覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

寿司屋

 部長の件があった日から一週間が経過。
 その間に新しいスキルを身に付けた。と言っても一度発動させた身体能力UPだったのだけれど、キャンプの特訓効果なのか久々に選択肢が現れたので初の同スキル重ねがけを試したかっ訳だが。
 勿論、以前のように測定してみると...
○100m走   3秒96
○走り幅跳び  15m 70
○走り高跳び  7m 44
○砲丸投げ   45m97
 人間の限界を超えた前回の記録を大幅に更新。さらに人間でなくなりました的な記録を叩き出せた。
 因みに前回と同様にミーコと競ったのだが、3馬身差?くらいでまた敗北を喫してしまった。ケット・シーの身体能力は妖精の中でも抜群に高いらしい。
 後で確認してみたのだけれど、100mを4秒で走るとして、これを時速に換算すると90kmという事になる。
 つまり俺は高速道路でも車と並んで走れてしまうのだ。法定速度以上を出す車は別として。
 次に選択肢が現れ身体能力UPの重ねがけを実行した場合、地上最速の動物であるチーターを超えられるかも知れない。考えただけアフリカに行って試すのもおもしろそうだ。
 おっとスキル収穫の話しはこれくらいにして、本日は...と言っても既に夜なのだけれど、ミーコの強い希望で寿司屋に向かっているのである。源九郎人生相談所の経営状況により回る寿司屋だけれど。
 事務所からてくてく歩いて街中まで着いた。コロネ騒動があった去年と違い、平日だけれど人が多く賑やかだ。
 猫娘には、すっかり見慣れた大人の人間モードになって貰い二人で初の外食。
「いいかミーコ、家で食べるようにガツガツ食べるんじゃないぞ!目立ってしまうからな。俺のペースに合わせるんだ」
「OK!何から食べようかな何から食べようかな何から食べようかな」
「今から気負うなっての」
 興奮していて心配だけれど、テレビをよく観る猫娘は人間界の常識もかなり知って身に付いている筈である。
 暫く歩くと寿司屋の看板が見えた。
 ミーコの口からヨダレが出ている。
「ヨダレが出てるぞ〜」
「ごめんごめん」
 ハンカチで吹き終わる頃には寿司屋に到着。
 店員さんに誘導されて席に座る。
 目の前には美味しそうな寿司が次から次へと流れて来た。
 回転寿司屋で最初に食べるネタランキングの1位はサーモンらしい。分かるような気もするが、やはり人それぞれその時の気分によって手に取る寿司は違うものだ。
 俺はなぜかタコに引き寄せられパクッと食べてしまった。
 チョイス的に如何なものかと思ったが、コリコリした食感、じわっとくる旨味、美味しかったので結果オーライである。
 さて、ミーコは何を食べているのか!?
 猫娘の前には三皿置かれていたが、三皿とも既に寿司は無くなっていた。
 やれやれである。
「ミーコよ、約束を守れないようだったら次は無いぞ」
「あ〜い、ごめんなさいぃ」
 面倒だけれど目立つ行為をして、人の目を引くわけにはいかないのである。

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