覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

潜入

 自身の想像力の無さに絶望していた。
 ダメだ何も思い浮かばない...
 例えば何処かの女子寮の集団浴場の更衣室に潜入したとしても、管理人が清掃してるのが関の山であろう。というか覗き見は犯罪です。
 透明人間の力を得た者の義務として何かしなければと考え、焦燥感に押し潰されそうになるお馬鹿な頭を冷やそうとソファーに横になり寝る。無限覚醒の弊害による疲れがあったのだろう、深い眠りから目が覚めた時には夕方になっていた。
 薬師寺家の潜入に備えてちょっとした腹ごしらえに、カルビ丼をササっとと作り相方と共に食す。我ながら味付け最高でミーコも絶賛していた。
「エネルギー充填完了!薬師寺家に向かうぞ!」
「合点承知!」
 時短を考慮してミーコ移転装置に捕まりアッと言う間に薬師寺家の草木生茂る庭へ到着。ミーコは最近勉強して関東の地図なら頭に入ってるらしい。
 みくるに訊いてある程度予想していたが、それを上回る豪邸で庭を含めた広さも半端ない。資本主義社会の勝者だな。
 そんな事より。
「ディサピア」
 透明化する。ミーコも姿を消す事ができるが、これは人間にしか通用しないらしい。薬師寺家に異世界者が居た場合、見つかってしまうのでミーコには此処で待機してもらう。
 さてと、何処から潜入するべきかな...
 探しても入りやすそうな箇所は見当たらない。そりゃそうだ。鍵が空いてて入りやすい家の方が逆に怖いわ。
 そんな折、一台の高級車がだだっ広い庭を通り抜けて豪邸正面ドアの方へ向かっているのが見えた。このチャンスを逃す手はない。
 そちらの方へ音を殺して走り寄る俺。
 玄関ドアが開きメイドさんが現れた。
 高級車が停まり豪邸の主っぽい貫禄ありありの人が出て来る。
「お帰りなさいませ御主人様」
「うむ、ご苦労さん」
 俺はこのやり取りの間に玄関へ滑り込んでいた。
 目の前には映画でしか見た事のない景観が。なんだろう余りにも凄すぎて感動すらしてしまう。普段見ている建築物と比較するともはや別世界。
 おっと見惚れてる場合ではない。薬師寺藍里さんを探さなければ。
 彼女の顔はみくるに送信してもらった画像で確認済みである。
 この豪邸は4階建、お金持ちの娘が居る部屋は最上階の中央付近と相場は決まってる...はず。
 エレベーターも付いているが、流石にエレベーターが勝手に動いてるのを見られたらまずいだろ。という訳で螺旋階段を使って一気に4階まで駆け上がった。
 この階には部屋のドアが6つある。どれが正解の部屋なのだろう。危険性は高いが手当たり次第にノックしてみるか!?
 

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