ただいま冷徹上司を調・教・中・!
仮がホントに変わるとき(3)
晩御飯も食べずに求め合ったけれど、少しもお腹はすいていない。
明日の仕事のことも考えて、まともに動けるようになった0時前には凱莉さんに車で送ってもらった。
名残惜しくて車内で何度となくキスを交わす。
まるで芸能人のゴシップのようだと二人で笑い合った。
それからというもの、約束で決めた土曜日以外の平日も、凱莉さんと過ごすことが多くなっていった。
それは私に、本物と偽物の線引きを忘れさせてしまうものだった。
凱莉さんは私に何も言わないけれど、とにかく甘くて仕方がない。
仕事も以前よりも数段早く切り上げる癖に、数倍捌けているように見える。
「時間の無駄遣いをしたくないんだ。千尋との時間を作るようになって、今まで自分がどれだけ無駄なことをしていたのかに気付いたよ。千尋のおかげだな」
そう言われると、今までの彼女とは違う自分の待遇に、ついつい頬が緩んでしまう。
時間を作るのも、平日マメにデートを重ねるのも、こんなに求めたくなるのも、全部私が初めてだと凱莉さんは言う。
凱莉さんの初めてをたくさんもらって、私はすっかり仮であることも忘れて一緒にいる時間を思い切り楽しんだ。
けれど。
その時間が続けば続くほど、私には二つの疑問が湧いてきた。
考えれば考えるほど膨れていく良くない考えに、このままではいけないと思い、ひとつずつ思いをぶつけることにした。 
平日のデート、凱莉さんの部屋でのことだ。
私はひとつの疑問を解決すべく、覚悟を決めて座っていた。
「やっぱり何か買ってきた方がよかったんじゃないのか?」
いつもなら外で一緒に晩御飯を食べてから互いの家に向かう。
もしくはちゃんとテイクアウトをするのだが。
今日の私はそれを頑として断った。
「デリバリーでも頼むか?」
何かあったかな、とチラシでも探しているのか、凱莉さんが戸棚をガサガサと詮索し始める。
「いつも外じゃ味気ないじゃないですか。それより何か作りますよ。こう見えて私、料理得意なんです」
凱莉さんの背中に向かってそう投げかけると、彼はピタリと動きを止めた。
「凱莉さん?」
「仕事で疲れただろう?また機会があった時に……」
「仕事終わってこの時間からご飯作るなんて普通でしょ?」
19時を指し示す時計は、まだ十分に時間があると教えてくれている。
「いや、デリバリー頼んだ方が早いじゃないか」
「忘れたんですか?最初のデートて食器選んだじゃないですか。あれ、まだ一度も使ってないんですけど」
「コーヒーカップは何度も……」
「私がキッチンに立つとまずい理由でもあるゆですか?」
ずっと疑問に思っていたことの一つ。
凱莉さんは絶対に自宅で晩御飯を作らせてくれない。
それは私の家でも同じことで、必ず外食かテイクアウトかデリバリーを好む。
それが何故なのか、私はずっと偈せなかったのだ。
その理由を自分一人で考えるていてもロクなことにならない。
本当の凱莉さんを知るまで、きっと数いる女性たちは懸命に凱莉さんに尽くしたはずなのだ。
その歴代彼女と湖畔を巡り何かがあったのだろうか。
一度モヤモヤしてしまうと、徹底して追求したくなってしまう。
今まではいろんなことに妥協をしていたせいか、何も感じなかったというのに。
本気になると面倒くさい女になってしまうなんて、私はなんて重たい女なんだろうか。
そうは思っても、凱莉さんのことは何でも気になってしまう。
重い女だと引かれても、私は凱莉さんの全てが知りたいんだ。
「はぐらかさないでちゃんと答えてください。何かマズいことがあるんですか?」
思い入れのある女でもいるのだろうか。
本気で好きになった女性がいて、女がキッチンに立つと、その人のことを思い出して心が痛む……とか。
もしそうであるならば、私ほどうしたらいいのだろう。
凱莉さんに忘れられない人がいるなら、大人しく身を引いた方がいいのだろうか。
自分で聞いたくせに耳を塞ぎたくなってしまって、もういいです、と言いかけたとき。
「今まで千尋には何でも話してきたもんな。このことも、ちゃんと話すよ。別に隠していたわけじゃないんだ……」
凱莉さんはそう言うと、テーブルを挟み私と向き合う形で座ると溜め息をつく。
その真剣な表情に、私は嫌な予感を隠しきれなかった。
