覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

友達

「ははは、知ってたんですね。突然このケット・シーのミーコが現れて契約したんです」
「よろしく!ミーコちゃん」
綾野泉音は積極的な性格のようで、ミーコに握手を求めた。ミーコもそれに応える。
「よろしくお願いしま〜す」
微笑ましい。
 俺はエルフのルカリにハグを求めようとしたが、自制心が働いてくれて止めた。ちょいちょい疾しい妄想が出てしまうが、表に出さなければ無害ということで。
「私は20歳です。失礼かもですけどお幾つですか?」
見た目が若返ってるので素直に実年齢はやばいだろう。
「え〜と俺も20歳です」
安易に同年を装う事にした。
「そうなんですね!あのぉ、変な女と思われるかも知れないんですけど、妖精仲間という事で友達になっていただけませんか?こう見えて不安で...だから同じ境遇の人が友達だと嬉しいかなぁと...」
そりゃ不安にもなるよな。人生経験豊富なはずの俺でも心に不安の塊があるのだから。
「もちろんですよ!じゃあ同い年だし敬語もやめて、お互いに“泉音”と“源九郎”で呼び合うって事でいかがですか?」
調子に乗って言ってしまったが、こういう時は一気に関係を縮めるのも悪くはないはず。
「ありがとうございます。えっと、改めてよろしく源九郎!」
なんと俺にも握手の素振り、言ってみて善かった。
「よろしく泉音!」
 初の女子大生の友達。
 柔らかい手の感触を覚えつつ固い握手をしたあと、世界の綻びなどについて語った。
 ルカリとの契約で得た能力は“魔法”とのこと。攻撃系特化型だけど、回復系・補助系魔法も使用可能で、自身の成長と共に威力が増し、新しい魔法も覚えていけるらしい。いわゆる“魔法使い”凄いな。
 心苦しかったのだが色々考えた結果、俺のスキル「無限覚醒」は秘密にしておいて、「身体能力UP」の件を伝えた。これは嘘でも無く事実だから話し易く、測定をした結果まで話したら「凄い!」って褒められてしまった。てへっ。
 異世界の件については、行くことに決めてるけれど、人間界での生活もあるからじっくり考えて計画を立てているらしい。
 銀行に着きお金を預けた。
 そのあと通帳残高が12万円(残高やばいな)から1,812万円になっているのを確認し、当面の資金的余裕が出来た事に胸を撫で下ろす。
 泉音ともっと話したかったが、お爺ちゃんへの報告と、大学のレポート作成があるらしかったので、食事には誘わず銀行を出て泉音とは別行動となった。連絡先は交換したので問題無し!
「よし、何軒か不動産屋に寄って自宅兼事務所の目星を立てておくか」
「良い物件があると良いね〜」
俺とミーコは幾つかの物件を確認して、その日はマンションに帰ったのだった。

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