異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

偽りのほこら④~旅立ちの覚悟~

 甘えを許さないにらみつけるような顔でジャンは続けた。

「バオウくんって言ったかな。殺すつもりで構わない。ソラをやってみろ。こんな腑抜けたやつをやれないようじゃおれをやれるわけがない。もちろん,手を抜くお前ともやるつもりは無い」

一瞬,光悦の表情を浮かべたバオウは,

「いいんですか。じゃあやっちゃいますよ。よく必死になって見境がなくなるんで,やばそうだったら止めてください。厄介者にはまだなるつもりはないので」

と言って剣を抜いた。その顔は笑っていた。
 いつもなら,ここで怖気づいただろう。でも,目が覚めた。ここで逃げたらだめだ。母さんが旅に出ることを許してくれた。それはジャンの後押しがあったからに違いない。ジャンは信じてくれている。自分がこの村を出て勇敢に,誇り高く戦い抜くことを。知っている。自分がこの町を出て旅に出ることを夢見てから血のにじむような思いで努力をしてくれたことを。それを,やる前から自分の身のことばかりを案じて信頼を裏切ってしまった。こんなんじゃだめだ。本当に旅に行く資格がない。いつか強くなるってなんだ。今やらなくて,いつか強くなるなんて虫が良すぎる。命をかけた戦いがいつ来るか分からない。今がその時だ。ジャンの期待を裏切らないためにも,いや,何よりもこれから旅をする自分の為にも,今ここで本気でやらなければならない。もう,中途半端な気持ちで甘えて生きるのはやめた。ここで,この戦いで変わる。変わってみせる。
 覚悟を決めて剣を抜いた。やってやる。

「顔つきが変わったな。おもしろい。すぐに命を乞う情けない表情に戻してやる。お前の義理の兄さんもそれを望んでいるらしいからな」

不敵な笑みを浮かべながらこちらに向かった。来る。覚悟を決めて,前足に体重を乗せた。

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