異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

過去にある現在⑧~本当の目的~

「ずいぶんと雰囲気が変わったわね。何が起きたの?」

 チチカカは硬い表情で尋ねた。その答えは,自分にも分からない。

「面白くなってきたわ。いたぶるのもいいけど,武闘家としてはやっぱり強い相手と戦いたいもの」
「お前たちはそればっかりだ。自分たちの欲望のために人の命を軽く扱うなんて,許せない」
「でもそれが最終的に平和につながらるのならいいんじゃなくって? 人はそうやって都合のいいように進化してきた。より便利なものを求め,いらないものを排除してね」
「あの子どもたちもか? ヒューゴに作らせた,生きた人間を素材にした人造人間だ。感情を削れば,人は幸せになれない。喜びと同じくらい,悔しさや悲しみ,時には憎しみさえも必要な感情だ」

 ああ,と思い出したかのように,そして幸せそうな表情でチチカカはうなずいた。

「あれね。すごいことを考えるものよね。人から感情を抜き取って機械のような身体にするなんて。しかも,坊やの話を聞いていると,本当の目的を分かっていないわね」
「本当の目的?」

 頬を赤らめてチチカカは口を開いた。

「もうすぐ死ぬんだもの。真実を教えてあげるわ。あの子たちは駒。感情のないことたちは盛業が楽なのもあるけど,軍隊を作るのよ。そいつらに最前線で戦わせて,世界をまとめ上げる。替えはいくらでもきくわ」

 髪の毛が怒りで逆立つの感じた。ここで,こいつらは絶対に仕留めなければならない。


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