異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街⑭~早すぎる戦闘~

 今の今でまた剣を取ることになるとは。しかも,光沢に光った身体に大きな目。宇宙人を連想させるロボットはさっきよりも数倍強そうだ。きっと,人間の作りをした体つきもはったりでいろいろな仕掛けがあるに違いない。人間のレベルを超えた動きに火炎放射器。今度は何を出すというのだ。

「さっきはポンコツの相手をさせて悪かったね。でも,もう退屈させないから」

 綺麗な発音で人間の言葉を話すその機械は,それだけでさっきのロボットとは別格の存在感があった。やれるのか。
 二人とも傷を負っていないのが幸いだった。もう一度,やるしかない。今度こそ,自分の命を大切にしながら!

 命がかかっている。一歩間違えたら死ぬ。そんな生と死の淵を歩いているという感覚を持っているだけで,疲弊する。痛みのない身体に疲れが重くのしかかる。常にダメージを受けている。そんな状態で連戦が続くと,戦い慣れていない経験の差が露呈するようで自分を保つので必死だった。
 ロボットの動きはさっきと同じように素早い。身のこなしも軽い。
 ジャンはというと,動きは相変わらず機敏でロボットを翻弄しているようでさえある。ただ,明らかにこちらの動きを常に気にしており,ロボットの注意がこちらに向かないように細かい攻撃を繰り返して牽制している。
 自分にも出来ることがあるはずだ。勝負を決める決定打が自分にはまだ打てないことを承知している。せめて遠距離から攻撃を繰り出してジャンのサポートに回ろう。自分は相手の射程圏内に絶対に入らない。勝とうとして攻めるのではなく,負けまいとして手を打つ。それがジャンのサポートにも繋がる!
 そう自分に言い聞かせて,次にロボットが動きそうな方向やジャンに攻撃を与えようとしたタイミングを見計らって気功法を放ち続けた。
 視界が悪い。思わず,涙がこぼれ落ちていた。最前線に立ち向かうことが出来ずサポートに回るしかない自分の力を恨みながら,狙いを定めて腕を振るった。
 何もできない自分がただただ情けない。

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