異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街④~人型キャタピラ~

 タイル調の石で建てられているように思えたその建物は,一歩中に足を踏み入れた途端また違った印象を与えた。外から見たら石のような手触りを感じさせる様相だったが,建物の中から見るとガラス張りのように見える。この宿舎を利用する人たちのプライバシーは守られているが,外の景色や町の様子を楽しむことが出来る。

「さすが,進んでいると言われるだけあるなあ」

 ジャンが感心したように言った直後、さらに驚くべき事が起きた。
 いらっしゃいませ,と声がする方向に顔を向けると,人の姿形をした足がキャタピラになっているロボットが立っていた。

「ご予約にはない顔ですね。でも,今は部屋はいくつか空いていますのですぐご案内出来ますが,どうしましょうか? そちらの銀髪のお客様は,『なんだこいつは? おれは夢でも見ているのか?』という気持ちの中にも旅の疲れがあるようですので,すぐにご案内いたしますね」
「おいおい・・・・・・,話が早くて大変ありがたいんだが,一体どうなっているんだ? あんた,ロボットだろ?」
「初めてこの町に来るお客様は皆そういう顔をされます。でも,心配ご無用。すぐ慣れますよ。町には私のようなロボってであふれています。ロボットの暮らす町と言う人もいるほどです。ラムの町を楽しんでください」

 所々に機械独特の無機質なイントネーションも感じられたが,注意をしなければ人が話しているようだった。このロボットには意思があるかのようだ。
 荷物を持って部屋へと案愛してくれるロボットの後ろを興味深く観察しながら歩いて行った。


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