最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~

志水零士

第一章 ~入学試験~  14 ノイの試験(前)

「お、おう。……分かった。それじゃあ、試験を始める」

 教師がそう宣言してすぐに、叩きのめすことだってノイには出来た。だが、ノイはあくまで、教師に恐怖を与えるために動いた。
 四枚の翼が、無数の羽となって崩れる。しかしそれは地に落ちることはなく、そのまま空中に留まり続けた。

「……行くの」

 ノイがそう告げると、フワフワと浮かんでいた羽は、風に吹かれたように教師の方に向かった。教師は大きく目を開き、慌てふためく。

 実際のところ、その言葉に意味はなかった。ノイが、それを起こそうとすれば、それだけで白支配マイカラーは発動するのだから。
 たが、ノイがそれを起こしたということを示すのに、それ以上のものはなかっただろう。ノイの目的は徹頭徹尾、自分の力を知らしめることにあるのだ。

「ちぃっ!」

 ――薄肉体ミラージュ、起動――

 目前に迫った未知かつ大量の羽を見て感じた恐怖に、教師は耐え切れなかった。試験中は使わないつもりだった現夢想マジックを、思わず使う。
 教師の体の色が薄くなり、後ろの情景も若干見えるようになった。教師の現夢想マジックである薄肉体ミラージュの効果だ。
 教師が白い羽の吹雪に曝されること数秒。羽が教師の周りを離れ、ノイのもとに戻ってくる。

「……悪いな。俺の現夢想マジックには、物理攻撃は効かないんだ」
「ああ、そう。……ところで、頬の傷はどうしたの?」

 呆れ声でそう言われ、教師は慌てて頬に手を当てる。その瞬間、頬に激痛が走った。教師が気づいていなかっただけで、一筋の切り傷が走っていたのだ。

「てっ、てめえ  一体何をした 」
「それが本来の口調、というわけなの? とりあえず、次、行くの」

 荒々しい口調で怒鳴られようと、ノイは一切動じない。そんな、生温い人生を送ってきたわけではないのだ。

「陸、海、空。あなたはどれが好みなの?」
「な、何を言って――」
「まぁ、その意見を反映させるつもりは全く無いんだけど」

 一方的そう告げ、ノイは目を閉じ、集中する。思い浮かべるのは三体の怪獣たちの姿。

「陸はベヒモス。海はリヴァイアサン。空は……なんだっけ? なんか大きい鳥でいいや」

 適当な言葉だったが、それがもたらした影響は絶大だった。白い羽が三か所に集まり、ノイが言った通りの生き物を形作る。
 それはただの置物ではない。

「お前まさか、派生技ブランチか 」
「いや。これはただの、私の現夢想マジックの基本性能なの」
「ふざけんじゃねえ! もしそうだとしたら、どうやってそこまでの性能にしたって言うんだ 」
「……頑張って? まぁ、あんたも頑張るの」

 直後、三体の白き怪獣が教師を襲った。





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