覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

悪鬼

「俺の名は源九郎。名前を教えてくれないか?グレムリン」
「人間のくせに生意気だがいいだろう。グレムリンのミニョルだ。良い名だろケラケラケラ」
「阿波尻さんと契約を結んだようだが、どうやら関係が上手くいってなようだな?」
「ケラケラケラ、コイツがオレを警戒し過ぎなんだよ。話しを全く信用してもらえねえ。ま、見た目がこんなんだから仕方がないといえば仕方がない」
「お前は阿波尻さんとの関係を改善したいのか?」
「このまま治志を支配するのも手だが、それでは契約が意味を成さない。良好な関係を築く事がオレにとっても望ましい事ではあるよな」
「分かった」
俺は短い時間で阿波尻少年に妖精や精霊との契約について如何なる説明の仕方が適切かを思案した。
「阿波尻さん、今から話す事は信じ難い事が多いかも知れませんが、落ち着いて冷静に聴いて下さい」
「わ、分かりました。冷静に聴きます」
その後、阿波尻少年に妖精や精霊との契約、世界の綻びなどについて、可能な限り簡潔かつ分かり易く説明した...つもりでいる。
「ご理解いただけましたか?」
「少しは理解できたと思います。僕にくっ付いてるグレムリンのミニョルは、それほど悪い奴ではないという事が分かっただけでもスッキリしました」
「それは善かったです」
次はグレムリンに問わなければならない。
「不良グループとの事件があった時にお前はその場に居たんだろう?」
「ああ居たよ。居たけどオレは姿を消して手を出さずにただ見てただけだ」
「手を出さなかったのが善いか悪いかは分からんけど、全員が倒れるところまで見てたんだろ?何があったのか教えてくれ」
「治志に発動した“悪鬼”という名のスキル属性に問題があるんだよ」
“悪鬼”という名称が如何にも悪そうだ。
「恐らく使用者が精神的に幼い故に、スキルを制御出来ず暴走しているんだろ」
ミニョルは真面目に言っているようだ。
精神力の不足が原因なのであれば...
「阿波尻さん、突然ですが貴方に宿ったスキルを検証しなければないようです。今から自由に動ける場所に移動しましょう!」
場所の目処は立てている。多目的ビルの屋上。ちょっときついが外階段から屋上まで夜でも行く事が出来るのだ。
 事務所の鍵をかけ、ミニョルもミーコと同様に浮遊術っぽい事が出来たので、それぞれひとっ飛びで多目的ビルの屋上へ着いた。階段は無意味だったな。
「阿波尻さんスキルを使用する心の準備は整ってますか?」
「い、一応、整ってます...」
前回は記憶が無い訳だから不安なのは仕方が無いだろう。
「では目を閉じて、難しいでしょうが怒りを呼び起こすような出来事をイメージして“殺してやる”と言って下さい」
「はい、やってみます」
目をとじて5分ほど掛かったが少年は言葉を発する。
「殺してやる」

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