Pessimist in love ~ありふれた恋でいいから~
見返してやろうよ (3)
「あ、やっぱ彼が使ってたのを俺のために置いといてもらうのはちょっとイヤかな。新しいの買って来よう」
やっぱり琴音を奪った夏樹のことは気に入らないから、夏樹の使っていた灰皿を使うのはイヤなんだな。
“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”って感じ?
……って言うか、恋人でもないのに新しい灰皿を用意してまで私の部屋に入り浸るつもり?
夏樹と言い富永さんと言い、そんなにこの部屋は居心地がいいのかな?
「なんで?富永さんがここに来る理由なんかないでしょ?」
「来ちゃダメ?俺は来たいんだけど」
やっぱりこの人の考えていることは私には理解できない。
私の体が目当てなのかとも思ったけど、夕べはお互い酔ってたから普通の状態じゃなかったし、そもそも私は目当てにされるほどのいい体じゃない。
体じゃないなら、食事が目当てなのか?
「何も私なんかのところに来なくたって、富永さんならすぐに他にいい人が見つかるんじゃないの?」
「まあね。それでも俺は幸さんの部屋に来たいの。わかる?」
「そんなに私の作る料理が気に入ったの?」
「そういうことにしとこうかな」
富永さんは苦笑いを浮かべながら、またタバコに口をつけた。
夏樹のタバコとは違う匂いがする。
夕べ富永さんとキスした時も、夏樹とは違うタバコの味がした。
他の人とキスをしている時も夏樹のこと思い出してたのか、私は。
「彼を取り戻したい?」
富永さんは灰皿の上でタバコの火をもみ消しながらそう言って、私の顔をチラッと見た。
「取り戻すって言っても……夏樹はもう琴音と結婚したんだよ?」
「それでもまだ好きなんだろ?いいじゃん、奪い返してやれば。まぁ、ほっといたってあの二人、すぐ別れると思うけどね。よくもって半年……いや、3か月かな」
「3か月って……」
付き合って3か月で別れるのと、結婚して3か月で離婚するのとではわけが違う。
二人とも子供じゃあるまいし、いくらなんでもそれはないと思うんだけど。
「なんでそう思うの?」
「琴音が男を選ぶ基準くらい知ってるよ。顔と体の相性が良くて、わがままを聞いて甘やかしてくれる男が好きなんだ」
なるほど、富永さんもそんな理由で琴音に選ばれたと言うことか。
たしかに割と男前で、かなりの手練れだし、世話焼きでお人好しだもんね。
琴音の好みそのものなんだな、富永さんは。
「彼はなんで3年も幸さんの部屋に入り浸ってたんだと思う?」
「さぁ……。本人から聞いたことはないけど、いろいろ便利で楽だったからじゃないかな。顔でも体の相性でもないのだけはたしか」
「なんとなくわかる。幸さんといると落ち着くもんなぁ。琴音とは正反対だ」
美人で華やかな琴音と正反対なのは自覚しているけど、ハッキリ言われるとちょっとヘコむ。
「私が地味で所帯染みてるから落ち着くって言いたいの?」
「そういうつもりで言ったんじゃないけど。幸さんって自分のこと地味だってよく言うよね。それ、コンプレックス?」
痛いところをついてくるな。
地味で冴えない私はいつも友人の引き立て役だった。
付き合っていた人に、地味でつまらないという理由でフラれたこともある。
たしかにこれは私にとって大きなコンプレックスだ。
だけど私が派手な格好をしたって絶対に似合わないんだから、どうしようもない。
「私は美人でも可愛くもないし、地味なのは事実だから」
「そう?たしかに派手ではないけど、地味って言うか無駄に飾らないだけで、幸さんはそこがいいと俺は思うんだけど」
やけに誉めるな。
私を誉めてもなんの得にもならないのに。
もしかして琴音みたいに、バッチリメイクで小綺麗な格好している分かりやすい美人は好みじゃないのかと思ったけど、富永さんは琴音と付き合ってたわけだし、やっぱり面食いなんじゃないだろうか。
「説得力ないよ」
「疑い深いんだ。じゃあさ、もし幸さんが分かりやすい美人に変われば、彼はどう思うだろうね?」
「どうって……」
どれだけ頑張っても私が琴音より美人になれるとは思えないし、もし私が少しくらい美人になれたところで、今更どうにもならないと思う。
「幸さんは琴音にない良さを持ってるし、彼もそこが気に入ってたんだと思う」
琴音にない私の良さって何?
だったらどうして夏樹は私じゃなく琴音を選んだの?
「ないない……。私にそんなものがあったら夏樹は琴音と結婚なんかしてないよ」
「彼が琴音との生活に疲れてきた頃が狙い目かな。たしかにちょっと足りない部分もあるけど、そこは俺がなんとかしてあげる」
「……聞いてないね?」
「好きなんだろ?だったら少しはあがいてみろよ。あきらめるのはそれからでも遅くない」
富永さんは私のために、琴音から夏樹を奪い返す手助けをしようとしているらしい。
だけどそんなことしても富永さんにとって何かしら得があるとは思えない。
それとも夏樹と琴音を別れさせるために私を利用しようとしてるだけ?
