異世界になったこの世界を取り戻す
過去にある現在⑦~信じる力~
ベルが心配そうにジャンを見つめている。太刀を振るう。それを鎌で受ける。鎌で撫でるように刈り取る。それを太刀がはじく。激しい乱戦だが,力比べとなるとジャンは力負けしている。
「サポートしてやって。こっちは大丈夫だから」
ブイサインを送ってベルを促す。
「でも・・・・・・」
「いいから,ジャンがやられてもいいの? 今支えてあげれるのはベルしかいない」
「・・・・・・わかったわ」
ベルは弓を引き絞り狙いをすましている。それに気づいたバーボンは,いくらか動きが鈍くなった。集中力が明らかに分散されている。ベルが弓を放たなくても,それだけでプレッシャーがかかっているのだ。
頼んだよ,とベルの横顔に声をかけて,チチカカの方へ向き合った。
「あら,あっちの世界で何があったのか知らないけどずいぶん舐められたものね。まるであなたにはサポートがいらないみたい。まさか,諦めたんじゃないでしょうね?」
「まさか。決まってるだろ。あなたは二度死ぬ」
へらへらとしていたチチカカの表情が一転して,眉間には深い皺が刻まれた。
「いいわ。後悔させてあげる。坊ちゃんのままでいたら良かったのに,生意気な子は損しちゃうんだから」
チチカカが右足を後ろに引いた。次の瞬間,右のこぶしを後ろにひったかと思うと目にもとまらぬスピードで直進してきた。
気付けば目の前の景色が回転していた。身体が宙を舞っていることに気付くのに時間がかかった。速い。地面に打ち付けられてうめいている頃には,すぐ目の前にチチカカが迫っていた。
「びっくりした? こう見えて武闘派なのよ。汚れたくないから,武器を使うこともあるけど,私の本気はこっち」
ジャブの仕草をしながらワン,とカウントを取り始めた。
「どうする? ギブアップ? タオルを投げてもらいたいところでしょうけど,あっちはあっちで忙しそうね」
ジャンの方を見ると,バーボンの太刀を受けるので精一杯といった防戦一方な状況に見える。ベルも弓を構えては放つものの,二人の動きが速すぎる。ジャンに当たる可能性も考えるとむやみやたらに架線できない状況だ。でも,ジャンの目は死んでいない。それに,何かを伺っているようにも見えた。ずっと一緒にいたから分かる。ジャンは,戦いの中で必ず相手の弱点を突く。その時を待っているのだ。
「あっちは大丈夫だよ。信じているから」
「信じていたら大丈夫なの? あんたのお父さん,死んだんでしょ。バーボンにやられて。おそらく,みんなお父さんが勝つって信じていたんでしょうけど。信じるって,なんて儚くて,無力で,無駄な行いなんでしょうね」
身体から痛みが消えていた。立ち上がる。こんなやつに負けていられない。
「お前達には分からないさ。人は信じ合えるから強くなれる,信じられていると実感するから,力以上のものが発揮できるんだ。目に見えないけど,確かにそこには何かがあるんだ。それは,お前たちが決して感じることのないもんのだ」
「そう。あなたとはわかり合えないわね。じゃあその目に見えないなんとやらで私をのしてごらんなさい」
チチカカは,再び右足と腕を引き,さっきと同じ攻撃態勢を取った。このままやられるわけにはいかない。ジャンは勝つ。バオウもあの化け物の足止めをしている。ここで、自分だけが負けるわけにはいかない!
勝ちたい。そう強く願った時,目の前が光に包まれた。
「サポートしてやって。こっちは大丈夫だから」
ブイサインを送ってベルを促す。
「でも・・・・・・」
「いいから,ジャンがやられてもいいの? 今支えてあげれるのはベルしかいない」
「・・・・・・わかったわ」
ベルは弓を引き絞り狙いをすましている。それに気づいたバーボンは,いくらか動きが鈍くなった。集中力が明らかに分散されている。ベルが弓を放たなくても,それだけでプレッシャーがかかっているのだ。
頼んだよ,とベルの横顔に声をかけて,チチカカの方へ向き合った。
「あら,あっちの世界で何があったのか知らないけどずいぶん舐められたものね。まるであなたにはサポートがいらないみたい。まさか,諦めたんじゃないでしょうね?」
「まさか。決まってるだろ。あなたは二度死ぬ」
へらへらとしていたチチカカの表情が一転して,眉間には深い皺が刻まれた。
「いいわ。後悔させてあげる。坊ちゃんのままでいたら良かったのに,生意気な子は損しちゃうんだから」
チチカカが右足を後ろに引いた。次の瞬間,右のこぶしを後ろにひったかと思うと目にもとまらぬスピードで直進してきた。
気付けば目の前の景色が回転していた。身体が宙を舞っていることに気付くのに時間がかかった。速い。地面に打ち付けられてうめいている頃には,すぐ目の前にチチカカが迫っていた。
「びっくりした? こう見えて武闘派なのよ。汚れたくないから,武器を使うこともあるけど,私の本気はこっち」
ジャブの仕草をしながらワン,とカウントを取り始めた。
「どうする? ギブアップ? タオルを投げてもらいたいところでしょうけど,あっちはあっちで忙しそうね」
ジャンの方を見ると,バーボンの太刀を受けるので精一杯といった防戦一方な状況に見える。ベルも弓を構えては放つものの,二人の動きが速すぎる。ジャンに当たる可能性も考えるとむやみやたらに架線できない状況だ。でも,ジャンの目は死んでいない。それに,何かを伺っているようにも見えた。ずっと一緒にいたから分かる。ジャンは,戦いの中で必ず相手の弱点を突く。その時を待っているのだ。
「あっちは大丈夫だよ。信じているから」
「信じていたら大丈夫なの? あんたのお父さん,死んだんでしょ。バーボンにやられて。おそらく,みんなお父さんが勝つって信じていたんでしょうけど。信じるって,なんて儚くて,無力で,無駄な行いなんでしょうね」
身体から痛みが消えていた。立ち上がる。こんなやつに負けていられない。
「お前達には分からないさ。人は信じ合えるから強くなれる,信じられていると実感するから,力以上のものが発揮できるんだ。目に見えないけど,確かにそこには何かがあるんだ。それは,お前たちが決して感じることのないもんのだ」
「そう。あなたとはわかり合えないわね。じゃあその目に見えないなんとやらで私をのしてごらんなさい」
チチカカは,再び右足と腕を引き,さっきと同じ攻撃態勢を取った。このままやられるわけにはいかない。ジャンは勝つ。バオウもあの化け物の足止めをしている。ここで、自分だけが負けるわけにはいかない!
勝ちたい。そう強く願った時,目の前が光に包まれた。
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