Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
地味女、モテ男とデートする (4)
私は通路の反対側にあるベンチに座って、通り過ぎる人越しに恵介を眺めた。
恵介はポケットから手帳を出して何かを調べ、真剣な顔をして話している。 
こうやって改めて見ると、恵介は結構目立つ。
眼鏡が知的に見えて割と男前だし、全体的にバランスが取れたスタイルで手足が長くてスーツが似合うし、背も高い方だと思う。
今更だけど、こんな見映えのする人と手を繋いで歩くのは気後れする。
やっぱり少しくらいはおしゃれしてくれば良かったな。
電話を終えた恵介が携帯電話をポケットにしまってこちらに歩いてくる途中で、女の人が恵介に手を振りながら近付いてきた。 
また知り合いかな?
こちらも綺麗な人だ。
会話は聞き取れないけれど、彼女は恵介の手を握って色っぽい視線を送っている。
ふーん……。
どういった関係なのかは知らないけれど、普段はやっぱり、こういう綺麗な人とのお付き合いがあるわけね。
さっきも同じ会社の女子たちが噂していたし、やっぱりそれなりにモテるんだな。
周りには好意を寄せてくれる綺麗な人がたくさんいるのに、恵介が今私と一緒にいるのは、私への同情とか琴音へのちょっとした当て付けとか、せいぜいそんなものだろう。
美人には程遠い上に、真面目なことくらいしか取り柄のない地味な私が恵介の彼女だなんておこがましい。
それらしく振る舞ってはいるけれど、恵介は私が好きだから付き合っているんじゃない。 
いくら恵介の隣が心地よくても、それだけは忘れないようにしないと。 
美人からのお誘いをお断りさせるのも申し訳ないし、目的の髪飾りは買ってもらったから、このままもう帰ろうかな。 
ベンチから立ち上がると、恵介と目が合った。
帰るね、と声には出さず口の動きだけで伝え、小さく手を振って歩き出した。
恵介だって地味な私なんかより、色気のある美人と一緒にいた方が楽しいに決まってる。 
駅に向かって人混みの中を歩いていると、後ろから腕を掴まれた。
「幸、ちょっと待て!」
振り返ると恵介が険しい顔をして息を切らしていた。
「恵介……なんで?」
「なんで?って聞きたいのはこっちだろ!待っててって言ったのに、なんで勝手に帰ろうとしてんだよ!」
「さっきの人といい感じだったし、お誘いがあったみたいだから、邪魔しちゃ悪いかなって」
「はぁ?!」
「綺麗な人だったし」
恵介は呆れた顔をして大きくため息をついた。
「何だそれ……。一緒に飯食いに行こうって、さっき約束したじゃん」
「そうだけど……私なんかと御飯食べるより、色っぽい美人と夜景の綺麗なホテルのディナーとか行った方が楽しいでしょ」
「行くか、そんなもん!バカじゃねぇの?!それより俺は、幸と美味しい御飯食べに行きたいの!」
そんなに美味しい御飯が食べたかったのか、恵介は。
それとも今日は和食の気分だったのかな?
「和食の方が好きだから?」
「あーもう……!じゃあそれでいいよ、とにかく行くぞ!」
恵介が私の手を引いて歩き出した。
「あの……手、離してくれる?」
「イヤだ、離したらまたどっか行くつもりだろ。絶対離さん!」
なんだかんだ言って、恵介は優しい。
なんのためらいもなく手を繋いでくれるから、恵介は綺麗な人より私と一緒にいたかったんだなんて、ほんの少し自惚れてしまいそうになった。
御飯が美味しい店だと言うから、てっきり落ち着いた雰囲気の和食専門店だと思っていたのに、恵介が連れていってくれたお店は、活気のみなぎる和食居酒屋だった。
意外だなと思いながら料理を口にすると、驚くほど美味しかった。
「幸、明日の朝は出勤早い?」
「ううん。10時に出勤して、閉館まで仕事」
恵介は少し笑ってドリンクメニューを手に取った。
「じゃあ、お酒頼もうか。ここ、うまい酒置いてるよ。日本酒は大丈夫?」
「うん。たまにしか飲まないけど、日本酒って美味しいよね」
「よし、今夜は酔わせちゃおう」
酔わせちゃおう、って……何?
