異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

あれから二年②~あの日とは違って,あの日と同じ~

「久しぶりだな」

うっそうと生い茂る新緑の木々の間から,日差しがこぼれる。あの日もそうだった。ジャンに助けられた日。あの日,どうやって切り抜けたのかさっぱり分からなかったけど,今ならわかる。
 後ろの茂みから魔物の気配がした。ゆっくりと振り返る。大丈夫,きみに用はない。おびえるように震えてこちらを見ているスライムを後にして,あの日と同じ場所へと向かう。方向は,きっとこっち。
 奥へ奥へと進んでいくと茂みは一層濃くなり,太陽の光が急に届かなくなる。あの日の景色と重なる。違うのは,あの日にはなかった高揚感に包まれていることだ。土の乾いた匂い。爪の跡で傷がついた木々。獣が忍び寄る気配。

バウウゥゥッ!!

 出たな。この日を待っていた。左手に腰かけた剣に手をかける。しっかりと柄をつかんだ感触がある。足も震えていない。もうあの日とは違う。あんな情けない真似はしない。誰にも守られない。あの日と同じなのは,この獣を倒す力。

「恨みないけど,弱肉強食だ。堪忍な。」

ジャックベアが爪を振り上げた。暗い視界の中で爪がわずかに光ったのが見えた。大きくバックステップをして爪をかわす。そのまま足に力を入れる。重心を前に飛び出したと同時に剣を引き抜いた。
 振り返ると,あの日よりも大きな体をしたジャックベアが急所を貫かれて倒れていた。

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