覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

混元傘(こんげんさん)

「滅っするがいい、アグニテラフレア!」
 ヴァルカンが詠唱を完成させ炎系最強クラスの魔法を放つ。
 この世の終わりの様に上空が地獄の炎で真っ赤になり、その炎が高速で城下町に降り注がれようとしていた。
「カッ!」
 悟空の神通力で宝貝が巨大化して一気に広がり上空を覆う。
 太公望が投げた宝貝は混元傘(こんげんさん)。全ての攻撃を跳ね返す宝貝だ。
 魔法と城下町の間に挟まる形となった混元傘にアグニテラフレアが降り注ぎ直撃する。
 跳ね返すかと思いきや、魔法の威力が強大過ぎて少し押され気味だ。
「この野郎!ダーーーーッ!」
 悟空が更に宝貝へ神通力を加えた刹那。
「ヴァリヴァリヴァリーーーッ!」
 とてつもない爆音と共に魔法が弾き返された。返された魔法は星の彼方へと飛んで行く。
「な、何とかなったのう。ナイスじゃ悟空!」
「へへ、成功したな。神通力を解いてあの宝貝を回収するぞ」
 神通力の効果が切れ、元に戻った混元傘が落下するところを觔斗雲を飛ばして太公望が上手くキャッチする。
 ヴァルカンが首を回し二人を凝視した。
「貴様らよくも邪魔してくれたな」
 口の動きは微妙だが声はハッキリと聞こえる。
「ほう、ドラゴンは話す事が出来るんじゃのう?」
「カカカ、言語が使えるのはエンシェント・ドラゴンに限るがな」
 会話が出来るのなら...交渉して解決する可能性を太公望は考えた。
「おぬし、どういう理由があってこの国を襲う」
「簡単な事、近くの山がワシの寝床だ。最近はこの国の者どもが宝石を発掘しようと山を騒せる。静寂を取り戻しに来たまでよ」
「眠りを妨げてられて憤慨しているのじゃな...」
 何処かで聞いた話にそっくりだと太公望は思った。
「もうこれだけ国を破壊して満足したのではないか?この国の者どもには山に入らぬようわしが説き伏せる。ここは山に戻ってもらえんかのう?」
「カカカ、それは絶対にあり得ぬ。ワシはこの国を滅ぼすと決めたんだ!」
 言い終わると同時に太公望目掛け炎を吐き出した。が、警戒していた悟空が觔斗雲で素早く動き間髪かわす。
 そこへジオンが飛んでくる。
「大丈夫か太公望?」
「お、ジオン生きておったか。わしは大丈夫じゃよ」
「そうか良かった。我らの軍は被害が甚大でズタズタだ。お前らが参戦してくれるのなら残った我らはどう動けば良い?」
 太公望は一考して直ぐに返す。
「おぬし達も含めて国民を遠くへ避難させてくれぬか。アレはわしと悟空で何とかする。悪いが中途半端な戦力では役に立たんからのう」
「ここに居ても役に立たないのは奴と戦って十分理解している。悔しいがそうさせてもらおう。すまんがお前らにこの国を託すぞ」
「今回ばかりは保証できんが、やるだけやってみるわい。早う行け」
「猿もすまん!頼んだぞ!」
 二人に頭を下げ、ジオンはその場を去った。

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