覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

ダークエルフ

「若造、これで終わりだ!」
 聞仲が左腕に力を込め金鞭で攻撃を繰り出そうとしたその時。
「ウォーターボックス!」
 俺の後方から女性の叫ぶ声がした。
 誰だ!?ミーコの声じゃない。
 後ろを振り返ると人影が近づいて来るのが見えた。
 おっと余所見している場合じゃない。
 サッと聞仲の方を確認すると、大きな箱型の結界のようなものに閉じ込められていた。箱の中は水でいっぱいに満たされていて動きを封じている。
 このまま放って置けば窒息死してくれるのでは?と淡い期待感がを持った刹那。
「パシーン!」
 水玉が破裂するような大きな音がして、水の箱は一瞬にして弾け飛び消滅してしまった。もう何が何やらである。
 聞仲が地に着いた膝を上げ、立ち上がろうとする側へまた何者かが現れた。
 肌が黒く人間に近いが人間ではない美男子の様相を呈している。
「聞仲様、私の異空間は解いてしまいました。失礼ながらそろそろ引き時ですよ」
 言われた本人はイラついたのか、キッと睨みつけたが美男子は同時ない。
「フッ、仕方ないな。私の油断が招いたこの哀れな状況...今回はお前の意見を取り入れよう」
「痛み入ります」
 二人のやり取りが終わり、美男子が転がっている聞仲の腕を拾い上げ俺の方を向く。
「我が名はダークエルフのイバシュ。此度の闘いはいずれまた決着をつける事となろう。貴様らの顔は覚えた。次はこうはいかぬ覚悟しておけ」
 そう言い残し、ダークエルフのイバシュと聞仲は目の前から風のごとく消えてしまった。
 俺は緊張感から解放されヘナヘナとその場に崩れ落ち正座する形になる。
「君、大丈夫?」
 後ろから声を掛けられ振り向くと、見覚えのある女性が立っていた。
「あ、マッサージ師の...えっと神坂さん?」
 先週マッサージ店で神技マッサージをしてくれた人だと思い出す。
「仙道さん覚えててくれたんだ。嬉しいなぁ」
 救いの女神だ。初めて会った時以上に美しく見える神坂さんだった。
「ちょっと〜、危ないとこ助けてあげたんだからお礼くらい言ってよね」
 ミーコが云ってた四大精霊のウンディーネだな。透き通る衣服のためか、露出度が高いような気がするがこれまた美人だ。気が強そうな顔ではあるが...
「あ、ありがとう、助かったよ」
「ウンディーネのナーラよ。今後ともよろしくね」
 笑顔が素敵なツンデレキャラだ。
 そう言えばミーコは無事か!?
 まだ倒れたままのミーコの側に慌てて駆け寄る。
 心配して顔を覗くと、鼻風船を大きくしたり小さくしたりして、ムニャムニャと幸せそうな顔で寝ていた。
 良かった無事だった...
 トランスの影響で疲れ切っている事だろう。起こさずに暫く寝かせてあげようか。

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