異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街①~進路は北へ~

 出口まではそう時間はかからなかった。震えるミュウをあやしながら歩いていると,すぐに地上へと開けた場所へとつながりそうな道へ出た。
 森を抜けると,入り口とはまた違った世界が広がっていた。青々とした森は一変して,木々が赤く染まっている。自分の街を出たことがなかったから世界が新たに開けた気がして嬉しくなる。
 
「いや~,今晩の食材は決まりだな。町まで一気に行って休もうと思っていたけど,馬車どころか人やモンスターの気配すらない。こりゃあ人間の言葉が話せる動物の鍋でもつつきながら野宿だな」

 ミュウは小さく鳴いて服の中に隠れた。遠くの方で荷物を積んだ馬車が北の方向へと進んでいくのが見えた。

「ジャン,あんまりいじめるなって。ほら,あそこで馬車が走っているよ。きっと,こっちの方を通って町へと物資を運んでいるんじゃないかな。ほら北に向かっているあの馬車。行ってみよう」

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品