覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

ノームのファム

 藍里さんがモゴモゴ言ってる。感じからして悲鳴をあげてるようではない。
「手を離しますが大きな声を出さないでくれます?」
 彼女はコクリと頷く。
 俺はゆっくりと口元から手を離した。
「ノームのファム!何をボーッとしてるの!!」
 彼女の第一声は、まさか居ると思わなかった精霊ノームへの罵倒だった。という事は契約済みなのか!?
「おわっ!?」
声をあげたのは俺。急に金縛りに掛かったように身体が動かない。
「サイキッカーだ!その娘は九尾の妲己に魅了の術を掛けられとる!気を付けろ!」
ノームの小さい爺さんが注意喚起してくれだが注意するには既に遅いような。それより早く確かめたい事があった。
「爺さん妲己ってさっきの九尾か?仙人界から来たのか?」
「どちらも正解じゃ」
「何をごちゃごちゃ話してるんだ?」
さあやべ〜ぞ。次に来る大技のフラグが立った。時間が無い、とにかく情報を得ないと。
「爺さん、その子を助けるにはどうすれば良い?」
「妲己を倒す他ない!助けたければもっと強くなって大人数で出直して来い!」
「わかっあぁぁぁ!」
 胸に正体不明の激しい衝撃を受け、窓ガラスごと外に吹き飛ばされ宙に舞った。あれ?此処って4階だったよね。やばくないか!?
 ガシッと腕を握られそのまま上空へ上昇する。
「ミーコ〜神タイミング!」
 格好良過ぎだ猫娘。
「やっと再会出来たね〜。半分眠りながら
ずっと家の方を見てた甲斐があったよぉ」
 俺とミーコはそのまま自宅へ帰り着いた。
 俺は部屋に入るや否やソファーに突っ伏す。ミーコは大好きな牛乳をガブ飲み。
 慣れない張り込みで二人共疲れていた。
「藍里ちゃんどうだった?」
 冷蔵庫にあった牛乳を飲み干した猫娘が聞いてくる。
「ああ、見た目は如何にもお嬢様って感じで美形だった。そばに居たノームの爺さんが教えてくれたんだが、厄介な奴に取り憑かれているらしい」
「へ〜懐かしいなぁノームが居たんだ!?で、何に取り憑かれてるの?」
「九尾狐の妲己って云うんだが何か知ってるか?」
「行ったこと無いから伝説的な話しか知らないけれど、その悪名は異世界中で有名みたい。圧倒的美しさと、相手を魅了して自在に操れるとか。総合的妖力も仙人界最強クラスって話だよ」
「なるほどな。ノームの爺さんが言ってたのが良く分かったよ。これは直ぐに藍里さんを助けるのは難しそうだな...」
「藍里ちゃんが生きてるっていう情報はみくるちゃんも喜ぶでしょ。ノームが側に居るなら少しは安心出来るだろうし...ね」
 AM3:00を過ぎている。
 俺とミーコは、みくるちゃんにどうしたら上手く伝えらるかを話し合いながら眠りに着いたのだった。

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