覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

神通力

「寝ているお前を止めるために何人かの者で数十回に渡って魔法攻撃を繰り返した。その内数発が命中してようやく貴様は目を覚ましたのさ。そのあと勘違いした貴様は更に暴れ回ってくれたがな!」
 カルンの口調は今にも飛びかかりそうなほど荒々しくなっていた。
「ああ、目が覚めた時に感じた違和感や痛みの原因は分かった。冗談を言うつもりは微塵も無いが、これはお互いに不運だったから仕方が無かったという事には...」
 悟空が喋り終わる前にカルンが飛びかかっていた。
「この時を待っていたぞ!王の仇孫悟空よ此処に散れ!」
「ゴガッ!」
 魔法を帯びた剣が悟空の頭部に届かんとする寸前、如意棒で顎を砕かれ後方に力無く吹き飛ばされるカルンの無残な姿があった。
「あ〜も〜面倒くせーーーっ!全員まとめてかかって来やがれ!」
 言わずもがな一団は既に攻撃態勢に入っていた。アンズーがダークエルフ達の前に立って壁となり竜巻を起こす。その後ろでジオンらが魔法の詠唱を開始。詠唱の長さからしてハイレベルな魔法であろう。
「悟空よ!ここは責任を持ってお前が何とかするのだぞ!」
 そう言って太公望は洞窟の奥へそそくさと非難する。
「ヘン!最初からそのつもりだぜ!」
 飛行機のプロペラ並?否、その何倍もの速さで如意棒を身体の前面で回転させる。   悟空は通常派手な物理攻撃を好んで使用するが、実は強力な神通力を使う事もできるのだ。
 その神通力を如意棒に伝導させ、アンズーが起こした竜巻よりも遥かに巨大で強力な竜巻を起こし一団にぶつける。
 アンズーらの竜巻はあっという間に巨大竜巻に呑み込まれ、魔獣の巨体も吹き飛ばされた。
「ロストヴェイン!」
 狭い洞窟内が既にカオス状態のなか、ダークエルフの上級闇魔法が完成し放たれたが、神通力の籠もった巨大竜巻に一瞬にしてかき消され、ジオンらもアンズーと一緒に巨大竜巻に呑み込まれ洞窟の外まで吹き飛ばされる。
「相変わらず弱いな〜あいつら、歯応えなさ過ぎだぜ」
 悟空が止めを刺そうと動く。
「殺してはならぬぞ!奴らから情報を訊き出さなければならぬからのう」
 太公望がひょっこり顔を出し釘を刺す。
「...確かに情報は大事だな。分かった、全員縛り上げてやらあ!」
 猿は自分で吹き飛ばした一団を追いかけ洞窟を出て行った。
「わしとした事が、あやつの力と人格を大きく見誤っていたようじゃのう。まさかここまでとは...」
 普段は能天気に見え自信に満ち溢れている太公望であったが、悟空の圧倒的な力と過去の事件を知り、随分と想いをめぐらし悩んでいるようであった。

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