明日の仕事のことも考えて、まともに動けるようになった0時前には凱莉さんに車で送ってもらった。
名残惜しくて車内で何度となくキスを交わす。
まるで芸能人のゴシップのようだと二人で笑い合った。
それからというもの、約束で決めた土曜日以外の平日も、凱莉さんと過ごすことが多くなっていった。
それは私に、本物と偽物の線引きを忘れさせてしまうものだった。
凱莉さんは私に何も言わないけれど、とにかく甘くて仕方がない。
仕事も以前よりも数段早く切り上げる癖に、数倍捌けているように見える。
「時間の無駄遣いをしたくないんだ。千尋との時間を作るようになって、今まで自分がどれだけ無駄なことをしていたのかに気付いたよ。千尋のおかげだな」
そう言われると、今までの彼女とは違う自分の待遇に、ついつい頬が緩んでしまう。
時間を作るのも、平日マメにデートを重ねるのも、こんなに求めたくなるのも、全部私が初めてだと凱莉さんは言う。
凱莉さんの初めてをたくさんもらって、私はすっかり仮であることも忘れて一緒にいる時間を思い切り楽しんだ。
けれど。
その時間が続けば続くほど、私には二つの疑問が湧いてきた。
考えれば考えるほど膨れていく良くない考えに、このままではいけないと思い、ひとつずつ思いをぶつけることにした。 
平日のデート、凱莉さんの部屋でのことだ。
私はひとつの疑問を解決すべく、覚悟を決めて座っていた。
「やっぱり何か買ってきた方がよかったんじゃないのか?」
いつもなら外で一緒に晩御飯を食べてから互いの家に向かう。
もしくはちゃんとテイクアウトをするのだが。
今日の私はそれを頑として断った。
「デリバリーでも頼むか?」
何かあったかな、とチラシでも探しているのか、凱莉さんが戸棚をガサガサと詮索し始める。
「いつも外じゃ味気ないじゃないですか。それより何か作りますよ。こう見えて私、料理得意なんです」
凱莉さんの背中に向かってそう投げかけると、彼はピタリと動きを止めた。
「凱莉さん?」
「仕事で疲れただろう?また機会があった時に……」
「仕事終わってこの時間からご飯作るなんて普通でしょ?」
19時を指し示す時計は、まだ十分に時間があると教えてくれている。
「いや、デリバリー頼んだ方が早いじゃないか」
「忘れたんですか?最初のデートて食器選んだじゃないですか。あれ、まだ一度も使ってないんですけど」
「コーヒーカップは何度も……」
「私がキッチンに立つとまずい理由でもあるゆですか?」
ずっと疑問に思っていたことの一つ。
凱莉さんは絶対に自宅で晩御飯を作らせてくれない。
それは私の家でも同じことで、必ず外食かテイクアウトかデリバリーを好む。
それが何故なのか、私はずっと偈せなかったのだ。
その理由を自分一人で考えるていてもロクなことにならない。
本当の凱莉さんを知るまで、きっと数いる女性たちは懸命に凱莉さんに尽くしたはずなのだ。
その歴代彼女と湖畔を巡り何かがあったのだろうか。
一度モヤモヤしてしまうと、徹底して追求したくなってしまう。
今まではいろんなことに妥協をしていたせいか、何も感じなかったというのに。
本気になると面倒くさい女になってしまうなんて、私はなんて重たい女なんだろうか。
そうは思っても、凱莉さんのことは何でも気になってしまう。
重い女だと引かれても、私は凱莉さんの全てが知りたいんだ。
「はぐらかさないでちゃんと答えてください。何かマズいことがあるんですか?」
思い入れのある女でもいるのだろうか。
本気で好きになった女性がいて、女がキッチンに立つと、その人のことを思い出して心が痛む……とか。
もしそうであるならば、私ほどうしたらいいのだろう。
凱莉さんに忘れられない人がいるなら、大人しく身を引いた方がいいのだろうか。
自分で聞いたくせに耳を塞ぎたくなってしまって、もういいです、と言いかけたとき。
「今まで千尋には何でも話してきたもんな。このことも、ちゃんと話すよ。別に隠していたわけじゃないんだ……」
凱莉さんはそう言うと、テーブルを挟み私と向き合う形で座ると溜め息をつく。
その真剣な表情に、私は嫌な予感を隠しきれなかった。
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