずかな時間のことなんか、忘れちゃったかな。
もしかしたら理想通りの素敵な彼女がいたりして。
恵介はきっと今日も綺麗な人たちに囲まれながら、何食わぬ顔でバリバリ働いているに違いない。
結局私は、恵介と今も会っているのか琴音に聞かなかった。
それを知ってもどうにもならないし、余計な揉め事に首を突っ込みたくはない。
琴音は家事にも少しずつ慣れてきて、夏樹ともうまくやっているようだ。
一日中、挙式予約がいっぱいに詰まっていた日曜日の夜。
ようやく仕事を終えて更衣室に向かうと、一足先に事務所を出た琴音が着替えていた。
「幸、お疲れ様」
「お疲れ様。今週も忙しかったね」
「ねーっ、1週間長かった!」
着替えを終えた琴音はバッグから化粧ポーチを取り出した。
琴音は覗き込んだ鏡越しに私を見て話し掛ける。
「明日は休館日だね。幸は何か予定ある?」
「ないない、そんなもの。強いて言えば、ゆっくり体を休めることくらい」
制服を脱いでハンガーに掛けていると、琴音が振り返って私の体をじっと見た。
モデル並みのスタイルを誇る琴音と違って、私はスタイルに自信がない。
キャミソールを着ているとは言え、いくら女同士でもこんな姿をじっくり眺められると恥ずかしい。
「何……?どうしたの?」
「いや……幸、かなり痩せた?」
「体重とか計ってないけど、言われてみればそうかも」
ここ最近食欲もなかったし、忙しさにかまけてまともな食事をしていない。
恵介と一緒に夕飯を食べていた時はいつもきちんと食事の支度をしていたけど、恵介と別れてからは、せいぜいコンビニ弁当とかおにぎりとか、ひどい時は食べるのも面倒で食事を抜いたりしていた。
「ダイエットとかじゃないよね?」
「うーん……最近食事をおろそかにしてたから。疲れてると面倒だし食欲なくて、つい」
「体に良くないよぉ。疲れてる時こそちゃんと食べないと、体もたないからね?」
「うん……まぁ、そうだね。気を付ける」
スカートのホックを留めながら、なんとなく琴音の手元を見た。
琴音は私が恵介に買ってもらった物と色違いの口紅を手にしている。
「その口紅……」
「ん?ああ、これね。綺麗な色でしょ?」
「うん……すごく綺麗」
きっと恵介に買ってもらったんだな。
恵介に買ってもらった化粧品も髪飾りも、あの日からずっとクローゼットの中で眠ったままだ。
大事に使うと恵介に言ったのに、手に取ると泣いてしまいそうで、目に触れないように紙袋にしまって、クローゼットに封印した。
これがホントの宝の持ち腐れだな。
そう思いながらロッカーを閉めた。
泣いている余裕もないほど毎日が忙しく、遅くまで残業して部屋に帰ると、機械的に食事と入浴を済ませて眠りについた。
休みの日は昼過ぎまで眠り、目が覚めると必要以上に部屋の掃除をしたり、やたら難しい料理を作ってみたり、書店で大量に買い込んだ小説を読みふけったりした。
とにかく余計なことを考えないように必死だったと思う。
それでも時々、ふとした瞬間に恵介の言葉や優しい笑顔を思い出して涙が溢れた。
いい加減、一人でいることに慣れなくちゃ。
私は一人でも大丈夫って、恵介に言ったんだから。
何度も何度も、自分にそう言い聞かせながら涙を拭った。
そんな毎日を送っているうちに、気が付けば恵介と別れてからもう2か月が過ぎている。
今頃恵介はどうしているだろう?
私と過ごしたほんのわずかな時間のことなんか、忘れちゃったかな。
もしかしたら理想通りの素敵な彼女がいたりして。
恵介はきっと今日も綺麗な人たちに囲まれながら、何食わぬ顔でバリバリ働いているに違いない。
結局私は、恵介と今も会っているのか琴音に聞かなかった。
それを知ってもどうにもならないし、余計な揉め事に首を突っ込みたくはない。
琴音は家事にも少しずつ慣れてきて、夏樹ともうまくやっているようだ。
一日中、挙式予約がいっぱいに詰まっていた日曜日の夜。
ようやく仕事を終えて更衣室に向かうと、一足先に事務所を出た琴音が着替えていた。
「幸、お疲れ様」
「お疲れ様。今週も忙しかったね」
「ねーっ、1週間長かった!」
着替えを終えた琴音はバッグから化粧ポーチを取り出した。
琴音は覗き込んだ鏡越しに私を見て話し掛ける。
「明日は休館日だね。幸は何か予定ある?」
「ないない、そんなもの。強いて言えば、ゆっくり体を休めることくらい」
制服を脱いでハンガーに掛けていると、琴音が振り返って私の体をじっと見た。
モデル並みのスタイルを誇る琴音と違って、私はスタイルに自信がない。
キャミソールを着ているとは言え、いくら女同士でもこんな姿をじっくり眺められると恥ずかしい。
「何……?どうしたの?」
「いや……幸、かなり痩せた?」
「体重とか計ってないけど、言われてみればそうかも」
ここ最近食欲もなかったし、忙しさにかまけてまともな食事をしていない。
恵介と一緒に夕飯を食べていた時はいつもきちんと食事の支度をしていたけど、恵介と別れてからは、せいぜいコンビニ弁当とかおにぎりとか、ひどい時は食べるのも面倒で食事を抜いたりしていた。
「ダイエットとかじゃないよね?」
「うーん……最近食事をおろそかにしてたから。疲れてると面倒だし食欲なくて、つい」
「体に良くないよぉ。疲れてる時こそちゃんと食べないと、体もたないからね?」
「うん……まぁ、そうだね。気を付ける」
スカートのホックを留めながら、なんとなく琴音の手元を見た。
琴音は私が恵介に買ってもらった物と色違いの口紅を手にしている。
「その口紅……」
「ん?ああ、これね。綺麗な色でしょ?」
「うん……すごく綺麗」
きっと恵介に買ってもらったんだな。
恵介に買ってもらった化粧品も髪飾りも、あの日からずっとクローゼットの中で眠ったままだ。
大事に使うと恵介に言ったのに、手に取ると泣いてしまいそうで、目に触れないように紙袋にしまって、クローゼットに封印した。
これがホントの宝の持ち腐れだな。
そう思いながらロッカーを閉めた。
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