異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

監獄にて⑧~勝敗の行方~



 勝負が決するまでにはそう時間はかからなかった。
 三十分と経たずに、ジャンと共に,床に体を押し付けて身動きもままならないでいた。
 こちらが戦闘態勢になったとたんに,ヒューゴがこちらに向かってもう突進していた。それは老人の動きではなかった。どこからともなくデザートナイフのような刃物を取り出し,ジャンに突き付けた。こちらに向かって攻撃をしてきたのならば,あるいは手傷を追っていたのかもしれない。しかし,ジャンの動きは速かった。異次元の速さで動くヒューゴの突きをいともたやすくかわし,そのまま腕を取ってひねりあげ,デザートナイフを叩き落した。

「じいさん,やるじゃねえか。でも,おれの方が一枚上手だったな。おれは油断もしねえし,そちら側が想像もできないほどの力や技を秘めていることを承知の上で迎え撃つ。未知の力を考慮に入れなければ,こちらの方が力は上だ。どうする? 手,いてぇだろ」

 ジャンがさらに力を込めてヒューゴの腕をひねりあげる。ヒューゴは顔色一つ変えずに,落とせるものなら落としてみろ,とジャンを煽った。

「じじい・・・・・・,こっちも遊びじゃねえんだ! おれたちの街を襲うっていう計画を打ち切りにしろ! いったんそれで放してやる!」

 折れる! さらに力を込めるジャンの腕を見ていられなかった。しかし、ヒューゴはそれでも表所を変えない。おかしい,苦痛に顔をゆがめてもおかしくないのに,身体のどこにも変な力が入っていない。

「やっぱり若いな。・・・・・・おい,やってやれ。一号,二号!」

 ヒューゴが指示すると,商人二人が両手をこちらに向けた。何か来る,そう思って間合いを取った。ジャンも何かを察したらしく,ヒューゴの腕を話してこちらに来て距離を取った。次の瞬間。空間にひずみのようなものを感じたと同時に,身体のコントロールが効かなくなった。

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