異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

時空を超えて⑨~その村の名は・・・・・・~


 村に着くと,手厚くもてなされた。
 村が近づいて様子が見えてくるようになると,子どもたちが大勢で出迎えてくれた。

「いらっしゃーい」
「どこから来たのー?」
「遊ぼ遊ぼー」
「ぼくが先だよー」
「先に休んでもらわなきゃ。疲れているんだから」

 様々な年齢の子どもたちが出迎えてくれ,それぞれ引っ張り合うようにして手を取った。

「おいおい・・・・・・。子どもは苦手なんだが・・・・・・」

 そうは言いながらバオウは頬を赤くして子どもたちの手を払うでもなくそれなりに対応をしている。
 まずは疲れを取らないと,というこの子たちの中で一番年上の女の子の一声でやっと解放され,宿舎へと案内された。
 いらっしゃい,という声と共に柔和な表情の浅黒いおばあちゃんが出迎えてくれたが,女の子がてきぱきと手続きを済ませてすぐに部屋へと案内してくれた。

「偉いね。仕事も出来てしっかり者さんだね」
「うん! お父さんもお母さんもおばあちゃんも大変だから,私も頑張らないと。私,アンナっていうの。ラムの看板娘って言われているの。よろしくね!」

 そう言って荷物をきれいに並べながら自己紹介を済ませた後,かわいいねと言ってミュウと遊び始めた。ミュウは早くもアンナに心を許しているようだったが,こちらは気が気ではなかった。
 三人の大人は顔をそろえて見合わせた。「ラムって言ったよな?」とバオウが囁いた。それは三人が育った町と同じ名前だった。

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