また酔った勢いで私をどうにかしようって?
ダメだ、日本酒の酔いをセーブできる自信がない。
「やっぱりやめとく……。冷たい緑茶ください」
「えっ、飲まないの?」
「飲まないの。酔うと自分がどうなるかわからないから」
「そんなに酔うほど飲まなくても……。じゃあ一杯だけ、一緒に飲もう?」
一杯だけなら大丈夫かな……?
「ホントに一杯だけだよ?」
「うん、一杯だけ」
恵介は店員を呼んで、メニューを見ながら珍しい地酒を注文した。
きっとお酒が大好きなんだな。
初めて二人で飲んだ時に、かなりの酒豪だと思った記憶がある。
二人で一緒にお酒を飲むのはあの時以来だ。
今日はあの時みたいにベロベロになるまで飲まないと固く心に誓って、運ばれてきた日本酒に口をつけた。
……はずだったのに。
久しぶりに飲んだ日本酒の美味しさに負けて、ついついおかわりを頼んでしまった。
これ何杯目だっけ?
よく覚えてないけど、ふわふわして楽しくて、かなりいい気分だ。
「一杯だけって言ったのは誰だっけ?そんなに飲んで大丈夫か?」
「大丈夫だよー。酔っ払うほどは飲んでないもん」
「でも日本酒だから一気に来るぞ。そろそろお茶でも頼もうか」
恵介は私の手からお酒のグラスを取り上げた。
「やだぁ、返して。まだ飲むの」
恵介からグラスを奪い返してお酒を勢いよく飲んだ。
「あっ、コラ!水じゃないんだから!!」
恵介は慌てて止めようとしたけれど、私は言うことを聞かず残っていたお酒を一気に飲み干した。
「うふふー、美味しーい」
恵介はポケットから手帳を出して何かを調べ、真剣な顔をして話している。 
こうやって改めて見ると、恵介は結構目立つ。
眼鏡が知的に見えて割と男前だし、全体的にバランスが取れたスタイルで手足が長くてスーツが似合うし、背も高い方だと思う。
今更だけど、こんな見映えのする人と手を繋いで歩くのは気後れする。
やっぱり少しくらいはおしゃれしてくれば良かったな。
電話を終えた恵介が携帯電話をポケットにしまってこちらに歩いてくる途中で、女の人が恵介に手を振りながら近付いてきた。 
また知り合いかな?
こちらも綺麗な人だ。
会話は聞き取れないけれど、彼女は恵介の手を握って色っぽい視線を送っている。
ふーん……。
どういった関係なのかは知らないけれど、普段はやっぱり、こういう綺麗な人とのお付き合いがあるわけね。
さっきも同じ会社の女子たちが噂していたし、やっぱりそれなりにモテるんだな。
周りには好意を寄せてくれる綺麗な人がたくさんいるのに、恵介が今私と一緒にいるのは、私への同情とか琴音へのちょっとした当て付けとか、せいぜいそんなものだろう。
美人には程遠い上に、真面目なことくらいしか取り柄のない地味な私が恵介の彼女だなんておこがましい。
それらしく振る舞ってはいるけれど、恵介は私が好きだから付き合っているんじゃない。 
いくら恵介の隣が心地よくても、それだけは忘れないようにしないと。 
美人からのお誘いをお断りさせるのも申し訳ないし、目的の髪飾りは買ってもらったから、このままもう帰ろうかな。 
ベンチから立ち上がると、恵介と目が合った。
帰るね、と声には出さず口の動きだけで伝え、小さく手を振って歩き出した。
恵介だって地味な私なんかより、色気のある美人と一緒にいた方が楽しいに決まってる。 
駅に向かって人混みの中を歩いていると、後ろから腕を掴まれた。
「幸、ちょっと待て!」
振り返ると恵介が険しい顔をして息を切らしていた。
「恵介……なんで?」
「なんで?って聞きたいのはこっちだろ!待っててって言ったのに、なんで勝手に帰ろうとしてんだよ!」
「さっきの人といい感じだったし、お誘いがあったみたいだから、邪魔しちゃ悪いかなって」
「はぁ?!」
「綺麗な人だったし」
恵介は呆れた顔をして大きくため息をついた。
「何だそれ……。一緒に飯食いに行こうって、さっき約束したじゃん」
「そうだけど……私なんかと御飯食べるより、色っぽい美人と夜景の綺麗なホテルのディナーとか行った方が楽しいでしょ」
「行くか、そんなもん!バカじゃねぇの?!それより俺は、幸と美味しい御飯食べに行きたいの!」
そんなに美味しい御飯が食べたかったのか、恵介は。
それとも今日は和食の気分だったのかな?
