Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
チョコレートとキス (3)
ああ、なんだ。
私のセンスの問題か。
私が自分で選ぶと似たような物ばかりで地味になってしまうから、恵介が選ぶって言うことだな。
「顔も地味だけど、服のセンスも地味だからね」
自分でも呆れるほど卑屈な物の言い方をした。
さすがの恵介もため息をついている。
私のこういうネガティブなところに呆れているんだろう。
「またそんなこと言って……。俺はそんな風には思わない。幸には幸の良さがあるんだから、自分を否定するようなこと言っちゃダメだよ」
恵介の言う私の良さってなんだ?
琴音と正反対の部分のこと?
倹約家とまではいかないにしても、少なくとも私は浪費家ではない。
自分で言うのもなんだけど、真面目で堅実な方だと思う。
だけどそこがやっぱり地味で面白みに欠けるんじゃないか?
「恵介が言うように、私にしかない良さがあったとしてもさ……それじゃ琴音の良さには敵わなかったから、夏樹は琴音を選んだんだよね」
「だから前も言ったじゃん。彼は女を見る目がないって。俺は幸のこと、いい女だと思うよ」
いい女……って……。
そんなこと言われるの生まれて初めてだよ!!
「お世辞はいい」
「俺、正直だからね。お世辞は言わない主義。女のうわべしか見ない男にはわからないだろうけど、幸はかわいいし、いい女だよ」
それは誉めすぎだ……。
やっぱり気を遣ってお世辞を言ってくれてるだけなんだと思うけど、照れくさくてみるみる顔が熱くなる。
「幸、顔赤い。ひょっとして照れてる?」
恵介は身を乗り出して、熱く火照った私の頬にそっと触れた。
「そういうところがかわいいんだよなぁ」
「……物好き」
「なんとでも言え。かわいいものをかわいいと言って何が悪い」
なんなのこれ……羞恥プレイかなんかなの?
言われ慣れないことばかり言われて、私のキャパはもう限界なんだけど!!
恥ずかしさのあまり真っ赤になっているであろう顔を上げることもできずうつむいていると、恵介が椅子から立ち上がって私のそばに立った。
「幸、こっち来て」
恵介は私の手を引いてベッドの方へと進む。
「あの……恵介……?」
「幸があんまりかわいいから、我慢できなくなった」
「えっ?!」
「ちょっとだけ」
ちょっとだけって何?!
恵介はベッドの縁に腰掛けて、足の間に座らせた私を後ろから抱きしめた。
「幸がいやがることはしないから、ちょっとだけこうさせて」
「……ちょっとだけなら」
自分でも戸惑うくらい鼓動が速い。
ものすごくドキドキしているの、恵介にも伝わっているかも知れない。
「幸の心臓、すっげぇドキドキ鳴ってる」
「だって……」
「俺のせい?」
私が小さくうなずくと、恵介は私を抱きしめる腕に少し力を込めて微笑んだ。
ギュッと抱きしめられて密着した背中に、恵介の体温と少し速い鼓動が伝わってくる。
「めっちゃ嬉しい。俺もドキドキしてるの、わかる?」
「……うん」
「俺は幸と、もっとドキドキすることしたいんだけどな。ダメ?」
それってやっぱり、私とやらしいことしたいって……そういうことだよね?
初めてでもないし、いい歳をして情けないとは思うけど、こんな時どうすればいいのかよくわからない。
夏樹と最初にした時、私は夏樹が好きだったし、夏樹は私に迷う隙も与えなかった。
その後もそれは変わらなかった。
恵介とした時はかなり酔ってたからその勢いに流されたけど、今は一滴もお酒を飲んでいないし、緊張して体が強ばる。
恵介のことは嫌いじゃない。
だけどまだ身を委ねられるほど好きではないと思うし、私の心の中には今も間違いなく夏樹がいる。
何も答えられないまま身を固くしてうつむいていると、恵介がまた小さくため息をついて私の頬に軽くキスをした。
「やっぱ今のなし。幸がいやがることはしないって約束は守るから、そんなに怖がらないで」
「……ごめん」
「謝らなくていいって。だけどもう少しだけ、こうさせて」
「うん」
恵介は私を包み込むように抱きしめて、肩口に顎を乗せた。
「幸とこうしてるだけで俺は結構幸せ。こんな気持ちになるの、いつ以来だろ?」
「こんな気持ちって……」
「うーん……心があったかくなるって言うか、満たされるって言うか……。それだけじゃなくて、もっとこう……なんだろ、うまく言えないんだけど」
「落ち着くの?」
「それもあるな。すごく心地いい。幸は?」
「ちょっと緊張する……」
「イヤじゃない?」
「うん……イヤじゃない……けど、恥ずかしい」
「良かった。これで安心して幸を抱きしめられる」
「恥ずかしいって言ったのに……」
私はきっと、慣れない状況に戸惑って、緊張しているだけだと思う。
恵介のことがイヤなんじゃない。
だけど本気で好きになるのは怖い。
琴音がよりを戻したいと言っても断ると恵介は言ったけど、私は女として琴音に勝てる自信がない。
実際、夏樹だって私より琴音を選んだんだから。
私のセンスの問題か。
私が自分で選ぶと似たような物ばかりで地味になってしまうから、恵介が選ぶって言うことだな。
「顔も地味だけど、服のセンスも地味だからね」
自分でも呆れるほど卑屈な物の言い方をした。
さすがの恵介もため息をついている。
私のこういうネガティブなところに呆れているんだろう。
「またそんなこと言って……。俺はそんな風には思わない。幸には幸の良さがあるんだから、自分を否定するようなこと言っちゃダメだよ」
恵介の言う私の良さってなんだ?
