異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

偽りのほこら⑦~結末をもたらしたもの~


「うぅ・・・・・・。おれは,何をしていたんだ・・・・・・?」

 バオウが目を覚ましたのは決着から一時間以上たってからだった。戦いの最中に自分に起きたことをジャンから聞いていまだに信じられないでいた。だから,起きたらすぐに確認しようと思っていた。

「バオウ,どうして倒れていたんだ?」

途端に何かを思い出したようにバオウの顔はみるみる青ざめて,その後真っ赤になった。カメレオンみたいなやつだなあと思ったのもつかの間,今度は血の匂いを嗅いだ人食いざめのように興奮して口に泡を溜めてしゃべりだした。なんとも忙しいやつだ。

「どうしてって,お前はおれのことをバカにしているのか? ああ言ってやるとも。おれはお前にやられてんだよ。この貧相な身体をした女男のお前にな! でも,お前の身体が変化したのは見逃さなかったぜ。肉体派の男みたいにムキムキになったかと思ったら,素早く移動して直後には誰がどう見ても女の身体になっていた。そして,詠唱をしたかと思ったら気孔波でドンだ。あれは今までやった誰よりも,どの師範よりも早い動きと詠唱だった。どこで身に付けた? どんないかさまをした・・・・・・。おい,聞いてんのか? 何をぼーっとしてやがる!」

 驚いた。ジャンの言ったことと同じじゃないか。本当にバオウをやったのか? それにしても身体が変化? いったいこの身体に何が起こっているのだろう。その事が分からないままでは,自分の力とは言えない。何より,無意識なのだ。無意識の時に解放された力ほど恐ろしいものはない。もしかしたら,この力で誰かを傷つけてしまうことがあるかもしれない。
 まだ実感もわかない自分の力が怖い。自分はこの力を操ることが出来るのだろうか。それとも,いつかこの力に支配されるときが来るのではないだろうか。
 知るすべもない未来に恐れをなしている自分がいることを自覚した。

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