最強のカップルはただ単に楽しみたい ~最強(トール)と天魔(パートナー)の学園無双~
第一章 ~入学試験~ 12 フェイロの試験(前)
「さ、お前の番だ。まー……適当に頑張って来い」
しばらく経ってフェイロの番が訪れると、相馬はパタパタと手を振りながらそう言った。ただし、これはマシな方である。
ノイは早々に飽きて、半分寝ているような状態だ。立ちながら。
「……他に何か、アドバイスとか応援的なものはないんですか?」
「ない。言いたいことは、さっき言ったからな。……というか、あの程度の相手に作戦が必要なものなのか……」
「いや、それはあなたたちだけが言えることだと思いますが……と、そろそろ行ってきますね」
そう言って、フェイロは教師の方へと向かって行った。その数秒後、ノイが薄く目を開く。
「何だ? やっぱり、少しは気になるのか?」
「まぁ、一応話を聞いた身だし。……不合格になることは、ないとは思うけど」
「そりゃあな。フェイロの現夢想がどれくらい強いかは知らないが、あれだけ賢ければ合格しないことはないだろ。……あれだけの知性がありながら、戦法を一つしか考えてなかったのには驚いたがな」
「それは同感なの」
戦い方を一つしか考えてなかったのが普通の人だったら、二人は別に驚かなかっただろう。普通の人が一つの戦い方を究めようとするのは、特に不思議ではないからだ。実際のところそれは、完全な間違いではないのだから。
ただ、中途半端に一つの戦法を磨くと、それだけでは対処しきれなくなることがある。弱点がないものなんて、ほとんどないからだ。
そんな状態になるくらいなら、当然数種類の戦法を作っておいた方がいい。複数の戦い方によってそれぞれの弱点を埋めれば、様々な相手に対しての対策になる。
そしてこの発想に至ることは、ある程度の知性があれば十分に出来ることだ。それなのに、ある程度賢いと思っていたフェイロが気づいていなかったから、二人は驚いたのだ。
「十中八九、周囲の影響なんだろうがな……あの賢さもその影響かもしれんし、何とも言い難いな」
悩ましげに、相馬はそう呟く。
周囲に自然と馴染みながら、自分という存在を失わないようにすることは、かなり難しいことだ。フェイロは必死にそれを両立しようと頭を働かせて賢くなったが、完全には出来なかったために一つの戦い方を磨くべきという固定観念に縛られていたのだろう、というのが相馬の考えであり、それは見事に的を射ていた。
フェイロは名家の跡取り息子である。頭が固い両親とは違い、柔軟な発想が出来る子供であったため、このような少年に育ったのだ。
「フェイロの過去はともかく、今はあんな状態なんだし、別にいいんじゃないの?」
「……それもそうか」
フェイロは堂々たる佇まいで直立しながら、鋭い視線を教師に向けていた。それを見て相馬は、確かにどうでもいいことだと察したのだった。
――気拡散、起動――
顔には全く出さず、フェイロは彼の現夢想である気拡散を使用した。
まだ教師は、試験の開始を告げていない。しかし、先に準備をしておくことは、特に禁じられてはいないのだ。
気拡散は、たださえ空気を集めるのに時間が掛かる現夢想だ。にも関わらず、フェイロはいつも以上の低速で、空気を集めていた。
バレていけない。つまり、相馬がフェイロに与えた作戦は、奇襲作戦だった。
「よし、来い!」
教師がそう宣言した瞬間、フェイロは静かに動き出す。
フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
   
しばらく経ってフェイロの番が訪れると、相馬はパタパタと手を振りながらそう言った。ただし、これはマシな方である。
ノイは早々に飽きて、半分寝ているような状態だ。立ちながら。
「……他に何か、アドバイスとか応援的なものはないんですか?」
「ない。言いたいことは、さっき言ったからな。……というか、あの程度の相手に作戦が必要なものなのか……」
「いや、それはあなたたちだけが言えることだと思いますが……と、そろそろ行ってきますね」
そう言って、フェイロは教師の方へと向かって行った。その数秒後、ノイが薄く目を開く。
「何だ? やっぱり、少しは気になるのか?」
「まぁ、一応話を聞いた身だし。……不合格になることは、ないとは思うけど」
「そりゃあな。フェイロの現夢想がどれくらい強いかは知らないが、あれだけ賢ければ合格しないことはないだろ。……あれだけの知性がありながら、戦法を一つしか考えてなかったのには驚いたがな」
「それは同感なの」
戦い方を一つしか考えてなかったのが普通の人だったら、二人は別に驚かなかっただろう。普通の人が一つの戦い方を究めようとするのは、特に不思議ではないからだ。実際のところそれは、完全な間違いではないのだから。
ただ、中途半端に一つの戦法を磨くと、それだけでは対処しきれなくなることがある。弱点がないものなんて、ほとんどないからだ。
そんな状態になるくらいなら、当然数種類の戦法を作っておいた方がいい。複数の戦い方によってそれぞれの弱点を埋めれば、様々な相手に対しての対策になる。
そしてこの発想に至ることは、ある程度の知性があれば十分に出来ることだ。それなのに、ある程度賢いと思っていたフェイロが気づいていなかったから、二人は驚いたのだ。
「十中八九、周囲の影響なんだろうがな……あの賢さもその影響かもしれんし、何とも言い難いな」
悩ましげに、相馬はそう呟く。
周囲に自然と馴染みながら、自分という存在を失わないようにすることは、かなり難しいことだ。フェイロは必死にそれを両立しようと頭を働かせて賢くなったが、完全には出来なかったために一つの戦い方を磨くべきという固定観念に縛られていたのだろう、というのが相馬の考えであり、それは見事に的を射ていた。
フェイロは名家の跡取り息子である。頭が固い両親とは違い、柔軟な発想が出来る子供であったため、このような少年に育ったのだ。
「フェイロの過去はともかく、今はあんな状態なんだし、別にいいんじゃないの?」
「……それもそうか」
フェイロは堂々たる佇まいで直立しながら、鋭い視線を教師に向けていた。それを見て相馬は、確かにどうでもいいことだと察したのだった。
――気拡散、起動――
顔には全く出さず、フェイロは彼の現夢想である気拡散を使用した。
まだ教師は、試験の開始を告げていない。しかし、先に準備をしておくことは、特に禁じられてはいないのだ。
気拡散は、たださえ空気を集めるのに時間が掛かる現夢想だ。にも関わらず、フェイロはいつも以上の低速で、空気を集めていた。
バレていけない。つまり、相馬がフェイロに与えた作戦は、奇襲作戦だった。
「よし、来い!」
教師がそう宣言した瞬間、フェイロは静かに動き出す。
フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
   
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