異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

あれから二年①~ぼくは旅に出たい~

 ジャンがぼくに話をしてくれてから,明らかに自分の中で訓練に臨む姿勢の変化が現れたのを感じた。今までも一生懸命訓練に取り組んできたつもりだ。ただ,その一所懸命さは,誰かの期待に応えたいだとか,底辺を彷徨っているのは恥ずかしいだとかいう外発的なものが大きかった。今は違う。ぼくは強くなりたい。怯えたくない。助けられる命があるなら助けたい。そして,ジャンと旅に出たい。そんな思いが強くなった。
 自分のために自己研鑽を摘むようになると,無理やり収縮していたゴムが解き放たれるように勢いよく成績の順位を上げていった。ジャンのように首席で卒業という訳にはいかなかったが,かなり優秀な部類で魔法学校を卒業することが出来た。
 今のぼくの短期的な目標は一つ。始まりの森にいるジャックベアを倒すことだ。「旅に出たい」といったぼくに,「あんたに何ができるの。ジャンに守られてばっかりで一人じゃ何もできないじゃない。ジャックベアぐらい一人で倒せるようになってから自己主張をしなさい」とお母さんに言われたのだ。若いころはやり手のハンターだったというお母さんはぼくの言い分を快く聞き入れてくれると思っていた。ただ,本当に旅の厳しさを知っているからこそ甘い気持ちで力のないままに旅立ってほしくなかったのかもしれない。今のぼくには親の気持ちを推量するほどの心のゆとりもできた。あとは,力だけだ。ぼくは自分の力を証明した。今ならできるはずだ。
 強くそう思い,始まりの森へと歩を進めた。


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