覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

元始天尊

「ないわぁこいつ絶対ないわぁ」
 ジオンに続きダークエルフの女性ミリシャも悟空に対して感情をぶつける。
 「おぬし、どういう理由があって100年前に一つの国を滅ぼしたのじゃ?」
 太公望は真相を確かめたいようである。
「話せば長くなってしまうんだがいいのか?この状況だぞ」
「善いよ、きっとそこの被害者達も当時のおぬしの動機には興味津々というものじゃろ」
 ジオン、ミリシャ他多数が息を合わせたように一斉にウンウンと頷く。
「仕方がね〜なぁ...しかし100年以上前の話だ。覚えてる範囲で話すぞ?」
「前置きは良いから早よ〜話せ悟空」
 確かにそんな昔の話を明確に説明せよと言われても土台無理な話だろう。
 諦め顔で猿は渋々語り出した。
「確か100年くらい前のあの時、オレはこの精霊妖精界に仙人界から逃げて来た。その原因は悪戯が過ぎたというか何というか、決定的だったのが元始天尊との喧嘩だな。あの爺さんが昼寝している間に、可愛い悪戯でハゲ頭にオレの毛を植毛しただけでブチ切れやがった」
「ああ、あの頭は元始天尊様のチャームポイントだからのう。それは怒られて当然じゃな」
 頭がハゲていく課程で悩んでる人ならまだしも、既に個人の魅力的な部分であると自負する者にとっては正に余計なお世話であろう。しかも、猿の剛毛を植え付けられては...しょうもない悪戯である。
「それで爺さんの奴、このクソ猿め!その剛毛を全て抜き捨ててやるわー!何て言いながら、宝貝の盤古幡(ばんこはん)を全力で使って来やがったんだ。だからオレもムキになって爺さんの頭を手加減無しで小突いたら気絶した。さっきも言ったが、そこから仙人どもに毎日追われまくって命辛々こっちの世界に逃げ込んだって訳さ」
 元始天尊も大人気ないかったが、現代で云うところの三清の一柱。太上道君や太上老君と並び神格化されるほどの存在。
 最高峰の仙人の頭を如意棒で小突くなどという暴挙は悟空だから可能なのであろう。
 太公望も悪戯好きだが、流石にそこまでは実行しない...否、やってしまいそうな...
ついでに説明すると、伝説によれば盤古幡は狙った場所に何千何万倍もの重力を発生させて、対象の動きを封じたり、グシャグシャに圧死させてしまう恐るべき武器だそうな。
「こっちの世界に来てからオレは四大精霊の各国に用心棒として雇わないか?と打診してまわった。この悟空様を用心棒として雇えば、その国は永久に安泰で喜ばれると思ってたからな。しかし仙人界からの噂が流れていたお陰で全て断られる結果となったがな」
「ふむ、おぬしは精霊妖精界でもブラックリスト扱いだったという事じゃな。至極当然で必然で自業自得じゃ」
 太公望の表情はもはや完全に呆れ顔になっていた。

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