異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街⑤~ご飯処にて~

「こちらが部屋になります。二人一部屋になっておりますが、こちらのボタンを押しますとプライベート空間を意識した防音シャッターが立ち上がりますが、いかがなさりますか?」
「すごいな。よく分からないけど、話をしたいからこのままにしておいてもらえるかな。どうもありがとう」

 ごゆっくりと,口のようなところから音声を発して,器用に体だけを180度回転させて出て行った。開いた口が塞がらない。

「いやあ,森一つ超えただけなのに世の中広いなあ。これだから冒険はやめられないんだよ」

 興奮した様子でジャンはキョロキョロ部屋の中を見渡している。何のために設置されているのか分からないけど動作している機械がいくつかあった。
 ひとしきりものを触ったり眺めて落ち着いてくると,急に空腹感が襲ってきた。ミュウもお腹をすかせたのか,小さく鳴いている。

「この建物の中にもご飯屋さんがあったね。腹ごしらえしてから明日からのことを考えよう」
「そうだな。それに,旅に必要なものも整理して明日買いに行こう。きっと,便利なものがたくさんあるはずだ」

 部屋を出てすぐの所にある自動案内システムに従ってご飯処へと向かった。その場所は旅人や町の人々が疲れを癒やしたり食事をしたりする憩いの場でとして繁盛しているのだろう。そういえば,ラムに来て初めて人を見た。
 適当に空いているテーブル席に腰を落ち着け,注文をしようとしたがウェイターのような人はいない。ここでは注文もロボットを相手にするようだ。

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