覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

魔法

 みくるの能力は概ね理解した。鍛え方次第では台風すら起こせるかも知れない...
 治志のスキルも概ね分析しているので、泉音の魔法を把握しておきたい。
「次は泉音の魔法を見せてくれないかな。なんなら俺に向けて放ってみてくれないかか」
 先程の炎系魔法を見る限り俺の魔法と威力の差は無いように思えた。
「源九郎に向けて本当に大丈夫?」
「ああ構わないよ、いざとなったら回避するしね」
「了解、必ず避けてよ」
 泉音の表情が変わる。
「行け!アイスアロー!」
 声が響き極寒の地で見られるツララが泉音のまわりに突如複数現れ、俺目掛け高速で飛んできた。やばい!死ぬぞこれ!?直感で避けなけれ死ぬと判断して回避する。服の一部に命中して風穴が空いたがギリギリのところで身体に当たらずに済んだ。泉音さんすみません!貴方の魔法を舐めてました〜!
「大丈夫?源九郎!」
 魔法で殺されかけた本人に心配されてしまう。舐めてた俺が悪いのだが。
「大丈夫!身体には当たってない!アハハハ」
 虚勢を張っていたが、実際のところ俺の身体はガクブルです。どんな人間でも生死の境目を経験した直後ならばこうなるはずだと自分を慰める。
「いやぁ泉音の魔法がこんなに凄いとは思わなかったよ」
「そう、源九郎にいいところを見せようと思ってちょっとだけ本気出したんだよね」
 まさか本気で殺そうと思ってないよね!?さっきの魔法って十分に殺傷能力があった。服にポッカリと風穴が空いているのだから!他に危険度の低い魔法は無かったのですか?流石に口に出さずにいたが、それほどやばい状況だったかと。泉音に殺意が無かった事を願うばかりである。
「アイスアローって最初から使えたのか?」
「違うよ。先週だったかな魔法の威力を強くしようと思って、初めから使えた“アイス”を練習してたら急に“アイスアロー”のイメージが湧いて使えるようになったんだよね」
 泉音が努力した賜物という訳か。
「OK!泉音の魔法も概ね理解した。ここからは一対一の模擬戦をしようと思うんだけれど、どうかな?」
 3人は提案に賛成してくれた。
 治志は武道の試合などを多く経験しているから対人戦はお手の物だろう。俺は治志と対戦してるから少しは経験ありとして、泉音、みくるの対人戦経験値はゼロに等しい。今回の模擬戦は非常に有意義なものになる筈。
「あの〜模擬戦をするのでしたら、ささやかながら贈り物をしたいのですが」
 リアーネからの贈り物?何だろうか。
「役立つ物ならいつでもウエルカムだ」
「では皆さんそこに並んでくださいな」
 言われるがまま横一列に4人は並ぶ。

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