異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

初めての冒険③~不思議な生き物~

「デグーだな,こいつは」

神妙な顔をしてジャンは言った。珍しいものを見るようにしてしげしげと茶色い毛並みの綺麗な手のひらサイズのネズミを見つめているが,目の前のネズミはシルバーの瞳を目の前にしてがくがくと怯えて震えている。

「この辺の生き物なの? っていうか,しゃべったよ?」
「ああ。それが,この生き物は特殊な生き物でな・・・・・・」


ジャンによると,このデグーという生き物は泣き声の中に明確な意味を持つ単語を持っているらしい。それに加え,発声に必要な能力をいくつか備えていて,言葉を学習することも明らかになっているということだ。まるでインコみたいだ。
 珍しい発見にも関わらず,ジャンはとらわれたネズミを見つめながら冴えない顔をしていた。

「ただ,ここまで単語を明確に話すのは珍しい。というか人間の言葉話すなんて見たことも聞いたこともない。何か仕込まれたのかもな。それに,この辺りには間違いなく生息してないはずだ」

 考え込んでいるジャンに貸せる知恵もなく,ただ目の前のネズミになぜか親しさを感じてじっと見つめた。ネズミもこちらを見て笑っているような気がした。
 罠をほどいてやらないとな,と思い手を伸ばした瞬間「キキッ」と大きな声で鳴いた。直後,「危ない!」と叫びながらジャンが覆いかぶさってきた。
 突然のことに訳が分からないまま地面についた顔を上げると,そこには矢が立っていた。矢が放たれたであろう方向に顔を向けると,ぼろきれのような服を身に付けた青年が高いところにある太い木の枝からこちらを睨みつけて立っていた。

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