「和食の方が好きだから?」
「あーもう……!じゃあそれでいいよ、とにかく行くぞ!」
恵介が私の手を引いて歩き出した。
「あの……手、離してくれる?」
「イヤだ、離したらまたどっか行くつもりだろ。絶対離さん!」
なんだかんだ言って、恵介は優しい。
なんのためらいもなく手を繋いでくれるから、恵介は綺麗な人より私と一緒にいたかったんだなんて、ほんの少し自惚れてしまいそうになった。
御飯が美味しい店だと言うから、てっきり落ち着いた雰囲気の和食専門店だと思っていたのに、恵介が連れていってくれたお店は、活気のみなぎる和食居酒屋だった。
意外だなと思いながら料理を口にすると、驚くほど美味しかった。
「幸、明日の朝は出勤早い?」
「ううん。10時に出勤して、閉館まで仕事」
恵介は少し笑ってドリンクメニューを手に取った。
「じゃあ、お酒頼もうか。ここ、うまい酒置いてるよ。日本酒は大丈夫?」
「うん。たまにしか飲まないけど、日本酒って美味しいよね」
「よし、今夜は酔わせちゃおう」
酔わせちゃおう、って……何?
また酔った勢いで私をどうにかしようって?
ダメだ、日本酒の酔いをセーブできる自信がない。
「やっぱりやめとく……。冷たい緑茶ください」
「えっ、飲まないの?」
「飲まないの。酔うと自分がどうなるかわからないから」
「そんなに酔うほど飲まなくても……。じゃあ一杯だけ、一緒に飲もう?」
一杯だけなら大丈夫かな……?
「ホントに一杯だけだよ?」
「うん、一杯だけ」
恵介は店員を呼んで、メニューを見ながら珍しい地酒を注文した。
きっとお酒が大好きなんだな。
初めて二人で飲んだ時に、かなりの酒豪だと思った記憶がある。
二人で一緒にお酒を飲むのはあの時以来だ。
今日はあの時みたいにベロベロになるまで飲まないと固く心に誓って、運ばれてきた日本酒に口をつけた。
……はずだったのに。
久しぶりに飲んだ日本酒の美味しさに負けて、ついついおかわりを頼んでしまった。
これ何杯目だっけ?
よく覚えてないけど、ふわふわして楽しくて、かなりいい気分だ。
「一杯だけって言ったのは誰だっけ?そんなに飲んで大丈夫か?」
「大丈夫だよー。酔っ払うほどは飲んでないもん」
「でも日本酒だから一気に来るぞ。そろそろお茶でも頼もうか」
恵介は私の手からお酒のグラスを取り上げた。
「やだぁ、返して。まだ飲むの」
恵介からグラスを奪い返してお酒を勢いよく飲んだ。
「あっ、コラ!水じゃないんだから!!」
恵介は慌てて止めようとしたけれど、私は言うことを聞かず残っていたお酒を一気に飲み干した。
「うふふー、美味しーい」
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