やっぱり琴音を奪った夏樹のことは気に入らないから、夏樹の使っていた灰皿を使うのはイヤなんだな。
“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”って感じ?
……って言うか、恋人でもないのに新しい灰皿を用意してまで私の部屋に入り浸るつもり?
夏樹と言い富永さんと言い、そんなにこの部屋は居心地がいいのかな?
「なんで?富永さんがここに来る理由なんかないでしょ?」
「来ちゃダメ?俺は来たいんだけど」
やっぱりこの人の考えていることは私には理解できない。
私の体が目当てなのかとも思ったけど、夕べはお互い酔ってたから普通の状態じゃなかったし、そもそも私は目当てにされるほどのいい体じゃない。
体じゃないなら、食事が目当てなのか?
「何も私なんかのところに来なくたって、富永さんならすぐに他にいい人が見つかるんじゃないの?」
「まあね。それでも俺は幸さんの部屋に来たいの。わかる?」
「そんなに私の作る料理が気に入ったの?」
「そういうことにしとこうかな」
富永さんは苦笑いを浮かべながら、またタバコに口をつけた。
夏樹のタバコとは違う匂いがする。
夕べ富永さんとキスした時も、夏樹とは違うタバコの味がした。
他の人とキスをしている時も夏樹のこと思い出してたのか、私は。
「彼を取り戻したい?」
富永さんは灰皿の上でタバコの火をもみ消しながらそう言って、私の顔をチラッと見た。
「取り戻すって言っても……夏樹はもう琴音と結婚したんだよ?」
「それでもまだ好きなんだろ?いいじゃん、奪い返してやれば。まぁ、ほっといたってあの二人、すぐ別れると思うけどね。よくもって半年……いや、3か月かな」
「3か月って……」
付き合って3か月で別れるのと、結婚して3か月で離婚するのとではわけが違う。
二人とも子供じゃあるまいし、いくらなんでもそれはないと思うんだけど。
「なんでそう思うの?」
「琴音が男を選ぶ基準くらい知ってるよ。顔と体の相性が良くて、わがままを聞いて甘やかしてくれる男が好きなんだ」
なるほど、富永さんもそんな理由で琴音に選ばれたと言うことか。
たしかに割と男前で、かなりの手練れだし、世話焼きでお人好しだもんね。
琴音の好みそのものなんだな、富永さんは。
「彼はなんで3年も幸さんの部屋に入り浸ってたんだと思う?」
「さぁ……。本人から聞いたことはないけど、いろいろ便利で楽だったからじゃないかな。顔でも体の相性でもないのだけはたしか」
「なんとなくわかる。幸さんといると落ち着くもんなぁ。琴音とは正反対だ」
美人で華やかな琴音と正反対なのは自覚しているけど、ハッキリ言われるとちょっとヘコむ。
「私が地味で所帯染みてるから落ち着くって言いたいの?」
「そういうつもりで言ったんじゃないけど。幸さんって自分のこと地味だってよく言うよね。それ、コンプレックス?」
痛いところをついてくるな。
地味で冴えない私はいつも友人の引き立て役だった。
付き合っていた人に、地味でつまらないという理由でフラれたこともある。
たしかにこれは私にとって大きなコンプレックスだ。
だけど私が派手な格好をしたって絶対に似合わないんだから、どうしようもない。
「私は美人でも可愛くもないし、地味なのは事実だから」
「そう?たしかに派手ではないけど、地味って言うか無駄に飾らないだけで、幸さんはそこがいいと俺は思うんだけど」
やけに誉めるな。
私を誉めてもなんの得にもならないのに。
もしかして琴音みたいに、バッチリメイクで小綺麗な格好している分かりやすい美人は好みじゃないのかと思ったけど、富永さんは琴音と付き合ってたわけだし、やっぱり面食いなんじゃないだろうか。
「説得力ないよ」
「疑い深いんだ。じゃあさ、もし幸さんが分かりやすい美人に変われば、彼はどう思うだろうね?」
「どうって……」
どれだけ頑張っても私が琴音より美人になれるとは思えないし、もし私が少しくらい美人になれたところで、今更どうにもならないと思う。
「幸さんは琴音にない良さを持ってるし、彼もそこが気に入ってたんだと思う」
琴音にない私の良さって何?
だったらどうして夏樹は私じゃなく琴音を選んだの?
「ないない……。私にそんなものがあったら夏樹は琴音と結婚なんかしてないよ」
「彼が琴音との生活に疲れてきた頃が狙い目かな。たしかにちょっと足りない部分もあるけど、そこは俺がなんとかしてあげる」
「……聞いてないね?」
「好きなんだろ?だったら少しはあがいてみろよ。あきらめるのはそれからでも遅くない」
富永さんは私のために、琴音から夏樹を奪い返す手助けをしようとしているらしい。
だけどそんなことしても富永さんにとって何かしら得があるとは思えない。
それとも夏樹と琴音を別れさせるために私を利用しようとしてるだけ?
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