覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

質屋

 20歳前後に見える黒髪で美人のお姉さんが手を上げて自転車で追いかけてくる。天照様ほどではないにしても、すこぶる可愛いいな。今日も良い日!?
 お姉さんが追いつき何か渡してくれた。
「こ、これ、落としましたよ」
おっと、これは小判の入った封筒ではないか!?こんな大事な物を落としていたとは不覚極まりなし。
 間近で見るとさっきの2割増しくらい可愛く見えるが、ここはお礼が先だな。
「とても大切な物でした、ありがとう」
「持ちつ持たれつですよ」
な、なんて良い子だろう可愛いし。3年以上彼女のいない俺にとってはキラキラして見える。
「あの、お礼がしたいから何処かでお茶でもいかがかな?」
意を決して言ってみた。
「あ、いま急いでるんでお礼は結構です」
即答。笑顔で手を振りながら来た道を軽快に自転車で戻って行った。
「落ち込むな源九郎。あちしがそばにいるから寂しくはないでしょ!」
「寂しくはないけど、ねぇ」
世知辛い世の中で、落とし物を届けてくれる気概、改めてやっぱり善い子だったなぁ。
「小判を失くさなくて良かったね〜」
「そうだな、ホント助かった」
 それから10分ほど歩いて質屋に到着。
入り口をガラガラと開け中に入ると、高そうな骨董品が並べてらているのが見えた。
しかし、店内に人影が見当たらない。
「ごめんくださーい」
呼びかけてみるが返事が返って来ない。
「ごめんくださーい!」
さっきの1.5倍くらいの大きさで勢い良く声を出してみた。
 ようやく店の奥からヨボヨボと言っては失礼だが、ヨボヨボという表現がピッタリすぎる爺ちゃんがゆっくりと姿を現す。
「いらっしゃぁいぃ」
口調も遅い。
「あの、この小判を鑑定して欲しいのですが」
「小判?どれどれ」
ゆっくりと小判を手にして、鑑定を始めてくれるようだ。
 暫く観ていた爺ちゃんが突然ハッとした表情をする。
 やはりこの小判には相当な価値があるのだろう、そうに違いない!
「眼鏡とルーペを忘れとった」
「お約束やないかーい!」心の中で突っ込まずにはいられなかった。
「ついでに資料も探してくるから、ちょっと待っててもらえんかのぉ」
「分かりました。お願いします」
探す!?これは時間がかかるフラグだな。
はやる気持ちはあるが、さっき振られて野暮用もないので気長に待つことにした。
 暫く店内の骨董品やらを見ていると、入り口付近から自転車のブレーキ音がして、ガシャンと止める音。
 お客さんかな?入り口に目を向けると、俺の心は小躍り状態になる。
 小判を拾ってくれた女性が店内に入って入って来たからだ。

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