異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

時空を超えて⑩~可能性~



 どう思う? とバオウはジャンに問いかけた。もちろん,この村と三人が育った町が同じ名前であるということについてだ。このことを偶然と済ませていいのだろうか。

「いろいろな可能性を考えてみないといけない。どちらとも断定するにはまだ早すぎるな。百年もあれば町並みは驚くほどに変化することは十分あり得る。明日,いくらか話を聞いて回ろうか」

 そうだな,と合点したバオウは早々に布団にもぐりこんだ。ソラも早く寝ろ,とジャンは背中越しに言った。ジャンは寝ないの? とこちらに顔を向けて歯を見せた。

「初めての場所で全員が無防備に寝るなんて危ないからな。まあ,座っていても十分休めるから,気にせず休んでろ。おれがもし冒険中注意力が落ちてきた時は,ソラがフォローするんだぞ」

 そう言って笑い声を抑えるようにして声を漏らして笑った。その後「それにこれは兄貴分の役目だ」と呟いて背中を向けた。
 ここは甘えさせてもらって休むことにしよう。途中で交代してあげてジャンも休ませてあげないとな,そんなことを思って布団で体を覆った。
 ミュウが布団にもぐりこんで小さく鳴いた。

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