覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

暇時間

 翌朝は朝7時に起床して、いつものルーティンをこなす。と言っても朝食を食べたり歯磨きしたりと他となんら違った事はしないのだけれど。
 仕事中の服装を私服にするかスーツにするか迷っていたのだが、記念すべき日なのでスーツを選択、鏡を前にネクタイを絞めると気が引き締まった気がする。
 事務所入り口のシャッターを開け外に出た。天気に祝福されてるようで本日は晴天なり!
 当面の営業時間は9:00〜18:00に設定しているが、お客さんの動向などを分析して変更していく予定。
 予定通り9時に営業を開始したが午前中は誰一人として来所なし、電話もシーンと音が聴こえそうなほど静かなものだった。
 予想はしていたけれど、やる事が無い時間ってもったいないな...2階で昼休憩をとり午後も事務所でぼ〜っとする時間が過ぎていく。
 秘書?のミーコは備え付けのTVにずっと釘付けで、昼ドラや再放送番組を泣いたり笑ったり喜怒哀楽を表に出してエンジョイしている。
 俺も何しなければとipa○でPU○Gをプレイするが、これやると時間を忘れるほど熱くなってしまうのが難点だ。案の定、気付いた時には外が薄暗くなっていた。
 掛時計が18時を指してしまっている。
 やってもうた感が残り、結局お客さんはゼロ。
「悔しいです!よし、初日終了〜!」
「ドンマイだよ〜ご飯だねご飯!」
最近ミーコは人間界のルーティンに馴染み、一日三食が当たり前の感覚になったようで、毎回の食事時をイベントを待つ人のようにウキウキしているのだった。
 日本人の一日三食が定着したのは、江戸時代くらいからだそうで、それまでは二食だったらしい。習慣っておもしろい。
 夕食のメニューを考えつつシャッターを閉めようと何歩か歩いたその時!電話の呼び出し音が鳴り響いた。
 呼び出し音が聴こえてすぐ俺の心臓も「バクバク」と音が聴こえそうなほど急激に動き出す。震えた手で受話器を落としそうになりながらなんとか耳元にあてる。
「は、はい!源九郎人生相談所です!」
慌て過ぎてどもった上に大きな声を張り上げてしまった。相手は煩く思ったかな...
「あの〜、今からそちらに伺って相談したいのですが大丈夫でしょうか?」
元気の無い男の声、だが若い声だ。10代〜20代だろうか。
「もちろん構いませんよ。何時くらいにいらっしゃいますか?」
「15分ほどで着きますので、よろしくお願いします」
「分かりました。お待ちしております」
開業日なのにほとんど遊んでいたような日だ。営業時間を超えるが大切な第1号のお客さん、時間外だけれど関係ない大事にせねば!

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