異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

初めての冒険④~優秀なガイド⁉︎~



「右! 隙間 入る!」

 耳元から小さく高い音で単語がで並べられる。木の枝に立っている男を見ると,次の矢を射ようとしているところだ。詠唱をしようとしているジャンの袖を引っ張り,声が指示する方向へと駆け出した。

「ちょっ,どうすんだよ! あいつをやるぞ」
「いや,こっちで間違いない。まだこの旅を安全に続けるなら,できるだけ敵は作らないでおこう」

 天からのささやきを信じて突き進んだ。目の前にうっそうと生い茂った植物に空間が開いている。そこに体を思い切って突っ込んだ。一瞬走っていた速度が減速したが,身体が放り出された。

「いってー。無茶したなあ」

ジャンが起き上がりながら言う。空間に入って茂みで体を隠すつもりでいたが,そこには別世界のような空間が広がっていた。木の中に入ったはずなのに明るい。よく見ると木の葉自体が発光している。

「光葉樹だな。細胞の中にセルライトが密集していて発光するんだ。太陽光がなくても自分達の光で光合成するから唯一人の手の加わらない屋内で成長する植物だ。ありがたいな」

 そういえば教科書に載っていた気がする。知識として学んではいたけど,目の前にしてどういう原理かまるで分らなかった。いざ旅に出るといろいろなものに出会える。知っているということとそれを活かせるということは全く別物だった。旅に出るということは知識を生きた知恵にすることなのかもしれない。

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