覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

尾行

 その後はサーモンやトロなどオーソドックスなネタを選択する。無論、ウニ、イクラも外さない。
 気が付けば俺が20皿、ミーコは40皿ほど食べていた。相変わらずの大食いである。
「ミーコ〜、次で最後の皿にしてくれ。もう満足したろ」
「あ〜い、最後は〜トロ!」
 妖精は本来、食事に重きを置いていないらしいのである程度食べれば満足なはず。
 と言うか俺の財布の中が心配なだけだが...
 お茶を飲み勘定を済ませ店をあとにた。
「ふい〜美味しかったぁ、ありがとね源九郎」
 猫娘はご満悦である。
「寿司は久々だったから、俺もめちゃくちゃ美味く感じたよ」
 こんなに喜んでくれるのだから、またいつか一緒に寿司を食べに来よう。
 帰りもてくてくと歩く。本当は自転車で来ても良かったのだけれど、運動も兼ねているのでやはり徒歩が合理的なのである。
「源九郎、誰かに尾行されてるよ。さっきから同じ匂いがついて来てる」
 突然ミーコが俺に知らせてくれた。ケット・シーは鼻も効く、人間の倍くらいの嗅覚だ。
 尾行か。どうせされるなら美少女にして欲しいもんだな。
「分かった。路地裏に誘導して確認してみよう」
 人気の無さそうな路地裏を探し歩き続け、暫くすると打ってつけの場所を見つけた。
「気を引き締めろよ」
「了解」
 路地裏に入り道半分というところで、サッと後ろを振り向くとビルの角から人が歩いてくるのが見えた。
「俺たちに何かようですか?」
 そいつは質問には答えずゆっくり近づいてくる。スーツ姿のサラリーマン風。身長180cm以上で、顔は言いたく無いが眼鏡を掛けてるイケメンな感じだ。
「あるよ。そちらのお嬢さん...いやお兄さんにもね」
 用件があるから尾行したのだ。訊くだけ野暮だったな。
 個人的な意見としては美少女とは程遠い結果となり無念である。
 それよりミーコが何者なのか気づいているのかこの男。用件があると言うのだからその可能性は高い。
「そこの娘は妖精のケット・シーだろ。そしてお前は恐らく契約した人間」
 ご名答なのだが、こいつが敵か味方か分からない以上は下手に情報は与えられない。
「ん〜何とも言えないな〜。ところであんたは何者なんだ?」
 一応虚勢を張ってみた。
「知っているかもしれないが、仙人界から来た。名は聞仲」
 ぶぶぶ聞仲!?妲己や趙公明と並ぶ実力の持ち主と云われるあの聞仲!?
 敵と判明して俺の心臓はやばいくらい一気に心拍数を上げた。
 落ち着け落ち着け落ち着け〜俺!
 そうだ!とにかく用件を訊いてみなければ!
「で、ご、御用件とは何だ?」
 いかん。同様が収まらない。
「フッ、その様子だと妖精とその契約者で間違い無いようだ。そうだな、妖精と契約者を発見した場合はその両者を消す事。それが用件だ」
 はい、最悪のパターン来ました〜。
 選択肢は2つ、戦闘か逃亡か。さあどうする源九郎。
 あれ!?ミーコが聞仲に向かって飛びかかって行く姿が見える!
 俺が判断するよりずっと早く動いた猫娘であった。

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