琴音と正反対の部分のこと?
倹約家とまではいかないにしても、少なくとも私は浪費家ではない。
自分で言うのもなんだけど、真面目で堅実な方だと思う。
だけどそこがやっぱり地味で面白みに欠けるんじゃないか?
「恵介が言うように、私にしかない良さがあったとしてもさ……それじゃ琴音の良さには敵わなかったから、夏樹は琴音を選んだんだよね」
「だから前も言ったじゃん。彼は女を見る目がないって。俺は幸のこと、いい女だと思うよ」
いい女……って……。
そんなこと言われるの生まれて初めてだよ!!
「お世辞はいい」
「俺、正直だからね。お世辞は言わない主義。女のうわべしか見ない男にはわからないだろうけど、幸はかわいいし、いい女だよ」
それは誉めすぎだ……。
やっぱり気を遣ってお世辞を言ってくれてるだけなんだと思うけど、照れくさくてみるみる顔が熱くなる。
「幸、顔赤い。ひょっとして照れてる?」
恵介は身を乗り出して、熱く火照った私の頬にそっと触れた。
「そういうところがかわいいんだよなぁ」
「……物好き」
「なんとでも言え。かわいいものをかわいいと言って何が悪い」
なんなのこれ……羞恥プレイかなんかなの?
言われ慣れないことばかり言われて、私のキャパはもう限界なんだけど!!
恥ずかしさのあまり真っ赤になっているであろう顔を上げることもできずうつむいていると、恵介が椅子から立ち上がって私のそばに立った。
「幸、こっち来て」
恵介は私の手を引いてベッドの方へと進む。
「あの……恵介……?」
「幸があんまりかわいいから、我慢できなくなった」
「えっ?!」
「ちょっとだけ」
ちょっとだけって何?!
恵介はベッドの縁に腰掛けて、足の間に座らせた私を後ろから抱きしめた。
「幸がいやがることはしないから、ちょっとだけこうさせて」
「……ちょっとだけなら」
自分でも戸惑うくらい鼓動が速い。
ものすごくドキドキしているの、恵介にも伝わっているかも知れない。
「幸の心臓、すっげぇドキドキ鳴ってる」
「だって……」
「俺のせい?」
私が小さくうなずくと、恵介は私を抱きしめる腕に少し力を込めて微笑んだ。
ギュッと抱きしめられて密着した背中に、恵介の体温と少し速い鼓動が伝わってくる。
「めっちゃ嬉しい。俺もドキドキしてるの、わかる?」
「……うん」
「俺は幸と、もっとドキドキすることしたいんだけどな。ダメ?」
それってやっぱり、私とやらしいことしたいって……そういうことだよね?
初めてでもないし、いい歳をして情けないとは思うけど、こんな時どうすればいいのかよくわからない。
夏樹と最初にした時、私は夏樹が好きだったし、夏樹は私に迷う隙も与えなかった。
その後もそれは変わらなかった。
恵介とした時はかなり酔ってたからその勢いに流されたけど、今は一滴もお酒を飲んでいないし、緊張して体が強ばる。
恵介のことは嫌いじゃない。
だけどまだ身を委ねられるほど好きではないと思うし、私の心の中には今も間違いなく夏樹がいる。
何も答えられないまま身を固くしてうつむいていると、恵介がまた小さくため息をついて私の頬に軽くキスをした。
「やっぱ今のなし。幸がいやがることはしないって約束は守るから、そんなに怖がらないで」
「……ごめん」
「謝らなくていいって。だけどもう少しだけ、こうさせて」
「うん」
恵介は私を包み込むように抱きしめて、肩口に顎を乗せた。
「幸とこうしてるだけで俺は結構幸せ。こんな気持ちになるの、いつ以来だろ?」
「こんな気持ちって……」
「うーん……心があったかくなるって言うか、満たされるって言うか……。それだけじゃなくて、もっとこう……なんだろ、うまく言えないんだけど」
「落ち着くの?」
「それもあるな。すごく心地いい。幸は?」
「ちょっと緊張する……」
「イヤじゃない?」
「うん……イヤじゃない……けど、恥ずかしい」
「良かった。これで安心して幸を抱きしめられる」
「恥ずかしいって言ったのに……」
私はきっと、慣れない状況に戸惑って、緊張しているだけだと思う。
恵介のことがイヤなんじゃない。
だけど本気で好きになるのは怖い。
琴音がよりを戻したいと言っても断ると恵介は言ったけど、私は女として琴音に勝てる自信がない。
実際、夏樹だって私より琴音を選んだんだから。
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