異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街⑪~ロボットの急所~


 ロボットがナイフの方を確かめるように見た。完全にそちらに気を取られている。ジャンがすかさずロボットの方向に進路を変え,攻撃態勢に入った。ところが,ロボットの腕が肩口まであがった次の瞬間には,火炎放射器のように炎がジャンを襲った。
 危ない! と声をかけたときには素早い身のこなしで軽々と避け,こちらに戻ってきた。

「やっぱりな・・・・・・」
「手のひらから炎が出てきたね。やっぱり力を隠していたみたいだ」
「いや,そうじゃねえ。あいつ,人の動きを装っているけど,作りは効率を意識して作られている。的を認識するモニターもきっと顔には付いてない。きっと両肩か,あるいは背中にも付いているだろうな。ナイフを見ている振りをして近づいてきたおれを攻撃してきやがった。それに,足も首も三六〇度回転するぞ。相手の反応でこちらが動いたら後手後手になっちまう」

 たった一回の攻防でかなりの分析をしている。これが経験の差だろうか。自分には何が出来るのだろう。

「それで,何か打つ手はないの? まさか,急所がないとか・・・・・・。まさかもうお手上げって訳じゃないんでしょ?」
「ああ,穴は見つけた。ただ,一対一じゃ分が悪い。連携するぞ。おれが一瞬の隙を生み出す。ソラは骨盤にある隙間に思いっきり剣を突き立てろ。人間の体のつくりを模している以上,あそこにダメージを与えたら体の動きは一気に悪くなるはずだ」
 
 最後まで言い終わらぬうちにジャンは駆け出した。
 これからくるであろう好機を絶対に逃さない。右手に握った剣に力を込め,少しずつロボットの方へとにじり寄った。

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