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嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。

なつめ猫

一つ屋根の下での事情4(1)




 彼が起きたあとは母屋に戻り、着物を脱いだあとは普段着に着替えて1階に降りると高槻さんと廊下で顔を合わせた。

「莉緒、俺は少し出かけてくるからな」
「どちらに行かれるんですか?」
「所用だ。それより、先に風呂に入っておけ。今日は、疲れただろう?」

 高槻さんは、私の頭の上に手をそっと置くと頭を撫でたあと玄関から出ていってしまった。
 私は、その後ろ姿を――、彼に触れられた髪の毛の部分を両手で押さえながら見送った。

「はぁー」

 メイクを落としたあとは、身体と髪の毛を洗い湯舟に浸かると思わず声が出てしまう。
 短い時間といっても精神的に自分でも気が付かない内に疲れていたみたい。
 湯舟の縁に身体を預けながら目を閉じると、すぐに眠くなってくる。

「いけない、いけない。寝たら、風邪ひいちゃう」

 それにしても、加奈って人……、すごく私のことを敵視していたわよね……。
 心の中で呟きながら――、瑞穂グループと高槻家には何か簡単には立ち入ってはいけない物があるような感じがした。
 お風呂から出たあとは、朝食の仕込みをしていると、ふと考えてしまう。
 明日の学校のことを――、そのことを考えると憂鬱になってしまう。
 何せ、美穂とも大和とも仲が悪くなっているし、何より学校に行きたいとは思えない。

「どうしようかな……」

 本当に、これからどうしよう。
 そんな事を考えているとガラガラと、玄関の戸が開く音が聞こえてくる。

「あれ? もう高槻さんは帰ってきたのかな?」

 台所から玄関に向かうと、玄関で靴を脱いでいる高槻さんの姿が――、

「総司さん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
「結構、お帰りが早かったんですね」
「所用だからな」

 靴を脱ぎスリッパを履いた彼は私の横を通りすぎて居間に入っていくとノートパソコンを起動させ、眼鏡を取り出し付けると作業を始めてしまう。

「お仕事ですか?」
「そうだ。決算時期だから急がしいんだよ」
「そうなんですか……」
「それより莉緒」
「はい?」
「櫟原から学校ではうまく行ってないようだと聞いたが? 教師から何か言われたりしたのか?」
「……いえ」
「それだと友人関係か」
「…………」
「仕方ないな……」

 仕方ないな! と、言われても私としては何もできない。
 それに誤解の原因である神社の問題や婚約指輪に至っては総司さんにだって責任はあるのに。

「友人というのは美穂という親友と喧嘩をしたのか?」
「それに近いです」
「ふむ……」
「……あ、あの! 総司さん」
「何だ?」
「高校を辞めて神社での仕事をメインにしたら駄目ですか?」
「……それは、俺のところに永久就職するということか? 俺としては、別に問題ないというか…………願ったり叶ったりといったところだが……」

 高槻さんの『別に問題ないと』言う言葉に少しだけ安堵しつつ、その後に呟いた声は小さくて聞き取れなかった。

「総司さん、問題ないのですか?」
「問題はないが……、莉緒が学校を辞めたとなると瑞穂家の方から文句を言われる可能性があるから、高校はきちんと卒業してもらいたい」
「……はい」



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